私たち哺乳類の個体発生は、受精により開始します。受精卵は卵割を開始し、2細胞期胚、4細胞期胚、8細胞期胚、桑実胚、胚盤胞期胚へと発生が進み、その後、胚は母体(子宮)に着床し、胎子へと成長します。そして胎子へと成長する過程で、細胞は私たちの体を構成する様々な細胞へと分化していきます。このような受精卵から個体形成までにみられる細胞分化のメカニズムを解明する学問が「発生学」です。
哺乳類の受精卵からは、胎子とともに胎盤も形成されます。胎盤は、母体から胎子に栄養や酸素を取り入れたり、胎子で生じた不要物や二酸化炭素を母体に排出する働きをしており、母体内での胎子成長には不可欠な臓器です。また、胎盤は哺乳類にしか存在しない臓器です。私たちは、哺乳類の胎盤形成のメカニズムと胎盤の機能を明らかにする研究を行っています。
流産や死産の防止に役立てる
将来、胎子・胎盤のどちらに分化するのかは、受精卵の時点では決まっておらず、胚盤胞期胚までに決定します。胚盤胞期胚は2つの細胞集団、内部細胞塊と栄養外胚葉から形成されています。着床後、内部細胞塊は胎子へ栄養外胚葉は胎盤へと分化します。
着床が成立するためには、栄養外胚葉の子宮組織への接着と浸潤が不可欠であり、栄養外胚葉の子宮組織への接着と浸潤ができなければ、流産します。私たちは、着床成立のために栄養外胚葉がどのような変化をしているのかを明らかにすることを目的に研究を行なっています。これらの研究を通して流産や死産の防止に役立てたいと考えています。
「統合動物科学」が 学べる大学・研究者はこちら
その領域カテゴリーはこちら↓
「8.食・農・動植物」の「29.獣医・畜産、応用動物学」
一般的な傾向は?
●主な業種は→食品、化学、医療
●主な職種は→営業、技術
●業務の特徴は→品質管理、商品開発、医薬品情報提供
分野はどう活かされる?
胚培養士(生殖医療現場での体外受精、体外培養、凍結保存に関する業務)となって働いている卒業生がいます。
東京農業大学生命科学部バイオサイエンス学科は、「植物」、「動物」、「細胞分子機能」の3分野、6つの研究室で構成されています。微生物、植物、動物を研究対象とし、それらが持つ遺伝子の働きを明らかにするとともに、健康、食料、医学、環境などの分野に貢献することを目指しています。
哺乳類の個体発生は、受精卵から始まります。受精卵は細胞分裂を繰り返し、私たちの体を構成する様々な細胞に分化します。したがって、受精卵は様々なものになれる能力を持っています。
高校生の皆さんもこの受精卵のようなもので、目の前には多くの道が開けています。自分の前にどんな道があるのかを知るためには、失敗を恐れず、いろいろなことにチャレンジしてください。そうして得た経験は貴重な財産となり、きっと自分が何か一つの道を選ぼうとした時、大いに役立つことでしょう。
哺乳類の個体発生の特徴を調べてみましょう。また、哺乳類の細胞を培養する方法を調べてみましょう。
幹細胞と再生医療
中辻憲夫(丸善出版)
動物の発生学といえば、ウニやカエルについては高校の生物で学習するが、哺乳動物の発生については詳しく学習しない人が多いようだ。しかし学習しなくても、ES細胞やiPS細胞といった多能幹細胞について聞いたことがある人は多いと思う。
どちらもどのような身体の組織や臓器にも分化できる、万能の機能を持った細胞のことを指す。この本は、哺乳動物の個体発生について解説するとともに、個体発生の視点からES細胞やiPS細胞を解説している。これら多能性幹細胞が誕生した経緯から、将来に向けた応用面についても詳しく述べおり、統合動物科学という学問領域のすべての内容を含んだ入門書にもなっている。