医療系薬学

アトピー性皮膚炎を根治する治療法の開発!


松井勝彦先生

明治薬科大学 薬学部 薬学科

どんなことを研究していますか?

かゆみや、見た目の不安が伴うアトピー性皮膚炎は、日常生活への障害や精神的な負担が多い病気です。患者の多くは20歳以上で、日常生活への障害などで、仕事への支障も大きくなりがちです。アトピー性皮膚炎は、アレルギー疾患の一つで、生体側の免疫応答の異常を原因としています。

この免疫異常を引き起こす要因には、食物成分や皮膚の保湿に関わる成分も含まれていると考えられています。また、皮膚常在菌のバランスの乱れが原因となっている可能性も高いとも言われています。しかし、諸説があって、まだ十分に解明されていません。

悪玉皮膚常在菌が、アトピー性皮膚炎を増悪させる!

私はアトピー性皮膚炎治療の開発に取り組んでいます。具体的な方法として、アレルギーを引き起こしてしまう免疫応答の異常に対して、皮膚に存在する、ある特別な細胞を制御することを考えています。そこがこの研究の重要なポイントの一つです。

また同時に、患者の皮膚に定着する黄色ブドウ球菌という悪玉菌が、その免疫異常をさらに増悪させ、皮膚炎治療の妨げになっています。したがって、アトピー性皮膚炎を根治するためには、免疫異常とその悪玉菌を同時に取り除くことが必須となります。私たちは、薬物療法によってこの課題をクリアすることを目指しています。

講演会
講演会
この分野はどこで学べる?
学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

●主な業種は→病院、薬局、製薬会社における医療従事者

●業務の特徴は→薬に関する専門知識をフルに使った業務

分野はどう活かされる?

・病院薬剤師:病棟薬剤師として、安全かつ確実に患者に薬を服用させ、治療に貢献しています。

・薬局薬剤師:地域に根ざした薬剤師として、薬や疾病に関する的確な情報を患者に与えています。

・MR:新薬に関する的確な情報を医師に提供し、新薬を多くの患者に届ける役割を果たしています。

いずれの職種も薬の薬効や副作用をサイエンスとして捉え、エビデンスに基づいた情報提供能力を必要とします。当然のことながら、それを遂行するためには、免疫学や微生物学的な観点からの理解も必要とされます。

先生の学部・学科はどんなとこ

本学は、119年の伝統を持つ薬学専門の大学です。薬学科では、医療への新たなニーズに応える薬剤師を養成するため、体系的なカリキュラムを通して薬剤師に必要な力を着実に養います。さらに、学生が自分の目指す領域で生かせる“強み”を養えるように、国家試験受験資格取得に必須となる薬学実務実習にプラスαで学ぶ、アドバンス実習を中心とした7コースの独自研修を、5年次に実施しています。各コースとも充実したプログラムのもとで、高度な専門性を取得することができます。 

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先生からひとこと

私の研究室では、最先端の設備とこれまでの研究成果をもとに“免疫バランスを薬で整え、治療に役立てる!”ことを目指すとともに、医療人としての「心」を育むことにも努めています。新たな時代のニーズに応える薬学研究を一緒に追求しましょう。

先生の研究に挑戦しよう!

高校の生物で学習する内容をベースにして、「花粉症」「アレルギー性鼻炎」または「アトピー性皮膚炎」の病態と治療法を免疫学的なメカニズムとしての観点から理解し、どこをどのように制御すれば新たな治療効果が発揮されるかを考えてみよう。

興味がわいたら~先生おすすめ本

Q&Aでよくわかるアレルギーのしくみ アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、花粉症、気管支ぜんそくの最新科学

斎藤博久(技術評論社)

アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・花粉症・気管支ぜんそくなど、これからさらに増えるであろうアレルギー疾患に対して、我々はどのように向き合っていけば良いのか。衛生環境の整った、現代的な生活が広がりを見せる中、本著者は「アレルギーはこれからの時代を生きる人たちの標準体質になる」と、統計学的なデータを交えながら予見している。

乳幼児期における皮膚バリアー機能の低下にアレルギー発症の根本原因があることなど、最新の科学的知見に基づいたアレルギー情報を交えながら、わかりやすいQ&A形式で解説している。生物学の教科書で「免疫のしくみ」を理解した後に読んでもらいたい本だ。 


アレルギーの9割は腸で治る!

藤田紘一郎(だいわ文庫)

アレルギーは今や、日本人の国民病と言っても良いほどの疾患になった。この本を読むことで、アレルギーは免疫疾患であることを理解し、また腸内細菌と免疫応答の関係を知ることができるため、免疫制御法を知るヒントとなるだろう。