物質を低温から温度を上げていくと固体・液体・気体へと状態が変化し、さらに温度を上げると、原子・分子の一部が電離してイオンと電子が発生し「物質の第4状態」であるプラズマになります。地球上でプラズマを見かけることはまれですが、その強い発光強度、高い温度、高い化学反応性などの特長から広い分野で工学的に応用されており、その用途は年々広まっています。
例えば、コンタクトレンズの着色や、スマートフォンやコンピュータのディスプレイ、メモリ、演算装置などを作るのにプラズマが使われており、最近では無機物に加えて、有機物や生体に対する処理にも適用されつつあります。
プラズマ技術は、その活躍の場を広げ、急速に技術革新と新規応用展開が進んでいます。特に大気圧放電は、室温で放射線の30倍もの活性酸素種を表面に供給できること、放射線に比べて遺伝子損傷が少ないこと、短寿命ラジカルを高濃度に発生・供給できることから、薬剤に頼らない殺菌・滅菌法としてプラズマ殺菌・滅菌装置へと、低侵襲医療機器としてプラズマ止血装置等へと展開され、実用化・産業化を目指して研究が進展しています。また、このようなプラズマのバイオ応用展開の一環として、プラズマの医療応用、農業応用の研究が急速に発展しています。
新材料・新デバイスや医療・農業などの新応用に貢献
人類はこれまで、主として熱平衡プロセスを用いて物作りを行ってきました。熱平衡状態では、温度や圧力などの極めて少数の状態量だけで、生成物の構造・機能が決まるため、再現性の良い物作りが可能な反面、自由度が無く平衡状態に近いものしか作れません。それに対し、非平衡プラズマを用いたプロセスでは、熱平衡の制限が無くなり、極めて自由な物作りが可能となるため、最先端の物作りでは非平衡プラズマプロセスがどんどん取り入れられています。しかし一方で、人間はまだ非平衡プロセスを自在に使いこなすにはほど遠いのが現状です。
私の研究室では、非平衡性プラズマプロセスを使いこなして、新材料・新デバイスや医療・農業などの新応用を発展させることを目標に研究を行っています。新材料・新デバイスの研究は、大容量通信、超高速・低消費電力のスマートフォン、フレキシブルデバイス、高効率太陽電池などの実現を通して情報爆発やエネルギー問題の解決につながります。また、プラズマ医療では現在、治癒が難しい癌を選択的に殺すことに、プラズマ農業では生産性の大幅向上により食糧問題を解決することにつながります。
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「3.地球・宇宙・数学」の「10.素粒子、宇宙、プラズマ系物理」
一般的な傾向は?
●主な業種は→電気機器、精密機器、自動車、電力
●主な職種は→研究開発、製造
●業務の特徴は→電気系の専門力を活かした業務
分野はどう活かされる?
メモリ・演算装置などの半導体集積回路素子、ハイブリッド自動車・電気自動車などに使われるパワー半導体の開発・製造(プラズマが多用されている)
プラズマを用いた太陽電池、半導体、二酸化炭素処理、農業応用、医療応用などの研究を幅広く行っています。九州大学には、プラズマ応用に関してプラズマナノ界面工学センターがあり、世界のプラズマエレクトロニクス研究の中心の一つとなっています。プラズマ応用の研究のために、海外の一流大学からの留学生が九大に入学するとともに、九大の学生も海外の大学に留学しています。
プラズマ応用の研究者・技術者は、国内外で強く求められている将来性豊かな専門職です。研究室の卒業生は、国内だけでなく米国・EU諸国などの海外でも活躍しています。皆さんも世界で活躍出来る力を九州大学で身につけませんか。
プラズマを用いた植物の成長促進に関する研究は、比較的簡単に取り組めると思います。