ヒカルの碁
原作:ほったゆみ、漫画:小畑健、監修:梅沢由香里五段(ジャンプコミックス)
囲碁を題材にした少年漫画を紹介します。小学6年生の進藤ヒカルが、古い碁盤に宿っていた平安時代の天才棋士である藤原佐為の霊に取り憑かれ、棋士としての道を進んでいくストーリーです。打ち込める何かを見つけることで人は成長できるというところに自身の経験を重ねました。
古い碁盤に魂が宿っていた藤原佐為は囲碁の名人であり、自分自身が納得する一手「神の一手」を目指すために囲碁を打ち続けますが、ヒカルが見つけた一手に自身の使命、役割(存在意義)を感じました。私も一研究者として、今後の未来を担う若い研究者の成長に大きな影響を与える一手を見せたいと思っています。
高分子のトポロジーを自在に変化させ、高分子の特性を変えよう
プラスチックは分子の長い鎖
私たちの身近にあるプラスチック(高分子)を分子レベルで見てみると、1本の長い鎖が絡み合ってできています(ラーメンの麺が絡み合っているイメージです)。高分子のほとんどが1本の長い鎖からできていますが、中には分岐していたり、鎖の末端同士がくっついて環状になっている高分子もあります。
このような高分子鎖全体の形状を「高分子のトポロジー」と呼び、トポロジーが違うと、高分子の特性(硬さや粘度など)も違ってきます。
トポロジーの違いでレジ袋の強度が変わる
一番身近な例では、スーパーのビニール袋でしょうか。1本の長い鎖のトポロジーだと結晶化しやすく、強度のある強い袋ができますが、結晶化に由来して(結晶化部位に由来する光の散乱)白く濁った外観になります。一方、枝分かれ構造をもったトポロジーでは、結晶化しづらく強度はなくなりますが、しなやかさが出てきます。結晶部位がないので、光は透過することから透明な袋になります。スーパーの白い袋と透明な袋、構成している成分(高分子の種類)は一緒なのにトポロジーが違うだけで見た目も物性も違います。
特殊な結合を使ってトポロジー変換
ここから私の研究紹介に入っていきますが、もし高分子のトポロジー(分子レベルのミクロのもの)を自在に変えることができたら、高分子の(マクロな)特性を変化させることができます。特定の刺激に応答してトポロジーが変化する高分子は、新しい刺激応答材料としても期待できます。
私の研究では、高分子のトポロジーを狙って変化させるために、特殊な結合(高分子に貫通しているドーナツ構造であったり、切れたりくっついたりが簡単にできる結合)を高分子中に入れて、その結合をうまく使うことで、高分子のトポロジー変換を達成しています。最近では、高分子が作り出すナノオーダーでの集合構造を高分子のトポロジー変換によって変化させることに成功しました。
研究は一人ではできません。導いてくれる人や協力してくれる人、評価してくれる人などがいて、初めて研究が成立します。「高分子のトポロジー変換」については、私の博士時代の恩師である高田十志和先生と打田聖先生が考案したテーマであり、アイデアを形にするのに10年かかりました。このテーマに巡り合えなかったら今の私はなかったかもしれません。
これは研究だけではないと思いますが、過去の点(経験であったり研究テーマ)と点を線で結べることに気づきました。Appleの創業者スティーブ・ジョブズ氏の言葉で有名ですが、過去があって今がある。今があって未来がつくられるということです。
それぞれの点を振り返ると、それぞれの点の意味合いが大きく変わっていることに気づきました。周りに支えられることでついた点、自分の意思でつけた点、周りを支えることでついた点。私がつけた点を見た読者の皆さんがつける未来の点にも期待しちゃいますね。
◆主な業種
(1) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
(2) 食品・食料品・飲料品
(3) 薬剤・医薬品
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 設計・開発
(3) 生産技術(プラント系以外)
◆学んだことはどう生きる?
私のグループは2022年にスタートしたので、2023年度はまだ卒業生が社会に出て働いているというわけではないですが、全員大学院に進学しました。私が所属しているエネルギー変換材料化学研究室 (第8研究室)の卒業生は、化学メーカーへの就職が多いようです。
私が所属する共生応用化学コースでは、人類が環境と調和し、他の生命と共生していくことを目指し、新しい応用化学および化学プロセスの開発を担う人材の育成を目的にしています。現代の「応用化学」は単に科学技術を発達させるだけでなく、「環境」を保全しつつ地球資源を有効に活用して人類の真の福祉に貢献することが求められているからです。共生応用化学コースでは、有機化学、高分子化学、超分子化学はもちろん、物理化学や無機化学、分析化学、生化学と幅広い分野の「化学」を扱っています。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 同じ高分子科学を専攻します。昔は何も感じていませんでしたが、やっぱり自分は高分子科学が好きなんだなと。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? 音楽ではなく、『スティーブ・ジョブズ 伝説のスピーチ&プレゼン』をよく聴きます |
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Q3.感動した/印象に残っている映画は? 『The Princess Mononoke』 |
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Q4.好きな言葉は? 成せば成る(なせばなる) |