光ファイバの「人工神経」を開発!構造物に埋め込み、損傷を検出
社会インフラの診断技術に課題
建物や橋、トンネル、ダムやパイプラインなど、さまざまな社会インフラの経年劣化や自然災害による損傷を正確に診断する技術の需要が高まっています。しかし従来の電気センサによる診断では、煩雑な配線が必要となる上、限られた箇所の情報しか得られないという問題がありました。
構造物自体が「ここが痛い」「ここが熱い」
このような背景の下、光ファイバをさまざまな構造物に「神経」として埋め込もう、という新たな取り組みが始まっています。この人工神経が機能すれば、人が「ここが痛い」「ここが熱い」と感じるのと同じく、構造物自体が損傷の部位やレベルを検出、伝えることができるようになり、維持管理の効率が飛躍的に向上します。
光ファイバといえば通信応用しかないと考えていた私は、光ファイバを計測に応用するという発想に興味を持ち、人工神経網を実現するための光ファイバセンシング技術の研究に携わることにしました。
オリジナルの計測技術の実用化に向けて
数ある光ファイバセンサの中でも、光ファイバに沿った任意の位置で物理量を計測できるセンサを「分布型光ファイバセンサ」と呼びます。私は特に、ブリルアン散乱という現象を用いた分布型光ファイバセンサの開発に注力しています。このセンサでは、光を入射したときに戻ってくる散乱光の周波数が、光ファイバに印加されている伸びや温度変化に依存する性質を用います。
これまでに、「ブリルアン光相関領域反射計(BOCDR)」というオリジナル技術を開発し、測定ファイバの片端への光入射での動作と、ミリメートルオーダの空間分解能、ランダムアクセス性、および、リアルタイム動作の同時実現を達成しました。現在、BOCDRの実用化に向けて、国内外の研究機関や企業とともに共同研究を進めています。
長年、中高生向けの集団塾で英語の講師をしていました。学生たちの成長に大きな喜びを感じる自分自身に気付き、教育が天職ではないかと思うほどでした。また将来は、昔から好きであった英語を活かせる職業に就きたいと思っていました。
一方、大学・大学院では日夜研究活動に携わり、まだ世の中に存在していないシステムを創り出したり、誰も知らない物理現象を発見したり、世界中の研究者と交流・切磋琢磨したりすることの醍醐味を体感しました。このような経験から、私が楽しいと感じる「教育」「英語」「研究」という要素をあわせもつ職業として、研究者、特に大学の研究者が向いていると考えました。
大学の研究者になるためのハードルは高く、一筋縄ではいかないことも多々ありました。しかし、最近になって、個人の研究室を立ち上げ、これまでより一層楽しさを感じられる状況となり、私の判断は間違っていなかったと思えるようになりました。
◆主な業種
(1) 電気機械・機器(重電系は除く)
(2) コンピュータ、情報通信機器
(3) 医療機器
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 設計・開発
(3) システムエンジニア
横浜国立大学理工学部には、正式な研究室配属前の学部1~3年生が、自らの希望により研究室に所属して、最先端の研究を体験できる「ROUTE」という仕組みがあります。
現在、私の研究室でも学部1年生および2年生のROUTE生を受け入れており、日々の授業の合間に、光ファイバセンシングの研究をしています。特に、2年生の学生は、春の学会で口頭発表を予定しています。早いうちからこのような経験ができるのは、当学部の大きな強みです。
Q1.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 英語専門塾の講師 |
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Q2.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 育児 |