20nmのナノ粒子一粒から、雲誕生のなぞに挑む
雲生成には水蒸気が取りつく微粒子が必要
雲は地球に入ってくる太陽光の30%を宇宙に跳ね返す鏡のような役割をします。そのため雲の少しの変化や増減が地球の気候に大きな影響を与えます。そしてその雲ができるには、水蒸気が取りつく島となる微粒子(エアロゾル)の存在が不可欠です。
このような雲粒の種(雲凝結核)として働く粒子の多くは、空気中にわずかに存在するガス成分が素になって生まれます。
長年謎だった生まれたての雲の成分
しかし、生まれたての新粒子は直径が~数十ナノメートル(nm)しかないので、捕まえるのが非常に難しく(網の目をすりぬけてしまうイメージ)、うまく捕まえられたとしても量が少なすぎて分析できず、どんな成分でできているのか、長らく謎に包まれたままでした。
ユニークな実験を重ね、誰も手にしていない成果を
そこで、私たちは、粒子が雲粒の種になる性質を逆手にとって、(1)小さすぎるなら水で膨らませて雲粒にしてしまえば良い、(2)できた雲粒をそのままナノ粒子が溶け込んだミクロな試験管に見立てるというユニークな発想で、ナノ粒子分析の限界に挑みました。
試行錯誤を重ね、直径わずか20nmの粒子一粒に含まれるかすかな物質のピークを捉えた瞬間、実験を担当してくれた学生と共に、まだ誰も到達したことのなかった領域に初めて踏み込んだ興奮と研究の醍醐味を味わうことができました。
今後はさらにこのナノ粒子の捕集・分析技術を改良し、実大気への応用事例を増やすことで、エアロゾルが雲を介して与える気候への影響を明らかにしていきたいと考えています。
エアロゾルは、全体として地球大気を冷却する働きを持つと考えられていますが、特に雲を介してどれくらい地球温暖化を相殺しているかが明らかになっておらず、将来の気候変動を正確に予測する上での大きなハードルとなっています。
雲の種となるナノ粒子の生成プロセスが明らかになることで、その気候への影響の科学的な理解が進み、将来的な環境政策やリスク回避への提言につながります。
「超微小エアロゾルの革新的捕集法の開発と応用に基づく新粒子生成時の化学的動態解明」
◆松木研究室HP(Aerosols The Cloud Maker)
◆金沢大学松木研究室:能登スーパーサイトを訪れて(日本分析化学会)
◆主な業種
(1)電気・ガス・水道・熱供給業
(2)建設全般(土木・建築・都市)
(3)自動車・機器
◆主な職種
(1)システムエンジニア
(2)中学校・高校教員など
(3)大学等研究機関所属の教員・研究者
金沢大学地球社会基盤学類の地球惑星科学コース(旧理学部地球学科)では、地球の内外で起こる様々な自然現象を、広大な時間的(数秒から数億年)・空間的(ナノ粒子から火星まで)スケールで理解するための教育・研究を行っています。
実際にフィールドに出て、直接目で学ぶことを重要視し、最先端の分析機器や解析手法に触れながら、大気、水、個体、生物が織りなす地球と環境に関する幅広い視野と知識を習得します。