発生生物学

生物のかたち

生物のかたちがどのようにつくられるのか、その発生と進化に物理学から迫る


守山裕大先生

青山学院大学 理工学部 物理科学科

出会いの一本

6才のボクが、大人になるまで。

リチャード・リンクレイター:監督・脚本

私が中高生だった頃のことを思い返すと、楽しいことばかりではなく、色々と思い悩んだり、孤独を感じたりしていたものでした。私がこの映画を観たのは大人になってからですが、中高生の頃に観ていたらもっと感動し、救いを得たような気がしたと思います。

生きていると日々色々なことがあり、落ち込んだり悲しくなったりもしますよね。でもそういったことがありながらも人生は淡々と進んでいき(そんな中でちょっとした嬉しいこと、微笑んでしまうこともあったりして)そういう大きな流れに身を任せていれば良いのかな、とこの映画を観て私は感じました。

こんな研究で世界を変えよう!

生物のかたちがどのようにつくられるのか、その発生と進化に物理学から迫る

はじまりはひとつの卵から

全ての生物は、はじめはたったひとつの細胞(受精卵)としてこの世に生まれ、分裂を繰り返し、また個々の細胞の性質を決定していくことで自律的に生物種固有のからだをつくり上げていきます。

この過程のことを“発生”と言い、古くから人々の興味を惹きつけてきました。

私も生物の発生現象に魅了された一人で、さまざまな生物がもついろいろな“かたち”が発生過程でどのようにつくられ、また進化の過程で変化してきたのか、物理学的視点から研究を進めています。

「生物学」と「物理学」は仲良し

生物学と物理学というと、全く関係のない学問分野と思われるかもしれません。しかし、実はとても親和性の高い、仲の良い学問なのです。

分子生物学の興隆による“ゲノム”や“遺伝子”の発見は生物学に大きな変化をもたらしました。これにより、私たちは“遺伝子の働き方”という生物に対する新しい理解の方法を得ることができたのです。その結果、生物がどのようにつくられているか、私たちの病気がどのように発症し、そして治療可能なのか、といった点について大きく理解が進みました。

では、遺伝子はどのように機能しているのでしょうか?多くの遺伝子はタンパク質をつくります。そしてそのタンパク質は生物が持つ物理的性質、例えば細胞や細胞外環境の硬さであったり、細胞膜の張力、または細胞集団の振る舞いなどを変化させます。

つまり、遺伝子の働きも細かくみていけば生物学だけでなく物理学の研究対象にもなるのです。

細胞外環境の「硬さ」が心臓の発生と進化の鍵だった

私たちのこれまでの研究結果から、心臓の一部の領域では生物種によって細胞外環境の硬さが進化の過程で変化し、そしてその硬さの変化を細胞が読み取ることで生物種特有の心臓構造がつくり出されていることが明らかになりました。

このように、生物の発生と進化において物理的性質が重要な役割を担っているのです。

私たちは心臓の他にも生物らしいかたちがつくり上げられていく原腸形成という過程や、細胞を試験管内に移した際の振る舞いについても研究を進めています。

私たちが進めている研究の一例です。受精後、特定の細胞を色素やRNAなどを利用して標識します(写真左。ここでは緑色と紫色で異なる細胞群を標識しています)。そして個体が育っていく中で標識した細胞群がどのように振る舞うかを顕微鏡を用いて追跡します(写真右。これは眼や体節といったからだの基本的な構造が出来上がってきたゼブラフィッシュ胚です)。この際に、例えば片方の細胞群において特定の遺伝子の働きを阻害したり、硬さや張力などといった物理的性質を変化させることで、それらが担う働きを推測することができます。
私たちが進めている研究の一例です。受精後、特定の細胞を色素やRNAなどを利用して標識します(写真左。ここでは緑色と紫色で異なる細胞群を標識しています)。そして個体が育っていく中で標識した細胞群がどのように振る舞うかを顕微鏡を用いて追跡します(写真右。これは眼や体節といったからだの基本的な構造が出来上がってきたゼブラフィッシュ胚です)。この際に、例えば片方の細胞群において特定の遺伝子の働きを阻害したり、硬さや張力などといった物理的性質を変化させることで、それらが担う働きを推測することができます。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

小さい頃から生物が好きで、家では熱帯魚を飼育していました。色々な魚を繁殖させている中で、卵の中でどんなふうに魚が育っているのだろうと想像を膨らませていました。そして大学の授業や実習で発生生物学に触れ、この学問を研究しようと思いました。

オーストリアのInstitute of Science and Technology Austriaという研究所で研究していた頃の写真です。写真中央で座っている方が研究室主宰者のCarl-Philipp Heisenberg博士で、生物物理学の分野で世界をリードしている研究者です。色々な国から来た研究者と日々一緒に実験したり、議論をしていました。研究所はウィーンの近くにあり、演奏会に出掛けたり色々な人と楽器を弾いたりと研究以外の面でも楽しい日々を過ごしていました。
オーストリアのInstitute of Science and Technology Austriaという研究所で研究していた頃の写真です。写真中央で座っている方が研究室主宰者のCarl-Philipp Heisenberg博士で、生物物理学の分野で世界をリードしている研究者です。色々な国から来た研究者と日々一緒に実験したり、議論をしていました。研究所はウィーンの近くにあり、演奏会に出掛けたり色々な人と楽器を弾いたりと研究以外の面でも楽しい日々を過ごしていました。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「胚の幾何情報感知システムと時空間制御機構」

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私たちの研究では細胞や個体を顕微鏡で時間・空間的に連続して撮影します。そして取得したデータを元にみんなで議論をして研究の方向性や考えられる可能性について検討します。議論と言ってもかしこまった感じではなく、笑いながら、カジュアルな雰囲気で話し合うことが多いです。
私たちの研究では細胞や個体を顕微鏡で時間・空間的に連続して撮影します。そして取得したデータを元にみんなで議論をして研究の方向性や考えられる可能性について検討します。議論と言ってもかしこまった感じではなく、笑いながら、カジュアルな雰囲気で話し合うことが多いです。
学生たちはどんなところに就職?

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◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

私が所属している物理科学科では、物理を学びながら生物を学び、研究することができます。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

ねじまり鳥クロニクル

村上春樹(新潮文庫)

私は高校生の頃にこの本を繰り返し読んでいました。ストーリーは複雑でなかなか理解するには難しい面もあるのですが、人物描写が面白く、おすすめです。私はこの本を読むことによって「完全には理解できないものをそのまま受け入れる」ということが(特に読書や美術鑑賞などの面において)できるようになったと思います。


りんごかもしれない

ヨシタケシンスケ(ブロンズ新社)

これはいわゆる絵本なのですが、大人が読んでもとても面白い本です。発想が素晴らしいです。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

今の研究が本当に楽しいと思っているので、同じ道を歩むと思います。別の分野でということであれば、建築か音楽、または服飾を学んでみたいです。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

オーストリアに暮らしたいです。以前オーストリアの研究所で研究していた頃に暮らしていて、刺激的でもあり穏やかでもある、とても楽しい日々を過ごしていました。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

オーケストラでバイオリンを弾いていました。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

育児です。女の子が2人なのですが、一緒に遊んでいて楽しいです。


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