複雑な受精を、 受精胚を守る「透明帯」に注目し解明
6組に1組のカップルが不妊に悩む
近年、不妊症患者は増加傾向にあり、6組に1組のカップルが不妊に悩んでいると報告されています。
これらの不妊症患者は多くの場合、体外での人の手を介した受精法の技術開発によって子供を授かることが可能となってきていますが、このような治療法は不妊の根本的な解決には至っておらず、次世代においても不妊治療が必要になると想定されます。
また、現在の医療では子供を得られないケースも依然として存在し、不妊症の原因を同定することは、このような問題を解決するために非常に重要です。
マウスを使って解明
私たちは、実験動物であるマウスを使用することで、哺乳類の受精現象の分子メカニズムの解明を目指して研究を行っています。
受精現象は非常に複雑な過程により成り立っていますが、私たちはその中でも透明帯と呼ばれる殻のような構造体に注目して研究を行っています。
透明帯はマウスではたった3つのタンパク質から形成されている構造体ですが、受精の際の精子との相互作用や、受精から子宮に着床するまで受精胚を守るために重要な役割を果たしています。
分子レベルでの受精現象がわかってきた
近年、ゲノム編集技術の応用により遺伝子改変マウスの作製が飛躍的に容易になり、これまで明らかとなっていなかった分子レベルでの受精現象の解明が進展しています。
私たちも、透明帯を構成するタンパク質と精子や母体のタンパク質が、いつ、どのように相互作用することで正常な受精が起こっているのかを明らかにしたいと考えています。
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ゲノム編集から始まる新世界 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える
小林雅一(朝日新聞出版)
近い将来にノーベル賞を取るであろう、CRISPR/Cas9 systemを筆頭にしたゲノム編集技術。今後、ゲノム編集技術によって私たちの食や医療がどのように変化していくのかをわかりやすく解説している本です。