分析化学

新分子合成

細胞を測定・分析する化学分子を合成


佐藤雄介先生

東北大学 理学部 化学科(理学研究科)

出会いの一冊

美しい電子顕微鏡写真と構造図で見るウイルス図鑑101

マリリン・J・ルーシンク(創元社)

私が研究しているEV(生物の細胞から分泌される小胞のこと)のように、細胞に入り込む小胞としてウイルスがあります。この本には顕微鏡で見たウイルスの形を中心に、これまでのヒトの歴史と密接に関わってきたウイルスが多く載っています。

外から細胞に入ってくるウイルス、細胞が放出するEVという違いはありますが、細胞がどのように小胞と対峙してきたのか、細胞がどのように変化するのか、という点は単純に興味深いです。

こんな研究で世界を変えよう!

細胞を測定・分析する化学分子を合成

DNAやRNAは封筒に入って届く

AさんがBさんに、何か情報を伝えようとしています。二人の距離が近い場合には話しかけることで情報が伝わりますが、遠く離れた場合にはどのように情報を伝えれば良いのでしょうか?

その答えの一つは手紙です。様々な言葉や文章を書いた手紙を書き、封筒に包み届けることができます。

ここ15年程の間に、多くの細胞がこのような情報伝達を生体の中で行っていることがわかってきました。細胞が出す手紙にはDNAやRNAなどの遺伝情報物質が含まれていて、タンパク質が埋められた脂質膜の袋(=封筒)にくるまれています。

細胞外小胞の多彩な機能を知るために

これは細胞外小胞(EV)と呼ばれており、様々な病気に関係していることが明らかになってきています。また、EVの中には傷の修復を促す役割をもつものもあり、医療に応用しようという研究も進められています。

私たちはこのように多彩な機能をもつEVの応用を見据えて、EVを測定し分析するための化学分子を作ることを目指しています。

医療に役立つことを夢見て

中でも、EVの中でも高い応用性を秘めているとされている、エクソソームという直径100nm程度の小胞に結合して、蛍光を発する機能を持つ分子(プローブ)を設計し、EV解析技術の開発を行っています。

放出する細胞の種類や状態によって、エクソソームの性質や機能は大きく異なりますが、私たちは全てのエクソソームは共通してとても小さな脂質膜をもつことに着目して、この脂質膜を標的としたプローブの開発に挑戦しています。

自分たちが考えて設計した化学分子が近い新たな細胞の機能を発見したり、医療に役立つことを夢見て、日々わくわくしながら研究しています。

マイクロウェーブ合成機を使って、プローブを合成しています。
マイクロウェーブ合成機を使って、プローブを合成しています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

もともと自分の体の中で何が起こっているかに興味がありました。縁あって入学したのは理学部化学科で、その中でDNAを研究している研究室に入って、化学の立場から生物・バイオテクノロジーに役立つ技術を作るという分野にはまっていきました。

現在研究しているEVやエクソソームは生物分野で盛んに研究されていますが、生物以外のバックグラウンド(自分の場合は、化学)をもつ自分ならではの角度で研究を進められる点は大変楽しいです。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「新しいRNA結合性試薬を用いたバイオ分析化学研究」

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中高生におすすめ

はたらく細胞

清水茜(シリウスKC)

自分の体にはどれくらいの種類や量の細胞がいて、どういう働きをしているのか?漫画で楽しみながら理解することができます。

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