計算機シミュレーションで物質の性質を明らかにする
物質の材料は「原子核」と「電子」だけ
私たちの身のまわりにある物質は、実に多様な性質を示します。これを物性といいます。あるものは電気を流しやすく(金属)、またあるものは磁石になります。色や硬さなど様々な側面からみても異なる性質を示す物質たちは、星の数ほど存在するようにも思えます。
しかし、そうした身のまわりの物質は、実は「原子核(陽子と中性子)」と「電子」だけからできています。たったそれだけの材料から、驚くほどの多様性が生じるのが物質科学の面白いところであり、私たちの生活は多様な物性に支えられています。
粒子の相互作用でどんな物性が現れるのか
多くの粒子が互いに相互作用(引きつけあったり、反発したりすること)をした結果、どんな物性が実現するかは、極めて難しい問題です。そのため、私たちが「こんな性質を示す物質が欲しい」「この物質はどんな性質を示すだろう」ということを知りたいときは、実験をして調べたり、あるいは計算機シミュレーションによってその情報を得たりします。
電子の広がりに注目
私の専門は、計算機シミュレーションによって、物質の性質を明らかにすることです。しかし、やみくもに調べるには(幸か不幸か)物質の種類は多すぎます。そこで私は、「物質のなかで電子がどんなふうに広がっているか」に注目して計算対象を選んでいます。
例えば、他の電子がたくさんいる方向に分布する電子は、電子間の反発のために高いエネルギーを感じるはずです。元素ごとに、そのまわりに分布する電子の数や広がりは異なりますから、原子種を変えて物質設計をすることで、特定の電子状態のエネルギーを選択的に制御することができます。
また、特定の方向(x軸としましょう)によく広がっている電子は、y軸やz軸の方向には流れにくい一方で、x軸方向へは集中的にたくさんの電子が流れることになります。電子の広がる方向を次元性という言葉で表すこともあり、この例は一次元的な電子状態といえます。こうした電子の広がりを制御する方法を理論的に提案し、そこから高機能物性が生じる可能性を調べています。
物理自体に興味を持った理由は、中高生のときから、何かを暗記するというのはあまり好きではなかったことです。そのため、物理の「ごく限られた基礎法則から、(あれこれ暗記しなくても)いろいろな性質を導ける」という側面が好みに合っていました。
物理にもいろいろな分野がありますが、物性物理を選んだ動機は、限られた構成要素から生まれる多様性を奥深く感じたことです。特に、大学の研究室紹介のときに、計算機シミュレーションの動画(原子が運動するムービー)を見て面白そうと思ったのが、計算物理に進んだきっかけです。
◆主な業種
(1) ソフトウエア、情報システム開発
(2) 電気機械・機器(重電系は除く)
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) システムエンジニア
Q1.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 中高生のときはタイピングゲームにはまっていました。実用目的ではありませんでしたが、結果的に今も研究に役立っています。 |
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Q2.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 個別指導のアルバイトで、人に何かを教える訓練が積めました。 |
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Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 楽器演奏(打楽器)が趣味です。 |