雷のきっかけは宇宙線か。核反応も明らかになった雷の最新研究
宇宙線は天文学の大きな謎
この世界の成り立ちと正体を調べるのが物理学です。物理学の測定を駆使すれば、私たちの目では見ることができない宇宙の姿を明らかにすることができます。その一つの例が、20世紀初頭に発見された、目には見えないが、絶え間なく地球に降り注いでいる宇宙線です。
宇宙線は、ブラックホールや中性子星、あるいは星が死んだ後に残る超新星残骸など宇宙の極限的な環境で産まれると考えられていますが、まだよくわかっていません。この宇宙線の源は、天文学の大きな謎のひとつになっています。
雷研究から、新分野、高エネルギー大気物理学が生まれる
この不思議な宇宙線、もしかすると身近な「雷」の秘密を握っているかもしれません。雷は大気中で電流が流れる放電現象ですが、その雷が何をきっかけにして始まるのかは、まだよくわかっていません。
宇宙線は、この雷のきっかけの候補と考えられています。これを調べるには、宇宙線の研究から発達してきた高エネルギー物理学の手法が有効です。
実際、雷は可視光や電波と呼ばれるエネルギーの低い光だけで光ると思われていましたが、X線やガンマ線といったエネルギーの高い光を出すこともわかり、高エネルギー大気物理学という新分野が生まれつつあります。
雷は太古から知られている身近な自然現象ですが、未解明な謎も多く、最先端科学の研究対象なのです。
雷は原子核物理学の研究対象にも
私たちのグループでは、日本海沿岸で冬になると強力な雷や雷雲が発生することに着目し、地上に放射線のモニターを設置して観測を続けてきました。すると、雷に伴って中性子や陽電子という、素粒子物理学の対象である粒子を検出しました。こういった、見たことがない、よくわからない現象に出会う瞬間は、科学者がワクワク興奮できる最高の経験です。
詳しく調べていくと、雷で発生した高エネルギーの光が、大気中の窒素や酸素の原子核に衝突し、別の原子核に変化する「原子核反応」が起きていることが明らかになりました。雷は、電磁気学だけではなく、原子核物理学の研究対象にもなってきたわけです。
市民サポーターと観測、「雷雲プロジェクト」
今、私たちの「雷雲プロジェクト」では、市民サポーターと一緒に金沢市にシチズンサイエンスの雷観測網を構築しようとしています。科学を研究者だけに閉じずに、オープンに市民参加型で進めてみたいということで、Collective Power of Science をスローガンにしています。一緒に自然界の謎に挑戦しませんか。
◆テーマとこう出会った
私はもともと、X線天文学という、人工衛星に検出器を搭載してはるか遠くの中性子星などの不思議な天体を観測する分野で研究してきました。ところが、雷や雷雲から高エネルギーの光が出ているらしいと知り、自分たちの持っている技術でも観測ができそうだと、分野を越境して研究を始めました。好奇心が学問の要。そして、学問は自由です!
最初の頃は研究予算を確保するのに苦労して、その当時はまだ珍しかった学術系クラウドファンディングに挑戦して資金を得るなどしました。その後、観測網も広がり、気象学や天文学、大気電気学など異なる分野の仲間も集まって、今は学際的な研究を進めることができています。新しい分野を作ってみたいですね。
◆大学・大学院時代
東京大学の五月祭という学園祭では、物理学科は毎年出し物をしています。私と友人たちは、自作の電波干渉望遠鏡で太陽を観測するという企画に挑戦しました。残念なことに、学園祭当日までには間に合わなかったのですが、その後追加の観測で、自作の装置で太陽を観測してみると、太陽からの電波が干渉して生じるパターンを検出できました。その瞬間の興奮は忘れられません。何か新しいものに出会う瞬間は、いつもワクワクしますね。
◆出身高校は?
札幌南高校
◆雷が反物質の雲をつくる -雷の原子核反応を陽電子と中性子で解明-(京都大学)
◆Twitter: https://twitter.com/teru_enoto
◆京都大学 白眉センター 榎戸 輝揚 特定准教授インタビュー-市民と連携するオープンサイエンスが切り拓く新しい研究スタイル-(科学技術・学術政策研究所)
◆科学・芸術・遊びの境界を揺さぶるミニチュア宇宙線モニタの開発秘話(ほとんど0円大学)
理化学研究所は研究所のため、大学教育は残念ながら行っていませんが、研修生、大学院リサーチ・アソシエート(JRA)などの制度で、一緒に研究を行うことができますよ。最先端のサイエンスをしながら自分を鍛えてみませんか。
プラネテス(漫画)
幸村誠(講談社コミック)
私たちが宇宙に生存圏を広げていく、ちょっと先の未来で、スペースデブリの回収をしている人たちを描きます。木星往還船のプロジェクトとか、宇宙への夢がいっぱいで、同じ名前のアニメも素敵です。オープニングは宇宙開発の歴史が描かれていて、その筋の人は何度でも見たくなります。
ローマ人の物語
塩野七生(新潮文庫)
ローマ帝国の勃興、繁栄、そして衰退までを描いた長編の歴史小説。人々がどう考え、どう行動し、その結果としてどんな歴史が紡がれていったのかが、壮大なスケールで描かれています。高校時代に貪るように読んでいました。長いですが、2000年近く昔の人達も、今の私たちと同じく最善を尽くして社会を作っていたことがわかります。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? カリフォルニア州サンフランシスコ、カナダ。 |
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Q2.熱中したゲームは? 『銀河英雄伝説』『信長の野望』『大航海時代』 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 山岳愛好会 |
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Q4.会ってみたい有名人は? 磯田道史さん、伊集院光さん |