光環境によって口の形が決まる? 線虫のユニークな発生に迫る
発生に興味、実験結果に心高鳴る
受精卵が分裂すると2つの受精卵になるのではなく、どのように異なる種類の細胞になって大人になっていくのか?
私は発生(生物が卵から大人へと成長する過程のこと)に興味を持ち、大学の学部4年生の際に、発生生物学の研究を始めました。キイロショウジョウバエを用いて、思ってもいなかった遺伝子が神経細胞の形作りに関わるという実験結果を得て心高鳴ったのを覚えています。
遺伝子だけでなく環境因子に着目
大学院卒業後は、遺伝子だけでなく環境因子にも着目して研究を進めています。
生物の発生は、それぞれの生物が持っている遺伝情報だけでなく、育った環境にも依存します。環境がどのように生物の発生に影響しているのか明らかにするために、現在は線虫Pristionchus pacificusをモデルとして研究を進めています。
この線虫は、面白いことに口の形が2種類存在します。どちらの口の形になるかは、線虫がどのような環境で育ってきたかによって決まります。
特に私は発生過程での光環境に興味を持って研究を進めています。線虫がどのように光を感じ、口の形を決定しているのか、数多くの変異体の解析や、ゲノム編集技術、バイオインフォマティクスなど新しい手法も積極的に活用して研究を進めています。
生育環境はその後の健康にも影響
生育してきた環境は、発生に影響を与えるだけでなく、大人になってからの健康や病気のなりやすさにも影響することが知られています。幼いときの環境が、どのように病気に影響しているのかはまだまだ不明確な部分が多いです。
線虫の研究が、そのような問題に関する基礎的な知見につながると期待しています。
高校2年生のときに、生物の発生に関する研究をされている研究室に見学に行きました。説明を聞いて実験をさせてもらい、生物の面白さや不思議さにふれたことが現在の研究テーマにつながっています。また学生時代にドイツ語を学び、人生で一度はドイツ語圏で生活したいと考えたことが、ドイツの研究所で研究員として働くきっかけの一つになりました。
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
◆主な業種
(1) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
(2) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等
(3) 薬剤・医薬品
◆主な職種
(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(2) 中学校・高校教員など
(3) 基礎・応用研究、先行開発
◆学んだことはどう生きる?
国内外での大学などにおける研究者や、大学院において専修免許を取得し教員となった卒業生もいます。
分子、細胞、個体、集団、生態など、幅広いレベルで生物を研究しており、また植物、動物、微生物など多くの種を用いた教員が集まっている点は、広島大学の特徴だと思います。キャンパス内やキャンパスの近くは自然豊かな場所で、様々な生物を採集、観察できるのも利点の一つです。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? インフォマティクス |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? イギリス: 英国文学の世界に浸りたい。 |
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Q3.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 『ホグワーツ・レガシー』 |
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Q4.大学時代の部活・サークルは? 中日ドラゴンズ応援サークル |