レーザー光の新たな機能性を見出し、光学顕微鏡や微細加工へ応用
断面は丸だけじゃない
レーザーポインターなど、日常でレーザー光に触れる機会はあると思います。そのレーザー光の断面の光の分布は、おおよそ丸や楕円形をしているはずです。ところが、ドーナツのように中心に穴の空いた形状や、格子状にスポットが配列したような形、さらには同心円状に無数のリングが形成されるものなど、多様な形、つまり空間分布を持つ光波が存在します。
また、光は空間を伝搬する電磁波ですが、その波としての振動する性質(位相や偏光と呼ばれます)にも空間的な分布を持たせることが可能です。
ドーナツ状レーザーの優れた特性
このような光の性質の空間的な分布をデザインすると、レーザー光そのものが持つ性能を大きく向上できることが最近わかってきました。
例えば、レンズを用いてレーザー光を集光すると小さな点になりますが、通常は波としての性質のためにその点の大きさは概ね光の波長より小さくできません。一方で、ドーナツの形を持ち、そのドーナツの中心から外側に振動するレーザー光を使うと、普通のレーザー光よりも更に小さな点を作る能力があることがわかりました。これは、これまでの常識では考えられなかった特性です。
高性能な計測技術や材料加工へ
小さな点を作ることができれば、光学顕微鏡や、レーザー微細加工などの性能向上に繋がります。私の研究では、このような光の形や分布という性質に着目して、光波としてのレーザー光の新たな機能性を見出し、高性能な計測技術や材料加工などへ応用することを目指しています。
大学の学部4年生の時に配属された研究室での研究テーマが、光を使った新しい分光装置の開発でした。この時に、初めてレーザーを使った実験を行いました。大型のレーザー装置を制御して、測定結果を得るための自動化システムを自分で構築しました。
小さい頃から工作したり、プログラミングしたりするのが好きだったこともあり没頭しました。測定試料のスペクトルが綺麗に出てきた時は、とても感動したことを覚えています。この経験が現在までにつながっているような気がします。