神経化学・神経薬理学

脊髄損傷、脳梗塞など治療の難しい神経障害の治療法開発に取り組む


竹居光太郎先生

横浜市立大学 生命医科学研究科 生命医科学専攻/医学部 医学科/理学部 理学科

どんなことを研究していますか?

交通事故、転倒、スポーツ外傷などによって起こる深刻な病気に、脊髄損傷があります。また椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍など内的な要因でも起こります。脊髄は脊椎動物の持つ重要な神経幹で、脳と合わせて中枢神経系を構成します。ここに損傷が起きた時に生じる神経障害は、手足の筋肉を動かす運動神経がそこなわれたり、しびれや痛みなど感覚神経に麻痺が起こったり、排尿や排便の障害の他、消化など自律神経の障害も起こします。

神経障害のもう一つの重篤な病気に、脳梗塞などの脳の損傷があります。脳梗塞によって、麻痺や言語障害といった神経症状を発症することがあります。これら神経障害は、一旦壊れてしまった神経は再生することが難しく治りにくいという、治療の困難を抱えています。

私は神経発生生物学と神経再生医学を専門に研究していて、どうやって神経回路が作られるのかを知り、それを生かして神経を再生する、再生医療の開発に取り組んでいます。脳や脊髄は一度損傷を受けると、再生させることがきわめて難しいとされています。

例えば脊髄損傷や脳梗塞といった神経障害は、若い人でも突然に起こり、毎年多くの患者を生じています。しかし、神経障害に対する治療法はまったく確立されていません。神経障害を克服するための治療法開発は早急に取り組むべき課題となっています。神経障害の治療が困難であるおもな理由は、脳神経系の再生を阻む脳内環境があるからです。

私はそのような脳内環境を制御して神経を再生するための方策を研究しています。そして、神経再生を促して機能が元に戻るような薬を、一刻も早く患者さんの手元に届けたいという強い夢を持って、毎日鋭意研究に励んでいます。

脳内環境を制御し失われた脳機能を回復させる

私のこの研究が進むことで、神経障害に苦しむ患者さんを救う方策を見いだせるかもしれません。つまり、脊髄損傷や脳梗塞の患者がかかえる運動や感覚の障害などの後遺症を改善する手だてに直接つながります。もしもこういった患者さんの機能回復に役立つ医療技術が確立できれば、患者さんのその後の生活を支える大きな力になります。

そして、経済的な社会問題の解決にも寄与できると思います。つまり、今までかかっていたリハビリ費用や介護費用、また神経障害をわずらったために働けない人が出るなどの社会的損失を軽減させ、医療費の増大や労働力不足を解消できるかもしれません。

実験室(顕微鏡室)にて
実験室(顕微鏡室)にて
この分野はどこで学べる?
学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

●主な業種は→医療、製薬会社、試薬メーカーなど

●主な職種は→医師、研究職、総合職

●業務の特徴は→製薬、創薬に関わる研究や、薬品販売の販促業務に関わる職

分野はどう活かされる?

製薬、創薬に関わる業種では、専門分野として培った科学的な考え方や知識を生かした仕事を展開していると思います。

先生の学部・学科はどんなとこ

横浜市立大学の医学部医学科、大学院医学研究科、大学院生命医科学研究科では、神経科学、神経薬理学、神経生理学、再生医学の分野において、世界最先端の神経科学が学べ、その研究に従事できます。 

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先生の研究に挑戦しよう!

神経回路形成を制御する物質の培養神経細胞や生体における解析・検証実験。

興味がわいたら~先生おすすめ本

記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方

池谷裕二(講談社ブルーバックス)

今から10年以上前に執筆された本ですが、当時の最新脳科学の知見を元に著者が考える記憶のメカニズムを簡潔に記した、非常に魅力的な内容が満載された面白い本です。脳科学や神経科学の醍醐味が理解でき、この分野の面白さを実感してもらえるでしょう。 


進化しすぎた脳 中高生と語る「大脳生理学」の最前線

池谷裕二(講談社ブルーバックス)

中高生との対話から見た大脳生理学がまとめられており、高校生が神経科学を学ぶにあたって、導入著書としてわかりやすく適しています。記憶や意識、脳の解釈など脳の力などについて、ストレートに、かつ平易な言葉運びでテンポよく解説しています。



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