企業不祥事を防ぐには、風通しの良い企業風土を作ることから
利潤を求めなければ不祥事はなくなるか
ニュースで「企業不祥事」という言葉をよく目にします。企業不祥事は、ハラスメント、不正会計など様々です。
ニュースの解説では、企業の目的が利潤の最大化であり、その目的のために手段を選ばないので、不祥事が絶えないようなことも言われます。企業が利潤を求めなくなれば、不祥事はなくなるのでしょうか。
コンプライアンスは人次第
日本企業は、不祥事を防止するために、この30年余りの間、コンプライアンス体制を整備してきました。行動基準を定め、その周知のために社員研修を行い、不正を通報する仕組みなどを導入しています。
仕事がやりにくくなったと感じるビジネスパーソンからは、「コンプラ」という揶揄するような言葉も聞かれます。制度がうまく運用されるかは、それに関わる人次第です。現在の不祥事防止制度には、課題が残されています。そこで、制度ではなく、組織風土に注目しました。不祥事の原因として組織の風通しの悪さが挙げられているからです。
不正を見たら、誰かに伝えられる組織作りを
風通しの悪い密室で、人々が外のことを気にせずにコソコソと何かを決めているとしたら、それはあまり良いことではないでしょう。だから、企業不祥事を防止するには、風通しの良い組織風土を作ることが重要だとされるのです。
風通しの良い組織とは、自分が正しくないと思った行為を見たら、それを誰かに伝え、その行為を止められる組織です。伝えたことにより、報復を受けることがあってはなりません。どうしたら、風通しの良い組織風土になるのかを探究しています。
男性も女性も、日本人も外国人も、健常者も障がい者も、高齢者も若者も、誰でもが働きがいを感じながら、AIにはできない人間らしい仕事をするという課題があります。
それに対して、ダイバーシティ&インクルージョンの観点から、まだ、日本企業が十分に活かしていない構成員のダイバーシティを、イノベーションに結びつけられることを示し、有効なダイバーシティの管理のあり方を提示することで、企業活動に寄与できます。
◆先生が心がけていることは?
学部においてはSDGs研究会を組織し、教育者としてばかりでなく研究者としても取り組んでいます。
「企業不祥事防止のマネジメント-風通しの良い組織風土の解明」
◆「商学専門演習」ゼミでは
「良い企業とは何か」について、不祥事を起こさないことはもちろんですが、企業に関わる「ステークホルダー」の存在を気づかせるために、誰にとって良い企業かを問い、様々な経営指標があることから「良い」の基準とは何かについて質問をし、様々な立場から議論しています。
◆主な業種
(1)金融企業の人事・法令遵守関連業務
(2)メーカーのIR・広報・営業
(3)IT企業の広報・SE
◆学んだことはどう生きる?
学生時代はゼミ長を務め、現在家業を継いでいる卒業生がいます。卒業後も、毎年、ゼミの勉強会に参加し、学生と一緒に「従業員にとっての良い会社」などをテーマとする討論にも参加しています。社長として働き方改革に取り組み、休日の増加と労働時間の短縮を同時に実現し、仕事の共有化を進めて育児休暇を取りやすくしました。その結果、離職率も3年連続で0になり、自治体から「good balance 会社賞」を受賞しています。
明治大学商学部は「学理実際兼ね通ずる人材の養成」を学部創設以来の教育理念とし、学生に理論を学ばせ、実践させることを教育の特色としています。また、実践における課題を理論化することを研究の特色としています。商学は、経営学の中に分類されることが多いのですが、こうした分類が行われる前に学部が創られているため、経済学、経営学、会計学、インシュアランス、マーケティングなど、広い領域の研究が行われることも特色です。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 商学。経済学、経営学などを含む、幅の広さ、奥深さが魅力です。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? シンガポール。シングリッシュと言われる言語の寛容さ、治安の良さ、多様性からです。 |
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Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は? 『インサイダー』。内部告発の難しさを実感しました。 |
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Q4.研究以外で楽しいことは? 大学で、学生に教え、学生から学ぶことが楽しいことです。 |