RNAを標的とする創薬を目指して ~RNAと結合する低分子の開発
遺伝情報を転写しタンパク質を作るRNA
COVID-19の世界的な大流行で、PCR、ゲノム解析、変異株など、これまで馴染みがなかった科学用語が身近なものになりました。mRNAワクチンで有名になったRNAもそのひとつではないでしょうか。
RNAはDNAの遺伝情報をもとに作られます。いわばDNAのコピーです。RNAにコピーされた遺伝情報はアミノ酸配列に翻訳され、タンパク質が作られます。
RNAの異常が病気の原因になることも
しかし、全てのRNAがタンパク質になる訳ではありません。私たちの細胞の中にはタンパク質にならないRNAが沢山存在し、それらが生命現象や病気に関わることがわかってきました。私達の研究室では、そのようなRNAに結合して機能を変えられるような低分子を探索・開発しています。
では、そのような低分子は役に立つのでしょうか? DNAの変異によって起こる遺伝病の中には、RNAの異常が発症の原因となるケースがあります。そのようなケースに対して、RNAに直接作用する低分子は有望な薬となる可能性があります。
機械学習も活用、低分子をデザイン
ただし、RNAに結合する低分子を作るのは簡単ではありません。タンパク質を標的とする薬はこれまでに多数開発されていますが、RNAに対するものは限られており、どのような低分子がRNAに結合できるのかという情報が足りないのです。
私達は、低分子と結合するRNAを網羅的に探索する手法や、機械学習を活用してRNAに結合する低分子をデザインできるような手法の開発に取り組んでいます。
私の研究テーマのきっかけは、前所属の大阪大学産業科学研究所で参画した「非翻訳 RNAを標的とした創薬を加速・推進させる技術基盤の構築」という研究プロジェクトでした。
私はこれまでずっと同じ研究分野にいた訳ではありません。大学は神経生理学、大学院は非天然核酸の有機合成、博士取得後はケミカルバイオロジーと、異なる分野で研究してきました。大学院入学時に生物→化学と分野が変わったことが大きな転換で、これは半分アクシデントでしたが、結果的に今の研究につながりました。
大学の学部選びは大切ですが、それだけで卒業後の進路や仕事が決まるわけではありません。学部選びに悩む高校生には、今の自分の「好き」や「やってみたいこと」を大事にして、あまり悩みすぎないようにアドバイスしたいと思います。
「RNAを標的とした低分子創薬の展望」
日下真一(MEDCHEM NEWS 31 巻 (2021) 1 号、特集:難病疾患治療に取り組む低分子創薬の新展開)
RNAを標的とする低分子創薬は意外と古くから行われています(細菌のリボソームRNAに結合してその機能を阻害する抗生物質など)。しかし、新しいRNAが同定されたり、既知のRNAにこれまで知られていなかった役割が発見されたりする中で、それらのRNAを標的にした低分子創薬が近年注目を浴びています。
本記事は、内容は少し専門的に感じられるかもしれませんが、これまでのRNA標的低分子創薬の歴史にも触れつつ最新動向を簡潔にまとめたわかりやすい記事だと思います。
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Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 薬学部に入ってみたいです。 |
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Q2.感動した/印象に残っている映画は? 『ライフ・イズ・ビューティフル』が今まで見た映画の中で一番好きです。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 水泳サークルに所属していました。 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 裁縫、釣り |