太陽は表面からイオン化された気体、すなわちプラズマを放出します。プラズマは太陽風となって太陽系の果てまで流れます。観測によって、太陽風が放出されるとき突発的に太陽表面爆発が起こることが知られていますが、どうしてそうなるのかそのメカニズムはよくわかっていません。
また爆発は太陽表面のコロナという光輝部分が明るく輝いたために起こるということは知られていますが、なぜコロナが太陽表面の6000度よりはるかに高温になるのかわかっていません。こうした自然現象として観測されたプラズマを理解することによってこそ、人の手で制御できるような人類のプラズマ利用も進むと思われます。
スーパーコンピュータも活用しプラズマ解析
私はプラズマ物理学が専門です。特に理学的な側面に興味があります。太陽で観測されるふしぎな現象を、数式などを用いて説明します。自然現象として観測されたプラズマを理解することによって、核融合プラズマの制御にも役に立ちます。それは太陽のエネルギー源である核融合反応を用いた核融合発電の実現に直接つながります。
プラズマの動きを解析する際には、コンピュータによるシミュレーションが威力を発揮します。それによって、プラズマの挙動を再現することができます。スーパーコンピュータを効率的に活用する方法も研究しています。その方法論は様々な分野に波及することが期待できます。
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「3.地球・宇宙・数学」の「10.素粒子、宇宙、プラズマ系物理」
一般的な傾向は?
●主な業種は→IT系
●主な職種は→プログラマー、SE
大学院情報科学研究科の前身である大学院シミュレーション学研究科は、2011年に理化学研究所の京コンピュータが神戸ポートアイランドに設立されたことを契機に、独立した大学院として開設されました。計算機シミュレーションを自然科学、社会科学の様々な問題に活用して研究を行ってきました。2021年からは、データ科学と計算科学を基盤に、健康医療科学や情報セキュリティの応用分野も網羅した新しい「情報科学研究科」に改組されます。「データ科学」と「計算科学」の基本概念・知識を網羅的に習得することができます。
理学的な研究や核融合発電のような長期的な開発研究は、生活にすぐに役立ったり就職に直結したりといった直接的な利点が見えにくいものです。ですが、純粋に興味だけで進路を選んでみるのも良いのではないでしょうか。それがプラズマや核融合であればぜひ私に連絡してみてください。大学や大学院は知的好奇心に向き合える最後の機会かもしれません。
一方で、学習や研究活動を通して自分自身で考え身につけたものは、社会に出れば直接的ではなくても必ず役に立ちます。自律的に考える力や、言葉や文章で発信していく力などを大学生活で養ってください。
最近では、高校で情報処理のような授業もあるようですから、パーソナルコンピュータを用いて、物理や数学の問題に取り組んでみるのが良いかなと思います。プログラミングの知識があれば、コンピュータ上で物理現象を再現するシミュレーションを実行できると思います。
参考ウェブサイト http://www.natural-science.or.jp/PHYSICS/
高校数学でわかるマクスウェル方程式 電磁気を学びたい人、学びはじめた人へ
竹内淳(講談社ブルーバックス)
高校物理で習うように、電磁場は、電場(電界)と磁場(磁界)の総称だ。電場と磁場は時間的に変化する場合には、互いに誘起しあいながら変化していくので、まとめてそう呼ばれる。マクスウェルの方程式とは、この電磁場のふるまいを記述する古典電磁気学の基礎方程式のこと。この本は数式を必要最小限にとどめ、高校数学でわかるようになっている。電気系の大学に進学した人の中には、「高校物理で学習した電磁気学の様々な法則が、大学ではマクスウェル方程式という四つの方程式に集約されることに感動を覚えた」という意見も多い。高校で学習した物理や数学の内容で、より高度に洗練される過程を垣間見られることが良いかも知れない。