Sound Materials: A Compendium of Sound Absorbing Materials for Architecture and Design
Tyler Adams(Frame Pub)
一言で言うと音響材料の百科事典です。豊富な写真が掲載されていて、「音環境を調整する材料」がどのようなもので、どんな場所で使われているのかを視覚的に楽しく学べます。
この本を読んだあとは、身近な空間でこれが音響材料かなと探してみると、きっと楽しくなるはずです。そして、その場所を「ここは心地よい」「ここはちょっと落ち着かない」といった音環境の観点から感じてみてください。音響材料がどのように使われていると心地よい空間になるのか音環境のデザインに関心を持つきっかけになれば嬉しいです。パラパラとページをめくるだけでもワクワクする一冊です。
新しい音響材料で、まだ見ぬ"音の空間"を仮想世界でつくり出す
「音の心地よさ」を生み出す音響材料
建物の音環境―たとえばコンサートホールで感じる音の豊かさや、教室での声の聞き取りやすさ―は、壁や天井などの材料の組み合わせでつくり出されています。こうした「音の心地よさ」をデザインするために欠かせないのが音響材料です。適切に使うことで空間の用途にあった音環境を整えることができ、それは私たちの認知能力や健康、ウェルビーイングにも大きく関わっています。
私はこの音響材料の中でも「音響メタマテリアル」と呼ばれる材料の開発に取り組んでいます。これは、素材そのものの性質ではなく、素材の形を工夫することで必要な音響特性を生み出す材料です。主に音の波長よりも小さな共鳴を含む単位構造を周期的に配置した構造を持ちます。さらに環境配慮型素材を用いることで持続可能で環境にやさしい音響材料となり、音環境と地球環境の両方を見据えたサステナブルな音環境設計が可能になります。
独自のシミュレーション技術で、VR内に音環境を再現
では、この新しい材料でどのような音響特性が実現でき、さらにどのように心地よい音の空間をデザインできるのか。
この問いに答えるため、私はまず、様々な音響特性を実現するための素材の形に関するレシピ作りを行っています。さらに、独自に開発した空間音響シミュレーション技術を用い、仮想空間でのプロトタイピング(音環境の試作)によって、その可能性を探っています。この技術は、波動音響解析による物理シミュレーションおよび立体音響技術を組み合わせて、仮想空間内に現実に近い音環境を再現することを目指したものです。
例えば、音響材料のある場合とない場合の違いや、音響材料をどこに・どのくらい配置するかによって、声の聞き取りやすさがどう変わるのかを体験できます。さらに、男性・女性の声、日本語・英語の音声など話し手や言語の違いによって、聞き手にはどのように聞こえるのかも体験できます。このプロジェクトでは、さまざまな空間を対象に、様々な音響特性を持つ音響メタマテリアルをどこに・どれだけ配置したら、どのような音環境をつくれるのかを、仮想空間上で探ることを目指しています。
「音響メタマテリアル吸音体による建築の音環境設計技術のバーチャルプロトタイピング」
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