経済政策

これからの時代のごみの3Rのあり方


沼田大輔 先生

福島大学 人文社会学群 経済経営学類 経済学コース/経済学研究科 経済学専攻

どんなことを研究していますか?

日々の生活に身近な環境政策の一つとして、ごみの3R(リデュース(減量)、リユース(再利用)、リサイクル(再資源化))があります。日本では、家庭に細かい分別の順守を求め、排出されるごみを主に自治体が回収しリサイクルすることで、一定の成果をあげてきました。

一方、地方では、昨今の人口減少、高齢化の進行によって税収が減少する中、住民の負担の少ないごみの収集処理を行うことが求められてきています。また、環境負荷がリサイクルよりも低いと言われているリユース・リデュースを積極的に取り入れること、散乱したペットボトルなどのプラスチックが微細化して海を漂い、魚や鳥が食べてしまうといったマイクロプラスチックの問題への対処が世界的に求められています。こうした時代の要請に応えうるごみの収集・処理の仕組みとはどのようなもので、現行の仕組みをどう変えていくと良いのでしょうか。

店頭回収のあり方をデポジット制度から探る

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例えば、これまで日本では使い終わったペットボトルやダンボールなどは資源ごみとして主に行政、特に地方自治体が収集してきました。一方、最近では、スーパーの店頭などで、買い物のついでに、ペットボトルやダンボールを持っていき、ポイントをもらえる仕組み、いわゆる店頭回収が見られるようになってきています。

このポイント制度に似た仕組みとして、「デポジット制度」があります。この制度では、商品を買う時に、製品の価格に加えて、ある額を余分に支払い、消費後、容器等をスーパーなどに設置された返却場所に返すと、余分に払ったお金を返金してもらえます。諸外国では、デポジット制度がしばしば見受けられ、新しく導入する動きも見られます。これからの店頭回収のあり方を、デポジット制度から学べることをもとに検討することで、これからの時代の要請に応えうる、ごみの3Rのあり方を考えています。

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会津美里町廃棄物減量等推進審議会で、沼田ゼミで過去3年に渡って検討してきた会津美里町のごみ減量のための方策についての報告を、ゼミ生が行っている様子です。立っているのは沼田ゼミの学生、座っているのは審議会のメンバーと役場職員。

学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?
  • ●主な業種は→公務員、団体職員、民間企業(金融機関、IT系、流通、製造)
  • ● 主な職種は→事務
分野はどう活かされる?

環境問題は、どのような職種・業種でも出てきます。そして、環境問題の解決には、人々が継続して実施可能な取組を、様々な人々と協働して探っていくことが大切です。私のゼミの3年次におけるグループでの共同研究の経験や、環境問題を解決するための政策や社会システムについての学びは、社会に出て環境問題に関わる場面に遭遇した時に、一つの視座になると思います。

先生から、ひとこと

ごみ問題をはじめとする環境問題の解決には、工学的な観点だけでなく、環境を守ることが各自の得になる社会の仕組みづくりといった、経済学的な観点も不可欠です。経済学の観点から環境を考える学問として環境経済学という学問があります。私と一緒に、ごみ問題を起点に環境経済学を身近な実践例の中で学ぶことで、社会の問題の構造と解決策・政策提言をクリアに語れる人になりましょう!

先生の学部・学科はどんなとこ

福島大学は、福島県唯一の国立の総合大学であり、経済経営学類は2022年に創立100周年を迎える歴史ある学類です。近年は、東日本大震災による複合災害からの復興を主なテーマに、地域の課題解決をグローバルな視野で、理論的・実証的・歴史的にアプローチしています。 私のゼミ(環境経済学研究室)では、主に3年次に、東日本大震災の発生以降多くなる傾向にある福島県のごみに着目し、3Rをどう進めるかについて、実務に携わっている方々と適宜協働し、取組の企画・実践・ふりかえりをグループ研究として行うことで、環境政策・環境社会システムについて理解を深められます。

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東京オリンピック2020に伴い、福島市役所オリンピック・パラリンピック推進室の呼びかけで行われている「ふくしま市民応援団おもてなし美化活動」に、沼田ゼミで参加しました。写っているのは沼田ゼミの学生と沼田(一番右)です。

先生の研究に挑戦しよう

スーパーやコンビニに行ったら、使用済みの容器、例えばトレーなどが、どう回収されているかを観察してみてください。また、皆さんが住んでいる自治体では、ごみ出し・ごみ分別がどういうルールになっているか調べてみてください。そして、スーパー同士、コンビニ同士、製品同士、自治体同士を比べてみてください。いろんな疑問が出てくるはずです。この疑問に自分でチャレンジしてみると、いろんなことが見えてくると思います。

興味がわいたら~先生おすすめ本

ルポ にっぽんのごみ

杉本裕明

最近は、中古品が海外輸出されていたり、既存の様々なリサイクル法について改訂の議論が行われていたり、リサイクルよりも環境に優しいと言われているリユースをどう進めるかが議論されたりしています。これらの現状を把握し、今後、ごみ問題とどう向き合っていくかについて示唆を与えてくれる本です。 (岩波新書)


大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実

仲村和代、藤田さつき

ファストファッションの台頭に伴う服の大量廃棄、季節性の食品に特に見られる食の大量廃棄が続いています。本書は、その現状と背景、解決のきっかけになりうる取組・考え方を丹念な取材をもとに描いています。背景の一つとして大量生産を挙げ、大量生産をもたらす動機についてもわかりやすく書かれています。 (光文社新書)


本コーナーは、中高生と、大学での学問・研究活動との間の橋渡しになれるよう、経済産業省の大学・産学連携、および内閣府/科学技術・イノベーション推進事務局の調査事業の成果を利用し、学校法人河合塾により、企画・制作・運営されています。

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