生物のかたちがどのようにつくられるのか、その発生と進化に物理学から迫る
はじまりはひとつの卵から
全ての生物は、はじめはたったひとつの細胞(受精卵)としてこの世に生まれ、分裂を繰り返し、また個々の細胞の性質を決定していくことで自律的に生物種固有のからだをつくり上げていきます。
この過程のことを“発生”と言い、古くから人々の興味を惹きつけてきました。
私も生物の発生現象に魅了された一人で、さまざまな生物がもついろいろな“かたち”が発生過程でどのようにつくられ、また進化の過程で変化してきたのか、物理学的視点から研究を進めています。
「生物学」と「物理学」は仲良し
生物学と物理学というと、全く関係のない学問分野と思われるかもしれません。しかし、実はとても親和性の高い、仲の良い学問なのです。
分子生物学の興隆による“ゲノム”や“遺伝子”の発見は生物学に大きな変化をもたらしました。これにより、私たちは“遺伝子の働き方”という生物に対する新しい理解の方法を得ることができたのです。その結果、生物がどのようにつくられているか、私たちの病気がどのように発症し、そして治療可能なのか、といった点について大きく理解が進みました。
では、遺伝子はどのように機能しているのでしょうか?多くの遺伝子はタンパク質をつくります。そしてそのタンパク質は生物が持つ物理的性質、例えば細胞や細胞外環境の硬さであったり、細胞膜の張力、または細胞集団の振る舞いなどを変化させます。
つまり、遺伝子の働きも細かくみていけば生物学だけでなく物理学の研究対象にもなるのです。
細胞外環境の「硬さ」が心臓の発生と進化の鍵だった
私たちのこれまでの研究結果から、心臓の一部の領域では生物種によって細胞外環境の硬さが進化の過程で変化し、そしてその硬さの変化を細胞が読み取ることで生物種特有の心臓構造がつくり出されていることが明らかになりました。
このように、生物の発生と進化において物理的性質が重要な役割を担っているのです。
私たちは心臓の他にも生物らしいかたちがつくり上げられていく原腸形成という過程や、細胞を試験管内に移した際の振る舞いについても研究を進めています。
小さい頃から生物が好きで、家では熱帯魚を飼育していました。色々な魚を繁殖させている中で、卵の中でどんなふうに魚が育っているのだろうと想像を膨らませていました。そして大学の授業や実習で発生生物学に触れ、この学問を研究しようと思いました。
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私が所属している物理科学科では、物理を学びながら生物を学び、研究することができます。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 今の研究が本当に楽しいと思っているので、同じ道を歩むと思います。別の分野でということであれば、建築か音楽、または服飾を学んでみたいです。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? オーストリアに暮らしたいです。以前オーストリアの研究所で研究していた頃に暮らしていて、刺激的でもあり穏やかでもある、とても楽しい日々を過ごしていました。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? オーケストラでバイオリンを弾いていました。 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 育児です。女の子が2人なのですが、一緒に遊んでいて楽しいです。 |