生体関連化学

核酸医薬

病気の原因となる「mRNA」だけ狙う創薬。その新手法を開発


勝田陽介先生

熊本大学 工学部 材料・応用化学科

出会いの一冊

こんな研究で世界を変えよう!

病気の原因となる「mRNA」だけ狙う創薬。その新手法を開発

薬は病気の原因タンパク質に結合して作用

私は「核酸医薬」という新しい薬の開発に取り組んでいます。

私たちが日常的に口にしている薬のほとんどは「小分子化合物」というもので、病気の原因となっている「タンパク質」に結合することで薬としての機能を発揮します。

この「小分子化合物」と「タンパク質」の関係は「鍵と鍵穴」のようなものです。家の鍵で例えるなら、私が持っている家の鍵は私の家についている鍵穴のみを開けることができるはずで、隣の家や隣のマンションの鍵穴に鍵をさしても開錠することはできないはずです。もしそんなことができる鍵があったとしたらとても安心して暮らすことはできませんよね。

今までの薬も、この例えとほぼ同じような説明が通用します。つまり「ある薬」は治したい「病気の原因であるタンパク質」だけに結合することで機能を発揮することができれば、それはとても優秀な薬ということになるわけです。でも、その「ある薬」が「病気の原因であるタンパク質」だけではなく、「健康で生活するために必要なタンパク質」にも結合してしまった場合、それはつまり「毒」であるということになります。

「mRNA」を切るのではなく形を変える

このような背景から、私は、病気の原因となっている「mRNA」を狙うことができる新しい薬の開発に取り組んでいます。

実は「mRNA」を狙う医薬品を考えたのは私ではなく、病気の原因となっている「mRNA」を切断してしまうような「核酸医薬」と呼ばれる技術が最近積極的に開発されています。その中で、私は狙った「mRNA」を切るのではなく、狙った「mRNA」の形を変えてしまうことで機能を変えてしまうという新しい技術の開発に取り組んでいます。

「mRNA」の形を変えるしくみ
「mRNA」の形を変えるしくみ
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

高校までは部活(ハンドボール)に励み、あまり勉強していませんでした。高校卒業後、病気を治すことができるような医者になりたくて河合塾に二年間通い、結果的に医学部に合格することができず薬学部に行きました。

その後、相当な紆余曲折を経て大学院で「DNAナノ構造体」を作る研究に従事し、博士号の学位を取得。博士研究員時代には生体内で構築されている特殊な構造体がどの遺伝子のどこにあるのかを探索する研究を展開していました。

そして、助教として大学教員のキャリアを始めるに際して自分で研究を考えていくチャンスを頂いたので、大学院時代にやっていた研究と博士研究員時代にやっていた研究を組み合わせて、浪人時代に目指していた病気を治す薬の開発をすることになりました。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「新しい機序で作用する核酸医薬の開発」

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先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 薬剤・医薬品

(2) 医療機器

(3) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品

◆主な職種

(1) 基礎・応用研究、先行開発

◆学んだことはどう生きる?

製薬会社の研究者として働いている学生から、医療機器の研究開発をすすめる学生など様々です。ただ私自身が「モダリティ」と分類される既存の医薬品とは異なる研究をしているので、学生も従来の創薬よりはモダリティ創薬を進めている製薬会社に興味を持っているような印象を受けています。

先生の学部・学科は?

幅広く勉強できるのが特徴だと思います。電池の研究をしているラボもあれば、触媒の研究をしているラボもあるという感じで、化学・物理・生物どの分野にでも対応する研究室があると思います。あと工学部ですが化学・生物という組み合わせで受験することができることも一つの特徴だと思います。

先生の研究に挑戦しよう!

日本では20歳を超えるとお酒を飲むことができます。一般的にお酒を飲む量が多い人を「お酒に強い人」、全く飲むことができない人を「お酒に弱い人」という言い方をされることがありますが、なぜこのようにお酒を飲める量が人によって異なるのか遺伝子レベルでどのような現象が体の中で起こっているのか答えてください。

また最先端の科学的な知見を活かして「お酒に弱い人」を「お酒に強い人」に変えることは可能でしょうか?可能であればその理論を答えてください。

中高生におすすめ

私は特にお勧めする本などはありません。

真実的に研究の中で「この研究が一番面白い!」というものはないと思っています。それぞれの学者が取り組んでおられる研究は、それぞれの学者にとって最高に面白い領域だと思っているはずです。ただその面白さは押し付けるものではなく、なんとなく共感していくものだと思っています。

本も同様で、これが面白いから読んで欲しい、という気持ちは僕にはありません。なんとなく本屋に行って、なんとなく直感的に気になったタイトルの本読んでみて、さらそれをもっと知りたくなって・・・というような本に出会えたら最高だなと思っています。

確かに本には知的好奇心を掻き立てる何かがあるとは思います。大きな本屋さんに行って、片っ端から本の背表紙を見て気になるタイトルの本を手に取って読まれてはいかがでしょうか。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

今研究している分野からだいぶ離れているので、物理か数学を専門とする学部に入りたい。

Q2.感動した/印象に残っている映画は?

『永遠の0』。過去の日本人が残したかったのは今のような日本なのか、と考えさせられた。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

ハンドボール。人生で大切なことの大半はここで学んだような気がしています。

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

新聞配達。どういう理論で新聞を配る順番や家を覚えていくのかが知りたかった。とても合理的なシステムだったので感動した。

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

気の合う仲間(異分野研究者)と、お酒を飲みながら「ああでもない」、「こうでもない」と答えが出ないサイエンス談義に話しを咲かせること。


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