数理情報学

数理最適化

最適化理論にひそむ美しさに惹かれて、「解けない最適化問題」へ挑戦


村松正和先生

電気通信大学 情報理工学域 I類(情報) 情報数理工学プログラム(情報理工学研究科 情報・ネットワーク工学専攻)

出会いの一冊

ゲーム情報学概論 ゲームを切り拓く人工知能

伊藤毅志、保木邦仁、三宅陽一郎(コロナ社)

ゲーム情報学はいわゆる囲碁将棋からデジタルゲームまで、エンタテインメントとしてのゲームを研究対象とする新しい分野である。その分野を俯瞰する書として、ゲームに興味のある人、ゲームを研究対象にしたい人にはぜひ読んでほしい一冊である。

なお、ゲーム情報学とゲーム理論は、基本的には異なる分野である。この違いは本書に書かれているので、興味のある方はぜひ本書を読んでいただきたい。また、ゲーム情報学には最適化が深く関わっていることも、本書を読めば自然に理解できるでしょう。

こんな研究で世界を変えよう!

最適化理論にひそむ美しさに惹かれて、「解けない最適化問題」へ挑戦

二次関数も理科実験も最適化

皆さんは「最適化」という言葉を聞いたことがありますか?少し難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと「いちばん良い方法を見つけること」です。

実は、中学・高校の勉強や生活のなかでも最適化に出会うことがあります。たとえば数学で二次関数を学ぶとき、グラフの頂点を求めて「最大値」「最小値」を考えますよね。これはまさに最適化の入り口です。微分を習うと、「関数の値が一番大きくなる点や小さくなる点」を探しますが、これも同じです。

理科の実験でも「どの条件で一番良い結果が得られるか」を工夫することがありますし、情報の授業でプログラムを効率よく動かす方法を考えるのも最適化です。

儲けたいけど、リスクを最小にしたい

さて、世の中にはどのような最適化問題があるでしょうか?

たとえば、皆さんがスマホで行き先への経路を探すとき、そこでは「旅行時間が最小になるような経路を探す」という最適化問題を解いています。また、もう少し大人になると、株とか国債とかに投資してお金を儲けたいという人も出てくるかもしれません。誰しもお金を儲けたい気持ちはありますが、儲かる株ほど値が下がる危険もあります。そこを調整して「ある一定以上の利得を期待しながら、リスク(危険度)を最小化する」という問題も最適化問題になります。

上で紹介した例は、それぞれ「最短経路問題」「ポートフォリオ問題」と呼ばれています。「ポートフォリオ問題」を提案した研究者は、その成果によりノーベル経済学賞を受賞しました。実は囲碁・将棋・トランプ等のゲームも、最適な戦略を見出したいという観点に立つとき最適化が必要になります。また最新のAIの製作現場でも「もっとうまく問いに答えられるようにAIを調整したい」という欲求があり、最適化の技術が使われています。

解けない最適化問題=「一番良い方法はわからない」

このように「一番良い方法を見つけたい」という場面は多いですから、それらを片っ端から最適化問題にして解けばいいんだな、と思うかもしれません。しかし、実は「解ける最適化問題」と「(少なくとも現在の技術では)解けない最適化問題」があります。課題をを最適化問題にしてみたとき、解けない最適化問題だと「一番良い方法はわからない」ということになります。実はこれは結構あります。

そうすると、2つの研究の方向が浮かび上がります。1つは、「現在の技術では解けない最適化問題を解けるようにする」という方向と、もう1つ、「課題を解ける形の最適化問題で表現しよう」という方向です。前者は最適化アルゴリズムの研究、後者は最適化モデリングの研究と呼ばれます。

これらが両輪のように進むことで、最適化の研究が進み、新しい発見や便利なサービスが今日も生まれているのです。

テーマや研究分野に出会ったきっかけ

実は記事の中では言っていないことがあります。それは、最適化には「双対性」という概念が深く関わっていて、それが非常に美しいのです。私はその美しさに惹かれて、最適化理論の研究を続けてきました。ただ、その美しさに気付いたのは博士課程学生のときです。十分に学問的素養を高めないと、そういう美しいものには出会えないこともあるということは知っておいてほしいです。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「整数制約つき半正定値計画問題への挑戦」

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学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) ソフトウエア、情報システム開発

(2) コンピュータ、情報通信機器

◆主な職種

(1) システムエンジニア

(2) 保守・メインテナンス・維持管理、運用・システムアドミニストレータ・サービスエンジニア

(3) 技術系企画・調査、コンサルタント

◆学んだことはどう生きる?

1. ゲーム会社でゲームやツールの制作をしている者。ゲーム情報学の知識・技術を活かす。
2. データサイエンス系の会社でのデータアナリスト。最適化やオペレーションズ・リサーチの技術を活かす。
3. 大手企業でIT関係の仕事。プログラミング技術等を活かす。

先生の学部・学科は?

ゲーム情報学は私の所属する学科(I類)の特徴的な研究テーマです。今回紹介した書籍『ゲーム情報学概論』の著者のうち、2人は同じ学科の教員です。中でも保木先生は、「ボナンザ」という有名な将棋プログラムの作者でもあります。ゲームの研究に興味のある方は、ぜひ本学への入学を考えてみてください。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

三体

劉慈欣(ハヤカワ文庫)

スケールの大きさに驚くとともに、全編を通じて物理学が重要な働きをする。こんな面白い小説には他に出会ったことがない。スケールの大きな考え方を身につけるのにおすすめ。


入門 オペレーションズ・リサーチ

松井泰子、根本俊男、宇野毅明(東海大学出版会)

高校生でも読み進められるオペレーションズ・リサーチの入門書。章ごとにテーマが分かれていて読みやすい。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

今と同じ

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

アメリカ:一度東海岸に暮らしたことがありますが、生活がイージーなのです。

Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

グレン・グールド

Q4.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

囲碁