数学解析

ソリトン

ソリトン波に魅了 その不思議を数学で解き明かす


前田昌也先生

千葉大学 理学部 数学・情報数理学科(融合理工学府)

出会いの一冊

あなたの人生の物語

テッド・チャン(ハヤカワ文庫SF)

8つのSF短編集。表題作「あなたの人生の物語」は奇想天外な時空間の認識を持つエイリアンとのファーストコンタクトの話で、初めて読んだ時はとても衝撃的でした。この話は映画にもなっています。

各話の背景に(「ゼロで割る」は背景ではなくそのものですが)数学的なアイディアが豊富に散りばめられています。短編集ですのでSFを読んだことない方でも読みやすいと思います。

こんな研究で世界を変えよう!

ソリトン波に魅了 その不思議を数学で解き明かす

川や海、光ファイバーにも現れるソリトン

川や海の水面を眺めていると様々な波を観察することができます。

私の研究しているソリトンという波動は1834年にエディンバラの運河でスコット・ラッセルによって初めて報告された波で、ラッセルは1マイル以上その波が崩れずに一定速度で進むのを観察したそうです。

その後の研究によりソリトンは水面のみならず光ファイバー中のパルスなど様々な場所に現れる波であることが明らかにされ、多くの現象を理解するために重要なものであると考えられるようになりました。

論文の著者に会いにイタリアへ!

私ははじめソリトンの安定性(ソリトンが崩れないこと)を研究していましたが、その後ソリトンのより詳しい性質である漸近安定性(ソリトンの近くの波がだんだんとソリトンの形状になっていくこと)を研究したいと思うようになりました。

ただ先行研究の論文が全く理解できなかったため、著者(クッカーニャさん)に直接聞こうと思いイタリアに行きました。そのおかげで漸近安定性のことが少しわかるようになり、またクッカーニャさんともここまで10年ほど共同研究を続けられています。

研究は、じっくり考えゆっくり進歩

ソリトンの研究は、一般の他の数学の研究と同様にゆっくりとしか進みません。ある方程式に登場するソリトンの漸近安定性を数ヶ月で示せれば良い方です。

しかし他の研究者のアイディアや自分自身でじっくり考えることにより、少しずつわからないことがわかるようになり、10年もすると結構進んだなと思えるようになりました。研究の良いところはそういうところだと思っています。

研究について考えている様子
研究について考えている様子
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

もともと物理学に興味をもっていましたが、数学の厳密な論理に惹かれて大学では数学を選びました。研究室を決める段階になって数理物理を輪読するゼミを選び、その後大学院から偏微分方程式の研究を始めました。

より専門的なことを研究する段階になって指導教官の先生からソリトンに関する論文を紹介してもらい、ソリトンの美しさや奥深さにすっかり魅了されてしまい今に至っています。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「非線形分散型方程式に対するソリトン解の漸近安定性の研究」

詳しくはこちら

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研究室の書棚の本
研究室の書棚の本
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等

(2) ソフトウエア、情報システム開発

(3) 学習支援(塾、フィットネスクラブ、各種教室、通信講座等)

◆主な職種

(1) 中学校・高校教員など

(2) システムエンジニア

(3) その他教育機関教員、インストラクター

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

先生の研究に挑戦しよう!

f(x)を関数とし, f'(x)をfの微分とします。
(1) f'=f となるのはどのような関数でしょうか?
(2) f'=2f となるのはどのような関数でしょうか?((1)で得た関数をちょっといじってみましょう)。
(3) fが定数関数であればf'=0ですがf'=0ならば定数関数でしょうか?
(4) f'=fとなる関数全体はどんなものでしょうか?(1)で得た関数の他にはないのでしょうか?ないならどうやってそれを証明しますか?

中高生におすすめ

  

 

 


 

   

  

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

数学

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

イタリアのトリエステ。小さな街ですが海も近く、歩いてどこへでも行けるので住みやすいです。


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