第2回:権力をふるえる背景となる、権威の正体
今回は、権力について詳しく考えていきましょう。マックス・ウェーバーという社会学者は、権力を四つに分類しています。
1つめは軍隊のような「物理的強制力」です。言うこと聞かないと殴るぞ、殺すぞ、攻撃するぞ、というタイプです。
2つめが、「物的報酬」です。言うこと聞けば何かいい物やお金をくれるというタイプです。アルバイト先で、気に入らない雇い主でも言うこと聞くのは、その人からお金をもらうからです。
3つめが、「正当性」です。例えば、地方自治体の議会や国会議員の言うことを我々が聞くのは、議員は選挙という民主主義のルールにのっとって選ばれた人たちだからで、その正当性に権威を与えているわけです。その議員たちが決めたルール、すなわち法を、我々は守ります。あるいは、伝統的に行われていることだから従うというのも「正当性」の1つです。
4つめが、「カリスマ性」です。「なぜかはよくわからないけれど、この人の言うことは聞かないといけないような気がする」という、人の魅力のことです。部活に例えると、皆さんが1年生だとして、3年生から「コーヒー買ってきて」と言われたとします。すると、「あ、はい」などと言って、コーヒーを買いに行くかもしれません。しかし、もし2年生が同じように「コーヒー買ってきて」と言ったら、「え? すいません。何ですか?」などと言って、無視するかもしれませんよね。
不思議ですね。1年生からすれば、3年生も2年生も同じく「先輩」ですが、前者の言うことを聞いて、後者の言うことを聞かない。これが権威です。お父さんの言うことは聞く、お母さんの言うことは聞かない。その逆もあるかもしれない。私たちの心の中で勝手に作り上げている権威もあるわけです。
このような、私たちに対して強制力を働かせるパワーを権力と言いますが、権威というのは、権力が行使されることを認められている状態なので、権威的配分とは、ある限られたものを、皆が認めざるを得ないような方法で配分することです。これが政治です。
ですから、政治は、私たちの世界のどこにでもあります。学校のクラスにもLINEのグループにも、家庭にも、職員室にも政治はあります。
つづく
第3回:歴史上試みられてきた政治制度と、民主制の限界
<前回を読む>
第1回:政治とは、有限な資源の権力による配分