特殊な蛍光分子で、髪の毛ほどの細い流れにかかる力を可視化する
流れや熱の伝わりは見える!
空気や水といった流体の流れは、はっきりとは見えません。また、流れの中で熱が伝わる様子や物質が混じりあう様子を直接見ることも困難です。
しかし、舞い散る桜の花びらや、お椀の中の味噌の動き、夏の暑い日にアスファルトから立ち上る陽炎などを通じて、流れや熱の伝わりを「見た」経験が皆さんにもあると思います。この場合、花びらや味噌の粒、空気中の屈折率の変化が目印となり、私たちの目に流れが見えるようになっているのです。
小さいスケールだから非接触に計測
私たちのグループでは、このような通常は見えない流れ現象や、その中の温度、濃度、粘度、応力などの情報を見えるようにする(=可視化する)ための研究を行っています。
研究対象は、髪の毛ほどの太さ(=約50ミクロン)の流れ場です。このような小さなスケールの流れは、例えば、毛細血管内の血液流れや、手のひらサイズの生化学分析装置として期待されるマイクロ流体デバイス(マイクロTASやLab-on-a-chip)、小型の熱交換器などで見られます。
非常に小さいスケールであるため、流れ場を乱す接触式のセンサを挿入することはできません。代わりに、流体に微量の蛍光分子を混ぜて、その光信号を利用して非接触に計測を行います。
力がかかれば変形し発光色が変わる
今取り組んでいるのは、流体の内部や流路の壁に「どのように力がかかっているか」を可視化する手法の開発です。力に応答して羽ばたくように変形する特殊な蛍光分子を使います。この分子は変形すると発光の色が変わるため、色の変化から流体内や壁面にかかる力を測れると考えられます。
この技術が実現すると、流体機械のどこに負荷が集中しているかを一目で把握したり、血管壁にどのような力がかかると病気になってしまうのかを理解したりするのに役立つと期待されます。
大学の研究室配属で、「ミクロの世界は人類に残されたフロンティア」という紹介冊子のフレーズにつられ、微小領域の熱流体現象を扱う研究室を選びました。暗幕で覆われた光学実験ブースや風洞設備のある秘密基地のような実験室、装置を巧みに操る先輩達、聞いたこともない用語が飛び交うディスカッション風景などなど…全てが刺激に溢れ、気づけば研究中心の生活に浸かっていました。
大学時代についてはこちらもどうぞ→https://www.st.keio.ac.jp/departments/ob_relay/ob_1801.html
お家の中で熱流体実験にチャレンジしてみませんか?キッチンやリビングには魅力的な熱流体現象がたくさん隠れています。例えば「ベナール対流」で調べてみてください。フライパンと油、粉末スパイスなどを使ってどんな面白いパターンを作り出せるでしょうか?そのほかにも、熱いコーヒーの表面を覆う白い膜の動きや、こぼれたコーヒーが乾いた時のシミのでき方を観察してみましょう。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? やっぱり工学…かもしれません。 |
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Q2.感動した/印象に残っている映画は? 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? テニスサークル(比較的まじめな) |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 腸活。胃腸の弱さを克服するため日々実験中です。 |