第1回 3000億円相当の「金」が眠る? 日本の6000万台の車
みなさーん、元気ですか!私は千葉大学工学部都市環境システム工学科の松野と申します。教壇の松岡修造と言われる熱血教師であります。
みなさんは都市鉱山という言葉を聞いたことがありますか。自動車を例にとって都市鉱山を語りたいと思います。自動車の部品にはどんなものがあるか、みなさんに聞いていきましょう。エンジン、タイヤ、フロントガラス。ECU(エンジンコントロールユニット)…。すごい言葉を知っていますねえ。エンジンを制御するコンピュータのことですね。他には? エアコン、ライト、カーナビ、シート、バックミラー…。ちなみに自動車の部品は何点くらいあると思いますか。正解は1万5000~2万点と言われています。
この自動車の体重はどれくらいあると思いますか。約1トンあります。最近は素材が軽量化され800㎏くらいのも出てきています。では、自動車はどんな材料でできていますか。鉄。鋼材ですね。1トンある車の7、8割は鋼材が使われます。ほかにゴム、アルミニウム、ガラス、プラスチック、銅、銀、半導体のシリコン、白金も使われています。
白金は車のどの部分に使われているか、知っていますか。実はマフラーに使われているんです。窒素酸化物、一酸化炭素などの排ガスを除去する、三元触媒として使われているんですね。
実は金も使われています。なぜ金が使われているか、知っていますか。知らなきゃ金はどういう性質があるか考えてみてください。金は、薄く延ばせる、電気を通す、さびにくいという3つの性質があります。この特徴を生かして車のエアバックを制御する電子基板に使われています。緊急時にエアバックが万一作動しなければ大変なことになります。そういう大切な部分の機器には金は絶対に必要なんです。
ではこの金は、日本にある自動車の合計で、どれくらいの量が使われていると思いますか。仮に1台1グラムとします。ほんとはもうちょっと少ないけどね。日本人の2人に1人が車を持っているとしたら6000万台。金の値段は今1グラム約5000円。6000万台×5000円では…。すごい金額になりますねえ!銅は約10キログラム使っています。そのほか、鋼材とか、いろんなレアメタルなどが日本中のこの6000万台の中に埋まっている。これを車を廃車したときに回収できたら、すごい値打ちの鉱山を得たことと同じ価値がある。それで都市鉱山と呼ばれるのです。
日本は世界1位の金属資源大国
平沼光(講談社+α新書)
「都市鉱山」とは何か、身の回りの製品を例にあげ、レアメタル等についてわかりやすく解説している。さらには都市鉱山のみならず、島国である日本の周りに無尽蔵に存在する海水に含有されている資源についても解説している。「資源は地中に埋まっているもの」という常識を覆し、日本は資源大国であることを理解するとともに、それらの資源を有効活用するためには日本の英知、つまり工学が重要な役割を果たすことを解説した入門書である。高校生以上、一般の人にも都市鉱山を理解するための本としてお勧めできる。
地上資源が地球を救う
馬場研二(技報堂出版)
地上資源(都市鉱山)と地下(天然)資源を対比させ、将来、人類が持続可能な(つまり次の世代に負荷を残すことなく生きていける)社会を構築するためには、都市鉱山の有効活用が必須となることを提唱している本。「エントロピー」なる熱力学で勉強する概念を、資源に関して適用し、わかりやすく解説している。高校生以上の読者であれば十分理解可能である。日本および世界各国のリサイクルの実情についても解説していてわかりやすい内容となっている。高校生以上、一般の人にも都市鉱山を理解するための本としてお勧めできる。