知能ロボティクス

生物サイボーグ

昆虫やクラゲがロボットの一部となる! 生物サイボーグの開発


大脇大先生

東北大学 工学部 機械知能・航空工学科(工学研究科 ロボティクス専攻)

出会いの一冊

知能はどこから生まれるのか? ムカデロボットと探す「隠れた脳」

大須賀公一(近代科学社)

この本では、哲学的な視点から「知能とは何か?」という根本的な問いに答えを求め、ムカデロボットの実験を通じて知能の本質を解明しようとする道のりを説明しています。

特に注目してほしいのは、著者たちが開発したムカデロボットです。このロボットは、ロボット工作キットとして市販されており、読者自身が直接、本の理論を実践して体験することができます。サイボーグ研究のみならず、知能ロボット、人工知能の研究に興味がある皆さんにおすすめの一冊です!

こんな研究で世界を変えよう!

昆虫やクラゲがロボットの一部となる! 生物サイボーグの開発

動物たちの巧みな動きに着目

動物たちがどのようにしてさまざまな環境で巧みに動き回るのか、不思議に思ったことはありませんか? 彼らは複雑な動きを見せながら、食べ物を探したり、生き残りをかけた戦いをします。そんな動物たちの動きを研究することで、私たちは新しいロボット技術を開発しています。

電気刺激で筋肉をコントロール

例えば、昆虫やクラゲはシンプルな体、神経を持ちながらも、とても効率的に移動することができます。私たちは昆虫やクラゲの動きを「ハッキング」してサイボーグ化することで、その秘密を探る研究をしています。

電気刺激装置を使って、生き物の筋肉をコントロールすることで、その動きのメカニズムを理解しようという研究です。

生物学とロボット工学が融合

この研究は、生物学とロボット工学が融合したもので、生物サイボーグという新しいタイプのロボットを生み出します。生物サイボーグは、生物そのものがロボットの一部として機能し、製造コストも抑えられます。

想像してみてください。昆虫やクラゲのサイボーグが環境を守るために活動する様子を。この技術は、地球環境を保護し、生態系を守るためにも大きな役割を果たすかもしれません。

電気刺激装置を使って、生き物の筋肉をコントロール(ハッキング)することで、その動きのメカニズムを理解する研究です。
電気刺激装置を使って、生き物の筋肉をコントロール(ハッキング)することで、その動きのメカニズムを理解する研究です。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

子供のころから、プラモデルづくり、ミニ四駆の改造など、ものづくりが大好きでした。大学院の研究室で、動物のような知能的動きをするロボット開発に出会い、夢中になりました。

しかし、研究を進めれば進めるほど、ロボットの能力の限界を感じ、動物の驚くべき適応能力に魅せられていきました。今、私の研究室では昆虫やクラゲを飼いながら、彼らの能力を明らかにするために、サイボーグ化する実験に没頭しています。

左:ミズクラゲ(山形県鶴岡市加茂水族館より提供)の専用飼育水槽。右:リモコンから電気信号を送信し、クラゲの動きをコントロールします。
左:ミズクラゲ(山形県鶴岡市加茂水族館より提供)の専用飼育水槽。右:リモコンから電気信号を送信し、クラゲの動きをコントロールします。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「脚式移動動物の制御基盤の解明と実世界応用に関する研究」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
左:昆虫の歩行を分析するモーションキャプチャー装置。右:ナナフシにマーカーを貼り、脚の動きを分析します。
左:昆虫の歩行を分析するモーションキャプチャー装置。右:ナナフシにマーカーを貼り、脚の動きを分析します。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 自動車・機器

(2) ソフトウエア、情報システム開発

(3) コンサルタント・学術系研究所

◆主な職種

(1) 設計・開発

(2) システムエンジニア

(3) コンサルタント(ビジネス系等)

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

東北大学の機械系(学部:機械知能・航空工学科、大学院:機械機能創成専攻、ファインメカニクス専攻、ロボティクス専攻、航空宇宙工学専攻)では、エネルギー、環境、材料、ナノテクノロジー、宇宙、航空、ロボット、人工知能、医工学など、機械に関係する多岐にわたる研究分野の研究ができます。

さらに、サイボーグ研究が代表するように、多彩な分野を融合した学際的研究が盛んに行わていることも大きな特徴の一つです。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

サイボーグ昆虫、フェロモンを追う

神崎亮平(岩波科学ライブラリー)

昆虫の驚異的な能力を理解し、工学的に応用しようとする昆虫サイボーグ研究について、わかりやすく解説されている書籍です。主役となるカイコガのかわいさ、そして切なさにも注目!?


サイボーグ化する動物たち ペットのクローンから昆虫のドローンまで

エミリー・アンテス、訳:西田美緒子(白揚社)

動物サイボーグ技術の最前線と、それらの研究が提起する倫理的側面が詳細に説明されている専門書です。


知能の原理  身体性に基づく構成論的アプローチ

Rolf Pfeifer、Josh Bongard、訳:石黒章夫、細田耕(共立出版)

知能を生み出すには身体が不可欠であるという「身体性」の概念を解説する書籍です。「人工知能はコンピュータだけでできる」と信じている人にはパラダイムシフトとなるかもしれません。専門書ではなく、ポピュラーサイエンスの書籍です。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

もちろん生物学!?

Q2.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

家族と過ごす時間、プレミアリーグ(イングランドのサッカーリーグ)

Q3.好きな言葉は?

Stay hungry, Stay foolish


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