細胞生物学

多細胞構造

生命現象を作り出す! 培養細胞から様々な多細胞構造をデザイン


戸田聡先生

大阪大学 蛋白質研究所
2023年度までは金沢大学ナノ生命科学研究所

出会いの一冊

Minecraft(マインクラフト)

(マイクロソフト)

『マインクラフト』は様々な世の中の物体をブロックにデフォルメした世界を舞台にしたゲームで、遊び方もプレイヤー次第です。

これまでの生物学は「マイン」が中心で、マウスやハエなどのモデル生物を構成する分子や遺伝子を明らかにしてきました。これからは逆の発想で、これまでにわかった細胞や分子を使ってどこまで「クラフト」できるのか、つまり、組織や器官を人工的に作れるか、作れないのなら何がわかっていないのか、どんな組織を作れば治療応用できるか、という発想も重要だと思います。

こんな研究で世界を変えよう!

生命現象を作り出す! 培養細胞から様々な多細胞構造をデザイン

設計図がないのにカラダができる不思議

自動車やスマホといった機械を作るときは、設計図に従って機械部品・パーツを組み立てて作ります。一方で、私たちの身体は、誰かが細胞を配置して組み立ててくれたわけではありません。

動物は、受精卵という1つの細胞から発生し、分裂した細胞が互いのふるまいを制御しあって、複雑な構造をした臓器を作り上げていきます。これは生き物の特徴として当たり前だと思われるかもしれませんが、現在の技術ではパーツが勝手に組み上がり、壊れても自分で修復して何十年間も動作する機械を作ることはできません。私たちは細胞がもつ当たり前の能力をまだまだ理解できていません。

シャーレ上で細胞が複雑な構造を作る過程を再現

細胞は、近くの細胞に接触したり、タンパク質を分泌したりすることで、細胞間でコミュニケーションを取って、互いのふるまいを制御しています。しかし、体内の細胞間では様々な反応が同時に起こっていて、細胞のコミュニケーションが複雑すぎてよくわかりません。

そこで私たちは、シャーレ上の培養細胞に新たな細胞間のコミュニケーションをデザインして、細胞が複雑な多細胞構造やパターンを作り出す過程を再現し、その仕組みを調べています。例えば、細胞どうしのくっつきやすさやタンパク質の分泌を細胞間で制御し合うことで、細胞を様々な構造へ自ら配列させる技術を開発しています。

将来は、損傷した組織の再生も

このように、生命現象を作り出すことで理解しようとするアプローチは合成生物学と呼ばれ、近年注目されている研究分野の1つです。将来的に、細胞間コミュニケーションを自在に操る手法を開発して、損傷した組織を再生することや単細胞生物から多細胞生物への進化の原理を理解することを目指しています。

細胞(左上画像で見える粒粒の1つ1つ)が別の細胞の色やくっつきやすさを変化させるようにプログラムすることで、様々なパターンを自ら作り出します。
細胞(左上画像で見える粒粒の1つ1つ)が別の細胞の色やくっつきやすさを変化させるようにプログラムすることで、様々なパターンを自ら作り出します。
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中高生におすすめ

ドラえもん

藤子・F・不二雄(てんとう虫コミックス)

将来何を研究してもいいと思いますが、何か面白いものを「創造」するためには、「想像」する力も必要に思います。ぜひ様々な空想・妄想を膨らませて、面白いものを創造してほしいです。

SFを「サイエンス・フィクション」ではなく、「すこし・不思議」とした藤子・F・不二雄のSF短編もお勧めです。


好きになる免疫学

萩原清文、監修:山本一彦(講談社)

風邪やコロナなどの感染症やアレルギーなどは誰にでも関係する話ですが、体の免疫反応について学ぶ機会がなく社会人になる方は意外に多いのではないでしょうか。この本が自分の身体で何が起こっているか興味をもつきっかけになればと思います。私も最初この本で免疫の仕組みを勉強しました。

一問一答

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