新たな手法で生き物が作る未知の化合物を探索、創薬へつなげる
生き物が作る化合物が薬のヒントに
私たちがよく見かける医薬品は、一体どうやって開発されているか皆さんはご存じでしょうか?実は、今までに承認された医薬品の約半数は、自然界に生息する様々な生き物たちが作った化合物をヒントに開発されたものです。
生き物たちは、人間の頭では考えもつかないようなユニークな形や機能を持った化合物を作り、生存に役立てています。
微生物や海の底にいる無脊椎動物から
そこで我々は彼らの知恵を拝借し、これらの化合物を利用することで医薬品の研究を行っています。私たちはこれまで、このような天然由来の化合物を、抗菌活性や抗がん活性など、化合物が持つ様々な機能を指標に探索してきました。
例えば、微生物の培養液や海の底にいる無脊椎動物の抽出物にはとてもたくさんの種類の物質が含まれているのですが、その中から色々な方法をもちいて精製を繰り返していくことで、私たちにとって役に立つ機能を持つ化合物を見出していきます。
ユニークな化合物を遺伝情報から予想
ところが最近では、せっかく苦労して見つけてきても、すでに知られている化合物や似た形の化合物であることが多くなってきました。そこで私たちの研究室では、まだ世界で知られていないユニークな形を持つ化合物を発見するために、生き物の持つ遺伝情報を活用しています。
遺伝情報には、彼らが作る化合物の設計図のようなものが描かれているのですが、その設計図を読み解くことで、彼らが一体どのような形の化合物を作りうるのかを調べます。そして、面白そうな新しい形の化合物を作っていると予想されたものについて、抽出物からお目当ての化合物を探索するという方法で宝探しをしています。
「未利用微生物からのゲノムマイニング法による新規化合物の探索」
北里大学海洋生命科学部では、海洋に関する様々な研究が行われています。化学系の研究の他にも、海洋生物の生態や、養殖に関する研究など多岐にわたりますので、皆さんが興味を持てる研究テーマがきっと見つかると思います。また、建物の一階には、学生が運営するミニ水族館もあります。