細胞生物学

細胞間コミュニケーション

細胞同士がリモートで会話して、壊れた組織を修復!?


榎本将人先生

京都大学 生命科学研究科 高次生命科学専攻/薬学部 薬科学科

出会いの一冊

遺伝子命名物語 名前に秘められた生物学のドラマ

坪子理美、石井健一(中公新書ラクレ)

遺伝子にはそれぞれ名前があります。その中にはとても個性的な(ユーモア満載な)名前が付けられた遺伝子があります。「ムサシ」、「マージャン」など誰もが聞いたことがある名前があります。

このような遺伝子はどんな経緯で、なぜその名前になったのか。発見者(名付け親)が語る発見のエピソードからは、研究の面白さや現場の臨場感が得られること間違いなしです。

遺伝子発見のドラマとして、生命科学の雑学として面白く書かれており、本著から研究者の思い・個性を垣間見ることができると思います。

こんな研究で世界を変えよう!

細胞同士がリモートで会話して、壊れた組織を修復!?

様々な細胞が協力し合う

私たちの身体の中の組織・臓器は様々なストレスにより傷害を受けますが、損傷した組織は傷を修復して再び元通りの機能や形態を取り戻すことができます。このような壊れた組織を修復し再生する過程では、様々な細胞が協力し合っています。

例えば、上皮という組織は上皮細胞によって構成されていますが、上皮の一部が傷害を起こると上皮細胞だけではなく線維芽細胞、免疫細胞、血管内皮細胞といった様々な細胞が協調することで組織の修復を促していきます。このとき、それぞれの細胞同士が上手くコミュニケーションできないと、損傷組織の修復に異常が生じて最終的に組織の機能低下が引き起こされます。

コミュニケーションする組織・臓器

さらに最近では、身体を構成している多種多様な組織・臓器が互いにコミュニケーションし、生体の機能を一定に保つ恒常性(ホメオスタシス)を維持していることが分かりつつあります。つまり、脳、心臓、肝臓、筋肉など離れた組織がリモートで会話しているわけです。

謎の多い恒常性の仕組みをショウジョウバエで

私たちは現在、スマホやパソコンを使えば遠く離れた相手とも情報を交換できます。また、SNS等を通じて多数の相手に情報を発信することも可能です。しかし、組織傷害時に身体の中で空間的に離れた細胞や組織がどのように情報を共有し生体の恒常性を維持しているか、その仕組みにはまだまだ不明な点が多く残されています。

この問いを解くために、私は遺伝学的操作が容易なショウジョウバエという小さな生き物を用いて日々研究しています。さらに、組織傷害時の細胞同士の情報ネットワークの仕組みの解明は、がんや細菌感染といった身体の異常を引き起こす他の現象の理解にもつながると考えています。

ショウジョウバエの個体を解剖して取り出した組織を顕微鏡で観察している様子です。この瞬間が一番ワクワクします!
ショウジョウバエの個体を解剖して取り出した組織を顕微鏡で観察している様子です。この瞬間が一番ワクワクします!
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

もともとショウジョウバエを用いて、がんの発生・悪性化の研究をしていました。ある日、いつものように顕微鏡を覗いていると、がんを引き起こす細胞や組織の応答が損傷組織の修復再生で起こる現象とよく似ていることに気づきました。

そこで、最初は遊び心から組織修復の実験を始めてみました。その結果、がんと修復再生では共通の分子や細胞が関わっていることがわかりました。この発見以降、「組織修復」と「がん」を制御する細胞同士のコミュニケーションを研究しています。

研究で用いているショウジョウバエ。体長2mm程度です。エサ(下のクリーム色のもの)を入れた筒状の容器で飼育しています。
研究で用いているショウジョウバエ。体長2mm程度です。エサ(下のクリーム色のもの)を入れた筒状の容器で飼育しています。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「組織修復を駆動する組織微小環境ネットワーク」

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先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
研究室の食事会の風景。こういう場では研究以外の話題もたくさん出て、みんなでワイワイ盛り上がっています。
研究室の食事会の風景。こういう場では研究以外の話題もたくさん出て、みんなでワイワイ盛り上がっています。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

◆主な職種

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

若い研究者へ遺すメッセージ 小さな小さなクローディン発見物語

月田承一郎(羊土社)

細胞同士の接着に関わる分子クローディンの発見者でもある月田承一郎氏が残した著書。細胞生物学者としての生き様や信念を感じる名著です。

大学院生時代に読む機会があり、「見る(観察)」ことの大切さを実感しました。サイエンスに真摯に取り組む姿勢など科学者としての在り方を多く学べることから、将来科学者を志す方には是非読んで欲しい本です。


ゴールデンカムイ

野田サトル(ヤングジャンプコミックス)

個性的なキャラクター達が隠された金塊を探すストーリーを中心に描いた作品です。実在した幕末の新撰組隊士も登場しています。

作中ではアイヌ文化やヒグマの生態などをコミカルに描いており、北海道の自然や文化人類学にふれることができる傑作です。


眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法

島崎晋(‎日本文芸社)

中国春秋時代の武将である孫武(=孫子)が書き残した「孫子の兵法書」。兵法書と聞くと小難しい印象を受けますが、その中身は現代社会にも通じる格言がたくさんあります。

孫子の兵法を取り上げた本は数多く出版されているので自分に合う本を読むのが一番ですが、本著は孫子に初めてふれる人にもわかりやすく書かれています。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

日本史。生まれ育った場所が桶狭間に近いこともあり、幼少期から歴史が好きで高校の時は大学では史学を専攻しようと思っていました。結局は理系科目の方が得意で理学部に進学しましたが。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

X JAPAN。特に『Silent Jealousy』という楽曲が好きです。小6か中1の頃にX JAPANを初めて聴いて以降、今でもふとした時に聴いています。

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

バック・トゥ・ザ・フューチャー

Q4.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

ダービースタリオン(学生時代)。今はほとんどゲームをしてないです。競走馬の血統表を見ながら、あれこれ配合を考える作業がとても楽しかったです。ゲームから得た知識が今でも競馬を見る際に大いに役立っています(当たるか否かは別として…)。


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