人類のルーツは? 人類の化石を求めトルコで発掘調査
アフリカから世界に広がった人類
皆さんは化石と聞いて何を連想するでしょうか。私は、人類の化石を探しています。ひと口に人類と言っても、たくさんの側面、そして長い歴史があります。その歴史は様々なイベントに彩られていて、どこに着目して研究するのかは研究者の自由です。
私は主にアフリカからの拡散に注目しています。人類の起源地は基本的にアフリカですが、あるときアフリカを(当事者にはそのような意識はなかったでしょうが)旅立ち、世界中に広がっていきました。初めてアフリカを出たのはどんな人達で、どんな文化をもっていたのでしょうか。そしてそれはいつのことで、どこを通ったのでしょうか。
複数いた人類。その共通祖先は?
さらに、人類がアフリカから拡散していった前後の時代は、ネアンデルタール人やデニソワ人という近い親戚が「隣で」生活していたダイナミックな時代です。人類の系統が我々ホモ・サピエンス、ネアンデルタール人、デニソワ人に分かれる前の共通祖先はどこにいて、どのような姿をしていたのでしょうか。
私はこのような疑問に答えるために、現在トルコ共和国で発掘調査をおこなっています。化石の発見を目指していても、実際の発掘で目にするのはほとんどが石器や食べあとの動物の骨です。正直気が滅入りそうになるときもありますが、もしかして今日人類化石が出てくるかもしれないと、汗を拭きながら調査を続けています。
サルから何がわかる?
化石の発掘だけではなく、現生種を用いた研究もしています。ヒトは霊長類というグループに属していて、このグループにはたくさんの親戚がいます。彼らはヒトがどのように進化してきたのかを知る手がかりをくれます。
例えば、私は日本固有のニホンザルに着目しています。ヒトは赤ん坊の頭が大きく難産ですが、ニホンザルも赤ん坊の頭が母親の産道に対して大きく、実は「難産」です。一方で、ヒトには閉経がありますが、ニホンザルには基本的に閉経はありません。こうした類似点や相違点を多角的に検証することで、ヒトに特異的と思われている特徴の進化的起源を明らかにすることができるのです。
モデル生物ではなくヒトを直接研究できるということが興味をもったきっかけだったように思います。大学院修士課程を終えた後、縁あってスイスのチューリッヒ大学で博士課程をやることになり、それが人生の大きな転機となりました。
日本では自然人類学(生物人類学)を学べる場所は非常に限られています。その点で京都大学理学部は非常にユニークな分野を学べる学部です。
Q1.一番聴いている音楽アーティストは? 一曲だけ選べと言われれば、ギドン・クレーメルの演奏する「シャコンヌ」(バッハ作曲『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』より「パルティータ第2番(BWV1004)終曲」)になります。日本では同い年の宇多田ヒカルの曲をよく聞きます。 |
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Q2.感動した/印象に残っている映画は? 最近なら『フリーソロ』という映画です。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? ESSというサークルに所属していました。 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 子供と過ごすことです。今は一緒に天体観測を楽しんでいます。 |