睡眠の科学 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか
櫻井武(講談社ブルーバックス)
体内時計が制御する生理現象の中でも睡眠と覚醒のサイクルはとても身近でわかりやすいものです。ほとんどの人が体内時計の乱れや生活リズムの乱れを「睡眠リズム」の狂いによって判断していると言っても過言ではありません。
それではその睡眠はどのように制御されるのでしょうか。この本では、睡眠に関する研究の歴史を紹介しながら、これまでにわかっているメカニズムをわかりやすい言葉で伝えてくれます。私たちが日常的に感じる疑問、例えば「なぜ私たちは眠らなければならないのか」「コーヒーを飲むと覚醒するのはなぜか」などといった問いにも答えており、研究と日常生活は意外と近いということもわかります。
2つの酵素が体内の時を刻む。その1つを世界に先駆け発見!
バクテリアもヒトも体内時計がある
私たちが海外旅行に行ったときに経験する時差ぼけはなぜ起こるのでしょう。それは私たちの体内に時を刻む時計が存在しており、現地の時間と体内の時間とのズレが生じるからです。
体内時計はバクテリアからヒトに至るまで共通してみられる生体システムであり、健康な生活には欠かせません。私はこれまで、体内時計がどのようにして時を刻むのか、という問いに答えるべく研究をしてきました。
1日のリズムはタンパク質の増減で
哺乳類の体内時計(特に1日周期の概日時計)では、CRYPTOCHROME(CRY)というタンパク質が1日周期で増えたり減ったりを繰り返すことでリズムが生まれます。CRYの制御メカニズムを調べる過程で、CRYの増減にはタンパク質の合成と分解のバランスが重要であることがわかりました。
タンパク質にユビキチンという小さなタンパク質が何個もつくと、それが「分解の目印」になって細胞の中の分解装置によって壊されます。ユビキチンをタンパク質に付加するユビキチン化酵素と分解装置の発見は、2004年にノーベル化学賞も受賞したほど大きな発見です。
細胞の中では分解と安定化の駆け引き
私は、世界中の研究者がユビキチンの主要な役割が分解シグナルと認識する中、分解を邪魔するユビキチン化もあることを発見したのです。CRYの分解シグナルを付加する酵素と分解を邪魔する酵素は構造がとてもよく似ていました。似ているから機能が同じではなく、似ているからこそ機能を邪魔するという点も、私が発見した現象の興味深い点です。
2つの酵素による分解と安定化は概日時計がうまく時を刻むのに必要でした。細胞の中で絶妙に分解と安定化の駆け引きが行われていると思うと、生物がどうしてこのような精密なシステムを作り出せたのか疑問はつきません。
医学的なことよりも、生体システムのメカニズムを解き明かしたいという知的探究心の方が強く理学部に進学しました。
その中で、たったひとつの塩基配列の違いが行動リズムに大きな変化をもたらしうるということを知り、体内時計に興味を持ちました。なお、遺伝子変異による行動リズムの変化の発見は生物学の中でも大きな発見であり、のちの時計遺伝子の発見につながりました(2017年ノーベル生理医学賞)。
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◆主な業種
(1) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
(2) 薬剤・医薬品
◆主な職種
(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(2) 基礎・応用研究、先行開発
◆学んだことはどう生きる?
博士研究員として研究を続けている人も多くいます。
私は国際統合睡眠医科学研究機構に所属していますが、機構全体が睡眠医科学の研究をしているという研究所は日本では他にありません。生物系であればどの学科からでも、基本的に当研究機構で研究可能だと思われます。また、使用言語は英語で留学生も多く所属しています。
生活リズムを崩したマウスの脳機能や代謝への影響(例えば体重など)を観察し、生活リズムの乱れが及ぼす健康への影響を明らかにする。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 医学部。大学で学べる量が圧倒的に多いと思います。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? ドイツ。アメリカには住んだことがあるのでヨーロッパに行きたいのとビールが美味しいからです。 |
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Q3.感動した/印象に残っている映画は? 『SLAM DUNK』 |
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Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 個別指導の学生の親御さんが誰もが知っている有名人でした |