生体医工学・生体材料学

血流計測

コンピュータシミュレーションで血流を正確に再現、実際の診断に


船本健一先生

東北大学 工学部 機械知能・航空工学科(工学研究科 ファインメカニクス専攻/医工学研究科 医工学専攻/流体科学研究所)

先生のフィールドはこの本から

ヤモリの指 生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジー

ピーター・フォーブズ、訳:吉田三知世(早川書房)

自然界に存在する植物や動物の特徴と構造を研究し、その機能を新しい技術に活かしたバイオミメティクスの例を紹介している本。普段の生活の中にも、科学技術の発展のヒントが自然界にはたくさん隠されていることを教えてくれます。

世界を変える研究はこれ!

コンピュータシミュレーションで血流を正確に再現、実際の診断に

医療診断装置で得られる情報には限界が

超高齢化社会に突入した日本では、高齢者に対する医療と福祉の充実はもちろんのこと、生まれ来る新しい命をどのように安全に迎えるか、赤ちゃんに対する医療も重要な課題です。病気の診断や治療では、身体の状態を把握することが大切です。

これまでに、超音波診断装置やX線CT、MRIなど様々な医療診断装置が開発され、実際に医療現場で活躍していますが、それぞれの装置によって得られる情報には限界があります。

例えば、身体の中の血液の流れ(血流)が、心臓の拍動に応じてどこでどのくらい変化しているか、その時の血圧はどのくらいか知りたい場合、そのすべての情報を同時に知ることは困難です。

血液の速度や圧力を計算で求める

一方、コンピュータを用いるシミュレーションは、正しい条件を与えさえすれば流れの速度や圧力の情報を計算によって求め、表示(可視化)することができます。

そこで、私は、医療診断装置を用いて計測した情報をコンピュータによるシミュレーションに取り込みながら計算を行うことで、血流を正確かつ詳細に再現する研究に取り組み、実際の診断に応用できることを示しました。

このように、一見、相容れないような手法を組み合わせることで、それぞれの短所を補って長所を高めることができます。現在は、身体に本来備わっている機能や病気の発症と進展のメカニズムを解明し、病気の予防・診断・治療を助けるための研究を、機械工学をベースにしながら進めています。

最近開発した、酸素濃度を制御しながら細胞培養を行うことを可能にしたマイクロ流体デバイス
きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

様々な診断装置や治療装置が用いられていても、今なお病気で苦しむ人がいます。それらの装置の性能が向上すれば救われる人も多くなります。学生時代に、「一人の医師が救える患者の数には限りがあるが、医療診断装置や医療技術の開発によって救われる患者の数は計り知れない」という話をどこかで耳にし、工学者の立場で医療に貢献する研究に従事したいと思うようになりました。

直接目で見ることのできない身体の中の状態や現象を、身体の外で再現することで、病気に対する何かしらの解決策を見出すことが現在のモチベーションです。

◆大学時代

入学して一人暮らしを始めて1年が経った頃、祖父が脳卒中で倒れ、そのまま帰らぬ人になりました。二十歳になったら一緒にお酒を飲む約束どころか、最後に話すこともできないまま別れを迎えました。大学では機械工学を専攻していたのですが、医療に関係する仕事をしたいと思うようになり、工学から医療に貢献する医工学の研究の道に進むことを決意しました。

◆出身高校は?

山口県立宇部高校

先生の分野を学ぶには
注目の研究者や研究の大学へ行こう!


船本健一先生 の研究・研究室を見てみよう
昨年度、研究室学生とシンガポールで開かれたバイオエンジニアリングに関する国際会議ICBME2019に参加し、全員が口頭発表を行いました。画像は学会終了後の記念写真。
先生の学部・学科で学ぼう

私の研究室は東北大学の工学研究科機械系と医工学研究科の両方に属しています。東北大学の医工学研究科は日本で唯一、医工学分野を専門に勉強できる大学院です。医工学の研究では、医師や医学・薬学などの研究者と工学系の研究者が密接に協力して、医療における課題解決に取り組んでいます。私の研究室に所属する学生は工学の基礎はもちろんのこと、医学・生物学的な知識と技術も習得し、活躍することが期待されています。

中高生におススメ

人類が消えた世界

アラン・ワイズマン、訳:鬼澤忍(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

持続可能な開発目標(SDGs)に向けた様々な取り組みが開始されている中で、人類が地球に対していかに大きな影響を与えてきたか/与えているかについて、考える機会を与えてくれます。


はたらく細胞(漫画)

清水茜(シリウスKC)

身体の中の細胞を擬人化した漫画。ウィルスの侵入やがんの発生などに対し、血液中の細胞がどのように応答して身体の状態(恒常性)を維持しようとしているかがコミカルに描かれていて、身体のしくみを楽しく理解できます。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

医学

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

アメリカ合衆国。「人は人、自分は自分」他の人にとらわれず自由な生き方ができるから。

Q3.熱中したゲームは?

『スーパーマリオ オデッセイ』

 Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

花屋の宅配

Q5.研究以外で楽しいことは?

飼っているセキセインコに言葉を教えること。


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