冷戦後、アメリカを中心に先進国が作り上げてきた世界の秩序は、いま二重の挑戦を受けています。一つは、中国やロシアといった勢力の台頭です。二国はアメリカとの正面衝突を慎重に避けながらも、アメリカの行動の自由を狭めるような挑戦的行動を取っています。中東などにおけるロシア、東シナ海・南シナ海における中国などの行動は、その顕著な例です。もう一つの挑戦は、テロリストに代表される暴力の行使です。この二つの挑戦がどのように生じているのか、どんな方向に向かうのかを検討することは、日本の今後も含め、現代社会の難題を考える上で極めて有意義でしょう。
総力戦と冷戦 東アジアをとりまく国際政治
私は、20世紀前半までの、国家が全面衝突する総力戦体制が、その後どのように冷戦という形に変容していったのか、理論的な解明に取り組んでいます。その中で、中国、ソ連(あるいはロシア)、アメリカ、日本が、どのような国際環境の制約条件のもとに対外政策を構想してきたのかを明らかにします。
例えば、日本は、戦後アメリカとの同盟関係に入ることで、軍事手段を対外戦略の一手段として構想することを避けてきましたが、アメリカからの制約を受けることになりました。一方、中国はソ連と同盟関係に入ったものの、やがて中ソ同盟は破綻します。それによって中国は軍事手段を対外戦略の重要な一手段として構想してきました。このように各国の対外政策を考察することで、今後日本を含めた関係国がどのような対外政策を取るかを探ります。
知人者智。自知者明。〔他人を知るものは智者であるが、己を知るものは明者である〕
勝人者有力。自勝者強。〔他人に勝つものは力をもつが、己に勝つものは真の強者である〕
――『老子』
文学・哲学から経済・フィールドワークまで幅広い分野を学びながら、多文化が共生する社会とはどのような社会なのかを丁寧に考えようとする教員、学生が集まる場所です。