化学と免疫学をつないで挑む、がん治療の材料開発
異物を追い出す免疫系によるがん治療
私たちの身体には、体内に侵入した異物(細菌、ウイルスなど)を排除するメカニズムである免疫系が備わっています。このシステムを利用して、異物に対する免疫を事前に活性化しておくのがワクチンです。
免疫系は、体内で異常をきたした細胞に対しても応答することができます。これを利用して、がんを治療するための研究が行われています。
しかし従来の技術では、がんに対する抗体を作り出すことはできても、がん細胞を直接攻撃する免疫細胞(キラー細胞)を活性化することは困難でした。
がんを攻撃する免疫細胞が活性化
私たちは、化学の立場からキラー細胞を活性化するための材料開発に挑戦しています。
具体的には、がん抗原(免疫系にとっての目印)を包んだ微粒子に、細胞の中ではたらく高分子をコートして免疫細胞に食べさせると、細胞の中で抗原が運ばれる経路が変わり、キラー細胞が活性化されることを発見しました。この微粒子を、がん細胞を移植して腫瘍を形成したマウスに注射すると、腫瘍がみるみる小さくなることも見つけています。
自己免疫疾患の治療にも
化学と免疫学の間には何のつながりもないように思えるかもしれませんが、免疫系にとっては化学的に作られた材料も異物であり、材料に対する免疫応答を理解することで、次にどのような材料を開発すればよいかが見えてきます。
私たちの研究成果は、がん治療用の材料開発に加えて、免疫系が過剰に反応することで引き起こされる自己免疫疾患の治療技術にもつながると考えています。
大学に入った当初は環境問題に興味があったのですが、研究室に入る直前に突然、市販薬のアレルギーを発症してしまいました。その原因を探るために市販薬に含まれている薬効成分を一種類ずつ服用して応答を見る、いわば実験のようなことをお医者さんと行っているうちに、くすりという人工物が自分の体の中で起こしていること、特に免疫に興味を持つようになり、それまで学んでいた化学と、免疫をつなぐ研究をしたいと思うようになりました。
◆主な業種
(1) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
(2) 医療機器
(3) 薬剤・医薬品
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 設計・開発
(3) 品質管理・評価
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 免疫学。化学を修めた今ならば、全く異なる視点で学べると思います。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? 上原ひろみ『Haze』 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 軽音楽部 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? バンド活動。気晴らしになるだけでなく、音楽と研究には共通する点があると思っています。 |