生命現象を作り出す! 培養細胞から様々な多細胞構造をデザイン
設計図がないのにカラダができる不思議
自動車やスマホといった機械を作るときは、設計図に従って機械部品・パーツを組み立てて作ります。一方で、私たちの身体は、誰かが細胞を配置して組み立ててくれたわけではありません。
動物は、受精卵という1つの細胞から発生し、分裂した細胞が互いのふるまいを制御しあって、複雑な構造をした臓器を作り上げていきます。これは生き物の特徴として当たり前だと思われるかもしれませんが、現在の技術ではパーツが勝手に組み上がり、壊れても自分で修復して何十年間も動作する機械を作ることはできません。私たちは細胞がもつ当たり前の能力をまだまだ理解できていません。
シャーレ上で細胞が複雑な構造を作る過程を再現
細胞は、近くの細胞に接触したり、タンパク質を分泌したりすることで、細胞間でコミュニケーションを取って、互いのふるまいを制御しています。しかし、体内の細胞間では様々な反応が同時に起こっていて、細胞のコミュニケーションが複雑すぎてよくわかりません。
そこで私たちは、シャーレ上の培養細胞に新たな細胞間のコミュニケーションをデザインして、細胞が複雑な多細胞構造やパターンを作り出す過程を再現し、その仕組みを調べています。例えば、細胞どうしのくっつきやすさやタンパク質の分泌を細胞間で制御し合うことで、細胞を様々な構造へ自ら配列させる技術を開発しています。
将来は、損傷した組織の再生も
このように、生命現象を作り出すことで理解しようとするアプローチは合成生物学と呼ばれ、近年注目されている研究分野の1つです。将来的に、細胞間コミュニケーションを自在に操る手法を開発して、損傷した組織を再生することや単細胞生物から多細胞生物への進化の原理を理解することを目指しています。
「細胞生物学」が 学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)
その領域カテゴリーはこちら↓
「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」