自ら集合・解散を繰り返す、不思議な高分子を開発
ゼリーのようなゲル。球状、雪だるま、形は様々

ゼリーや寒天のように水を多く含んで膨らむ物質をゲルと言いますが、中でもナノサイズ(1ナノメートルは10億分の1メートル)の人工的な微粒子が、私の世界を変える研究、高分子ゲル微粒子(以下ゲル微粒子)です。
電子顕微鏡で観察するほど小さい微粒子なのですが、真球状や細長い棒状、雪だるま、ラズベリーのように粒々が集まった形状など、形を作り分けることが可能です。
プラスチックなのに自らリズムを刻む
ゲル微粒子はいわゆるプラスチックの一種です。そんな人工物を特定の条件で作ると、自ら「膨む⇔縮む」というリズムを刻みます。
皆さんの胸に手を当ててみてください。一定の間隔でリズムを刻む心臓は、たくさんのゲル微粒子(心筋細胞)が集まってできています。
私たちが開発したゲル微粒子も、積み木のように組み上げると、心臓のように一定の周期で大きくなったり小さくなったりします。
体内の時計タンパク質に似ている
またゲル微粒子は「膨む⇔縮む」だけでなく、複数の微粒子が集合と解散を繰り返すことがあります。この動きは、私たちの体内にある時計タンパク質とよく似ています。
複数の時計タンパク質が集合したり解散したりすることは、私たちが夜になると眠くなったり、ある時間になるとお腹が空くといった日々の行動と密接に関わっています。
さらに、人々を苦しませる病気は、こうした体内のカラクリが乱れた時に生じるとも言われています。体の具合は、ナノ粒子の集合・解散によって決められているわけです。
ゲル微粒子の研究を医薬研究につなげたい
私たちはゲル微粒子の研究を深めることで、体の中のタンパク質の動きを簡単に模倣できないか挑戦しているところです。その結果、今は存在しない薬や治療法などにつながれば、という思いがあります。
私は医者ではありませんが、大学・大学院で極めようとして学んだ、化学と物理、生物の知識を駆使し、そこへ自分の想像力を最大限加えることで、世の中にない考え方、世の中にまだない方法や物質を開発しています。そして、輝かしい世の中に役に立ってほしいと思っています。
今ニュースになっていることは、今社会で活躍している方々に任せましょう。皆さんの勉強は、すぐに役に立たないかもしれません。しかし、皆さんが成長し、誰も行っていない方法で、聞いたこともないような研究をすると、未来のどこかで、きっと役に立つはずです。


◆研究に出会ったのは
研究室の指導教員に出会えたことが、今の研究につながっています。最初に見学に伺った際に、「ようこそ川口研へ!」と笑顔で出迎えてくれた時から変わらず、年の差はあっても、卒業して10年以上経った今でも、友人のようにお付き合いさせていただいています。恩師からは、世界の広さを学びました。

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Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 医学。当時は血を見るのが苦手だったから避けたのですが、医学を学んでいれば違う世界が見られたかなとも思います。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? アメリカ。何もかもが大きいから。 |
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Q3.一番聴いている音楽アーティストは? Mr.Children。好きな曲は、『名もなき詩』、『Worlds end』、『終わりなき旅』。 |
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Q4.熱中したゲームは? 『ドラゴンクエスト』、『ファイナルファンタジー』(小学校の時はレベル99まで上げました!) |
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Q5.研究以外で楽しいことは? 子どもと昆虫採集 |