物理化学

化学反応制御

光を使わない光の化学
電場の揺らぎを使った新しい化学反応


平井健二先生

北海道大学 工学部 情報エレクトロニクス学科 生体情報工学コース(情報科学院 情報科学専攻 生体情報工学コース/電子科学研究所)

先生のフィールドはこの本から

Newton別冊『無とは何か』

光を照射していない空間でも、電場はわずかに揺らいでいます。光共振器の中では、この揺らぎの影響が大きくなり、光を入射していないのに、光が自然と沸き起こるような現象が起こります。

このことが、4章「 真空にある“何か"」 に書かれています。私たちの住んでいる世界で、直観に反する(古典物理では説明できない)現象が絶えず起こっていることが感じられると思います。

世界を変える研究はこれ!

電場の揺らぎを使った新しい化学反応

触媒を使わない化学反応の開発

私たちの生活に使われている製品の多くは、化学反応によって作られています。そのため、化学反応をコントロールすることは人類にとっての大きな目標の一つです。これまでの化学では、触媒という分子を設計して、望み通りの反応を起こす方法が発展してきました。このような方法に対して、私は光を使って化学反応を操作する方法を開発しています。

光共振器の中では、まるで無から光が生まれる

光というのは電磁場、つまり電場と磁場の振動です。日常生活で使う照明では電気のエネルギーが光(電磁場)に変換されています。光を発生させるには何らかのエネルギーが必要なのです。

ところが、光共振器の中では、不思議な現象が起こります。光共振器とは、光を反射するミラーが向かい合った器具のことです。実は、光を照射していない空間でも、電場はわずかに揺らいでいます。光共振器の中では、この揺らぎの影響が大きくなり、光を入射していないのに、光が自然と沸き起こるような現象が起こります(興味があればNewton別冊『無とは何か』を読んでみてください)。

この現象を使って化学反応を操作するのが私の研究です。つまり、光を使わずに自然と沸き起こる光を使って化学反応を操作します。

物理現象を化学に活かす

物理を勉強した人は、エネルギー保存の法則はどうなっているのかと、疑問を持つかもしれませんが、私たちの住んでいる世界は、直観に反する(古典物理では説明できない)現象が絶えず起こっています。この新しい物理現象と化学の融合領域を拓くのが私の現在の目標です。

先生のフィールド[反応制御] 平成30年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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例えば、化学反応の結果、化合物1と2が得られたとします。化合物1だけが必要な場合、化合物1と2を分離して、化合物2は廃棄することになります。分離にもエネルギーがかかりますし、化合物2に使われた資源は無駄になります。

光共振器の中でエネルギーを使わずに化学反応を操作できれば、資源・エネルギーの観点から、とても効率よく物質を生産できる可能性があります。

きっかけ&学生時代
◆テーマとこう出会った

2010年、大学院生の頃に京大農学部の先生の講演を聞く機会があり、磁場や光を使って化学反応を操作する方法について考え始めました。2016年に光共振器中で不思議な現象が起こることが報告され、長年ぼんやりと考えていたことが繋がりそうな気がしました。これが今の研究を始めたきっかけです。

いろいろな事を考えたり、いろいろ人の話を聞いたりすると、その時は何も起こらなくても、後になって繋がることがあります。研究に限らず、普段考えていることは、性格と経験の影響を大きく受けていると思います。学生のうちに様々な経験をしてください。

◆高校時代は

物理や化学の授業では、原子や電子が見えない時代に、周期表という考えが誕生し、人類が化学反応を操れるようになったこと、ニュートン力学が基礎となって乗り物や建物を設計できるようになったことに、感心した覚えがあります。周期表を考えたメンデレーエフや力学を作ったニュートンの考えていたことが現代社会の礎になっています。

今思い返すと、科学者になろうと思ったのは、高校生の時に物理や化学の発見に感心したことが根底にあるように思います。

◆出身高校は

千葉県立千葉高校

先生の分野を学ぶには
注目の研究者や研究の大学へ行こう!

平井健二先生の研究・研究室を見てみよう
先生の学部・学科で学ぼう

北海道大学は総合理系入試を実施しており、2年生の時に、本人の志望と成績をもとに学部・学科を選ぶことができます。工学部情報エレクトロニクス学科生体情報工学コースは、工学と生命科学の融合領域です。様々な専門の研究者が在籍しているため、興味のある研究室を選べると思います。

中高生におススメ

ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体

原田曜平(幻冬舎新書)

著者は若者研究、商品開発に携わるマーケティングアナリストです。時代背景と大衆文化について実地調査を基に書いています。講演や対談が動画サイトにあがっているので、興味があったら見てみてください。


10年後、君に仕事はあるのか?未来を生きるための「雇われる力」

藤原和博(ダイヤモンド社)

著者はリクルート社員から学校の校長先生に転身した異色の経歴を持っています。キャリア選択について書かれている本です。この方の講演もYouTubeなどにあがっているので、興味があったら見てみてください。


スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング

森沢洋介(ベレ出版)

中学・高校英語で英語が話せるようにトレーニングするドリルのような本です。英語はツールだという考えもありますが、話せるようになって損をすることはありません。若いうちに少し話せるようになっておくと、大学生活やその後のキャリア選択の機会も広がると思います。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

電気電子工学

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

アメリカ:移民にもある程度寛容だと思います。研究員時代、一年半住んでいました。

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

京都の湯豆腐屋

Q4.研究以外で楽しいことは?

子どもと遊ぶこと


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