生物の形とバイオメカニクス
Stephen A. Wainwright、訳:本川達雄(東海大学出版会)
生物の驚異的な形態はどのように進化してきたのか? この疑問を力学的な視点で紐解くのが、バイオメカニクスを探求したこの本です。エンジニアの視点で捉えた生物の構造や運動の原理を、わかりやすく解説しています。生き物の形が進化する過程で、物理的な力がいかに重要な役割を果たしてきたかが考察されています。
物理学が好きな人も、生物学が好きな人も、この本から新たな発見と興奮を得られるでしょう。また、訳者である本川先生の『ゾウの時間 ネズミの時間』、『生き物は円柱形』も、生き物の理解を深めるのに最適です。これらの書籍は、生物学への新しい扉を開いてくれること間違いなしです。
機械工学で、心臓の「しなやかさ」の秘密を紐解く
心臓には、絶えず物理的な力がかかる
心臓は私たちの体内で絶え間なく拍動し、血液を体中に送り続ける驚異的な臓器です。この心臓には、血圧や自身の拍動による物理的な力が常に作用しています。心臓は、このような物理的な力に対して、その構造や機能を変化させて「しなやかに」適応する凄い能力を持っています。
もし、心臓が力に対して適応できなくなると、心不全という状態に陥り、血液を十分に送り出せなくなってしまいます。心臓の動き続ける仕組みや「しなやかさ」の秘密を紐解き、心不全の発症するメカニズムを明らかにしたいと考えています。
力を研究する学問だからこそ
機械工学の分野で心臓のような生命を研究するのは、一見不思議に思えるかもしれません。しかし、無重力空間での筋肉の衰えや心臓の力に対する適応を考えると、生命と力は密接に結びついています。
機械工学は力を専門的に研究する学問です。だからこそ、その技術と知識を活用し、心臓の働きや心不全の原因を明らかにし、医工融合の視点から生命現象の理解と新たな治療法の開発に貢献しようとしています。
鳥類の心臓、恐竜の心臓にも興味
最近では、哺乳類以外の脊椎動物、特に鳥類の心臓に興味を持っています。鳥類の心臓は、哺乳類と同じ2心房2心室ですが、それを構成する細胞の形や構造は全くの別物です。鳥類の心臓を研究することで、哺乳類の心臓の理解も深まると考えています。
鳥類の祖先は恐竜ですので、鳥類の心臓は恐竜の心臓を知る手掛かりにもなると期待しています。現存する脊椎動物の心臓から進化の痕跡を探り、進化の過程で心臓がどのように変化してきたのかを明らかにすることで、生命と力の関係の本質に迫り、医療に貢献したいと考えています。
高校時代に力学に魅せられた私は、大学の進路に悩んでいた時に機械工学領域のバイオメカニクスに出会いました。生命を力学的視点から捉えるという発想に引き込まれました。さらに、大学院を修了後に医学部の教員になる機会に恵まれ、生命の複雑さと美しさにより深く触れることができました。
特に、心臓を駆動する心筋細胞の動きの中に見える力強さと繊細な美しさに心打たれ、その感動が私の研究への熱意を今も燃え上がらせています。機械工学と医学、二つの視点を持つことで、私の研究はより豊かなものになったと感じています。
◆主な業種
(1) 医療機器
(2) 自動車・機器
(3) その他の機械・機器
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 設計・開発
(3) システムエンジニア
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? オーストラリア。カモノハシなどの進化的に重要かつユニークな哺乳類の宝庫であるため。 |
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Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 『ファイナルファンタジーXI』 |
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Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 子供の成長を感じること。 |
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Q4.好きな言葉は? 現在重要であると言われている仕事をするのではなく、自分のやっている仕事を重要にしなさい。 |