地質学

海底のかんらん石を調べ、巨大地震をおこす地球の躍動を探る


道林克禎先生

名古屋大学 理学部 地球惑星科学科(環境学研究科 地球環境科学専攻)

どんなことを研究していますか?

地球の内部構造はどんな構造なのかというと、層構造をしています。私たちがその上で生きている「地殻」と呼ばれる層は、6〜40km程度の薄い層です。地殻は、陸地部分である大陸プレートと海洋プレートから成ります。そして、地殻の下には「マントル」があります。

マントルは中心に向かって2900kmまでと、地球で最も多い成分を占める層であり、地殻変動にも大きな影響を与えています。マントルがどのように流動するかを知ることは、その上の地殻で起こる大陸移動や火山活動、プレートの沈み込みによる巨大地震など自然災害の現象を理解するうえで重要なのです。

小笠原海溝・マリアナ海溝・トンガ海溝のかんらん岩

私は、マントルがどのような流動をしているのか、その流れの性質を研究しています。具体的には、マントルの主な成分の一つ、かんらん石を調べています。かんらん石は、地殻の造岩鉱物で大部分を占めるケイ酸塩鉱物というグループに属する岩石です。

特に追求しているのは、小笠原海溝・マリアナ海溝・トンガ海溝など世界で最も深い海域の海底に露出しているかんらん岩の物理化学的性質を明らかにすることです。それによってプレートの沈み込みなどを起こすプレートテクトニクスと呼ばれる表層変動がどう始まり、今後どのように変化していくのか、また、巨大地震などの発生メカニズムを理解する手がかりになると考えています。

北海道アポイ岳ジオパークの幌満カンラン岩をアポイ岳登山しながら見学。写真は6合目付近。
北海道アポイ岳ジオパークの幌満カンラン岩をアポイ岳登山しながら見学。写真は6合目付近。
この分野はどこで学べる?
学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

●主な業種は→地質コンサルタントや地方自治体などの公務員と教員

●主な職種は→技術職、総合職、教育職

●業務の特徴は→地球科学の知識を活用できること

分野はどう活かされる?

我が国のエネルギー事情を改善するために石油・石炭などの資源探査で活躍しています。また、海洋底の熱水循環などの調査にも取り組んでいます。

先生の学部・学科はどんなとこ

名古屋大学理学部地球惑星科学科は、地球について学ぶための多彩なカリキュラムを用意し、幅広い分野のスタッフによって地球惑星科学に興味のある学生を少人数クラスで基礎から応用まで手厚く教育しています。

私が所属する地質・地球生物学講座では、岩石、鉱物、化石を探すため、北海道から沖縄までの様々な地域や、日本近海の研究航海までを含む、様々なフィールドワークを行なっており、新たな経験ができるでしょう。

その他の講座では、火山や地震などの自然現象、宇宙の物質や惑星形成論から生き物の生態や考古学、さらに森林や持続可能な社会のシステムデザインまで幅広い分野を学ぶことができる学科です。皆さんと一緒にサイエンスができることを楽しみにしています!

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先生からひとこと

地質学は、そこに何があって、なぜどのようにしてそこにあるのか、科学的に明らかにする学問です。自然の景観には必ず地質学的な理由があって、これまで見過ごしていた多くの自然現象を科学的な知識で見直すと、想像以上の世界が現われてきます。その世界を知った時、初めて地球惑星科学の面白さ楽しさを体感するでしょう。

先生の研究に挑戦しよう!

花崗岩という岩石をよくみると、色も模様も違っています。色の違いは鉱物の種類と量に関係し、模様の違いは地下深部で流れた痕跡です。花崗岩の色と模様の違いを見つけて、何がどのように違っているのか、その原因は何か考えてみよう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

地球を突き動かす超巨大火山 新しい「地球学」入門

佐野貴司(講談社ブルーバックス)

超巨大火山とは、破局噴火ともいい、地下のマグマが一気に地上に噴出する壊滅的な噴火形式で、しばしば地球規模の環境変化や大量絶滅の原因となる火山のことを指す。長年超火山を調査してきた著者は、地球内部の大部分を占めるマントルについて、超巨大火山の形成過程モデルの最新の情報を紹介しながら、地球全体のスケールと長い時間軸で何が起きているのか解説する。さらに超巨大火山の噴火が引き起こしたかもしれない生物大量絶滅についても解説する。


できたての地球 生命誕生の条件

廣瀬敬(岩波科学ライブラリー)

地球は太陽から3番目に近い太陽系の惑星の一つであり、人類など多くの生命体が生存する天体だ。表面に水、空気中に酸素を大量に蓄え、多様な生物が生存することを特徴とする惑星である。この本は、地球がどうのように生まれたのか、地球の内部がどうなっているのか知ることができる。特に問題は、水も炭素もなかったできたての地球に、なぜ有機生命体が誕生したのかという謎だ。初期地球に水がなかったとすれば水はどこから地球に運ばれてきたのか、その謎に迫っていく。


ザ・コア

ある日の午前、鳩の大群など動物の異常行動を皮切りに、多数のペースメーカー使用者の突然死やスペースシャトル電子機器異常などで、地上は大混乱に陥る。調査の結果、これらの原因は地球の核(コア)の回転が停止し、地球の磁場が不安定になったからだと突き止める――。2003年、アメリカのSFパニック映画。地球内部がどのようになっているのか、地球の環境がどのように維持されているのか、地球磁場がどのくらい大切なものなのか、マリアナ海溝とは何なのかなどを知ることができる。(ジョン・アミエル:監督、 アーロン・エッカート、ヒラリー・スワンク、デルロイ・リンド:主演)


スノーボール・アース 生命大進化をもたらした全地球凍結

ガブリエル・ウォーカー 川上紳一:監修、渡会圭子:訳(ハヤカワ文庫NF)

スノーボール・アースとは全地球凍結ともいい、地球全体が赤道付近も含め完全に氷床や海氷に覆われた状態のこと。1992年、米国のジョー・カーシュヴィンク教授がそのアイデアを専門誌に発表したのが発端で、大きな反響を呼んだ。この本は、今も論争を呼ぶこの仮説をもとに、地球がかつて厚い氷で覆われていた時代が確かにあったとして、全球凍結仮説に関する理論や研究者たちが証拠を求めて探索する、生々しい活動が描かれている。



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