予測のカギは雲! 世界の雲・降水データから、気候変動を高精度に予測
温暖化予測は不確実性が大きい
国際的にも大きな課題の一つである、地球温暖化に関する研究を行っています。着実に温暖化が進行していることは観測的にも明らかになっており、二酸化炭素に代表される温室効果ガスの排出量増加が要因であることは中高生のみなさんもご存知ではないでしょうか。
しかし、将来の温暖化予測には大きな不確実性があることも事実です。私は、こうした不確実性を小さくして将来気候を精度良く予測できる数値シミュレーションモデルの開発に取り組んでいます。
雲の扱い方で予測が大きく変動
では、予測を困難にしている要因は一体何なのでしょうか。意外に思われるかもしれませんが、その正体は雲です。毎日のように目にしている雲ですが、実はまだ科学的に明らかになっていないことが多く、数値シミュレーションによって再現される仮想地球上で雲がどのように表現されるかによって地球の温暖化の度合いが大きく変わってくるのです。
雲は、太陽光をさえぎって地球を冷却する「日傘効果」の役割を持つ一方、毛布のように宇宙へ逃げる熱を地球に閉じ込める「温室効果」の役割も併せ持ちます。雲の量や雲の高度といったマクロな特性に加え、雲内部の粒子が水か氷か、粒子のサイズはどれくらいか、といったミクロな特性でも気候への役割が大きく変わるため再現が難しいのです。
数値モデリングと衛星データ解析の融合研究
そのため、世界の雲・降水の振る舞いを日々観測している人工衛星のデータ解析を駆使して、気候変動を高精度に予測可能な数値シミュレーションの開発に学生時代から取り組んできました。現在では、こうした雲が北極海氷の融解速度に及ぼす影響や、それによって中緯度の異常気象の発生にどのように結びついているのかといった、大気・海洋・海氷の相互作用を研究しています。
私が気象・気候学の分野に足を踏み入れたのは、「小さい頃から天気が好きだった」といった立派なものではなく大学受験の失敗がきっかけです。薬剤師になりたかったのですが志望先に合格できず、代わりに入学した地元の大学で環境科学を専攻している際に気象現象の物理に興味を持ちました。
気象学の講義があったわけではありませんが、一つを知るとその次がどんどん知りたくなり、未解明の問いに自分なりのアイデアで答えを追い求める研究の世界にのめり込んで今日に至ります。何事にも真剣に向き合っていると予想外の魅力を発見したりするもので、「興味は後からついてくる」こともあるのだと中高生に伝えたいなと思います。
(1) 世界で最も温暖化が進んでいるのはどこ?
(2) 日本で最も温暖化が進んでいるのはどこ?
(3) 人間が大気汚染をやめたら気候が変わる?
(4) 地球から雲が消えると何が起こる?
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 米国ハワイ州 気分が開放的になるから |
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Q2.感動した/印象に残っている映画は? 『ビューティフル・マインド』 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 気象予報士を目指す学生さん向けに講師をしていました。 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 料理 工夫一つ・手間一つでおいしくなるのが面白いなと思います。 |
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Q5.好きな言葉は? 遠回りすることでしか合理的になれない |