大都市は温室効果ガス・メタンの巨大な放出源になっていないか
ちっぽけな人間活動が地球環境に影響
空を見上げた時の雲の高さや地球の大きさを想像すると、ちっぽけな人間の活動が地球の気候や生態系に取り返しのつかない影響を与えているとは直感的に理解しにくいものです。
しかし、世界中の環境計測データや得られた知見を調べてみると、ちっぽけだと誤解しがちな人間活動は、地球システムを大きく変容させていることが理解できます。
同時に、複雑な地球システムを理解するためには、依然として評価のためのデータが不足していることも事実です。
都市からのメタン計測実績はほとんどない
都市が温室効果ガスを大量に放出していることは想像に難しくないでしょう。いっぽうで、実際に都市からのメタンを計測した事例は、世界中でもほとんどなく、想定している見積もりが正しいのか、よくわかっていません。
堺市中心部に計測システム設置
私たちは、風速計とガス分析計を組みあわせて、温室効果ガスが気流にのって運ばれる速度をリアルタイムに計測できるシステムを構築しました。
メタンはCO2に比べて大気中に200分の1の濃度でしか存在しないため、正確な計測ができるようにシステム設計を工夫しました。
堺市中心部を俯瞰する電波塔のてっぺんに計測システムを設置し、複数年にわたって連続計測することで、大都市中心部がメタンの巨大な放出源になっていないかを明らかにしようとしています。
気候変動対策を成功させるためには、温暖化のメカニズムの科学的な理解と、正確な情報を社会に浸透させることが必要です。環境計測に関わる科学者は、理解に不可欠なデータを取得して論文公表し、成果をアウトリーチして社会に発信することで、社会を動かすことができると考えます。
「大都市中心部からのメタン放出量の連続測定」
◆研究室に配属された時に
自らの工夫や努力では誰も取りえない未知のデータを取得することは、環境計測の分野で非常に重要であること。また、C. D. Keeling博士が1958年にCO2濃度を観測する技術を開発し、モニタリングしなければ、今日の温室効果気体による温暖化の理解は大きく遅れたことであろうことを話します。
◆主な職種
(1)ソフトウェア、情報システム開発(システムエンジニア)
(2)自治体、公的法人での技術系企画・調査
(3)中学校・高校教員
◆学んだことはどう生きる?
地球環境を評価するためのデータは膨大なデータを解析することになり、プログラミングを用いた高度な解析やデータ管理が必要となります。そのため、特に大学院まで進学した学生についてはプログラミング技術が身につくため、ソフトウェア開発等のシステムエンジニアの道に進み、社会に貢献したいと考える学生が多いようです。
緑地環境科学類では、人間活動を含めたより良い自然環境のあり方を探求する知識や技術を学ぶことができます。
大気、植物、水、土壌などの環境の基盤となる要素を研究する専門家と、都市デザインといった人間活動と緑のあり方を研究する専門家が集まり、農業環境工学、造園学や生態学といった基盤となる学問をキーに、研究グループを超えたつながりをもって研究教育活動を行っています。私はこの中で、気象と生態系、都市の関わりを研究しています。
Q1.一番聴いている音楽アーティストは? 鈴木慎一郎。『SOLITUDE』が気に入っています。 |
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Q2.大学時代の部活・サークルは? 軽音サークル |
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Q3.研究以外で楽しいことは? 子育て |