ナノ、省電力、高性能! 世界最小の電子回路のための分子素子に挑戦
柔らかく軽い、有機物を使った電子材料
最近、有機ELディスプレイなどに代表されるように有機物を使った電子材料に注目が集まっています。有機材料は柔らかい、軽いといった特性から、窓や柱、体の中にまで自由自在にディスプレイやセンサーといった電子デバイスを設置できます。
1つの分子で電子回路ができたら?
こういった有機電子材料ではたくさんの量(10^10個以上)の有機分子を用いてデバイスを作製しています。有機分子は小さいものでナノサイズ(10^–9 m)の大きさです。もし一つの分子で電子回路を構築することができれば、究極的に小さく省電力で高い性能の電子デバイスが実現できるかもしれません。私たちは世界で最小の電子回路構築のための優れた性能を持つ分子素子の開発を目指しています。
世界にない分子を自ら創り出す
私たちが研究する上で大切にしていることは、世界にない新しい分子を設計して自ら創り出すことです。合成には苦労がつきものですし、必ずしもねらいの性能が出るとは限りませんが、その分子の持つ予想外の性質や特徴を生かした機能を発見した時は喜びもひとしおです。
研究は筆記試験とは異なり、自分で(もしくは指導教員と一緒に)テーマを決めるため、自分の研究内容に正解があるかどうかもわかりません。しかし世界で初めての発見をすることは、他では味わえないとても楽しい経験ですので、大学に入学したら是非研究室での活動を楽しみにしていてください。
私が学生時代に所属した研究室は有機化学と無機化学を融合した有機金属化学を専門とする研究室で、幅広い研究テーマがありました。天邪鬼だったので、テーマはその年一番人気のなかったテーマ(これまで先輩たちが苦労したもの)を自分から選択しました。研究当初はやはり大変でしたが、一旦上手くいくきっかけをつかんでしまえば誰もやっていない研究領域が広がっているという点で良かったと思います。
◆主な業種
(1) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
(2) その他の化学系
(3) 半導体・電子部品・デバイス
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 設計・開発
(3) 品質管理・評価
◆学んだことはどう生きる?
私が所属する研究室では学生が20ー30人と多く、研究テーマも有機化学、無機化学を中心に幅広く展開しています。卒業生の多くは化学系企業で研究開発職に従事しています。企業では必ずしも大学で学んだ内容を仕事にするわけではなく、また研究テーマも2、3年おきに変わるところもあるそうです。
卒業生からは、大学の授業を幅広くもっときちんと勉強しておけば良かったという声をよく聞きます。最先端の研究は面白いですが、基礎も重要ということでしょうか。
東京工業大学物質理工学院は広く化学を学ぶ組織で、2年次に応用化学系と材料系に分かれます。さらに私が所属している応用化学系でも60以上の研究室があり、学生はその中から自由に研究室を選ぶことができます。
どんな化学も学べる、とは言いすぎですが、これほど研究室の選択肢が多い学部は日本を見渡してもほとんどないのではないかと思います。2024年の秋に大学が東京科学大学へと変身します。ご期待ください。
(1)有機エレクトロニクスで使われているデバイスの構造を調べてみましょう。すでに実用化されている有機EL(テレビやスマートフォンのディスプレイ)がどのような構成でどんな分子が使われているでしょうか?
(2)有機分子は金属と比べて電気がほとんど流れないことが知られています。しかし、現在の有機エレクトロニクスでは導電性の分子を材料として用いています。どのようにして高い導電性を持つ分子を実現したのでしょうか? 調べてみましょう。
ブルーバックス全般
講談社
高校時代に学校の図書館にあるブルーバックスをほぼ全て読破しました。内容をきちんと理解していたかはさておき、テーマの好き嫌いにこだわらず読み進めたおかげで、自分が興味のある分野が自然と定まっていったように思います。(特に理系で)進路に迷っている方はお勧めします。
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Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 化学。今度は無機材料もやってみたい。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? フランス。美味しいご飯と温暖な気候、適度にのんびりした風土。 |
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Q3.感動した/印象に残っている映画は? 『湯を沸かすほどの熱い愛』 |
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Q4.大学時代の部活・サークルは? 弓道(東京工業大は日置流印西派です) |