化学反応中の原子・分子の運動を見たい!「なければ創る」装置開発
シンプルだが未解明な疑問に答えたい
科学技術は急速に発展して、より複雑な現象を理解する方向に進んでいます。しかし、科学者はシンプルな疑問に答えを窮することがしばしばあります。
私が挑戦している研究というのも、中学生の理科で習う基本的な項目の一つですが、「化学反応中に原子・分子は空間的・時間的どのように動いているのか」を直接見たいというシンプルなものになります。これがよくわかっていないのです。
10兆分の1秒のパルス状の電子線を使って
原子の大きさは100億分の1メートル程度、その原子が固体の中では10兆分の1秒くらいの時間で動いています。こんな小さくて速いものを普通のカメラでは見ることはできません。これまで、原子・分子の動画を撮影する装置は存在しなかったのです。
なければ創ればいいというのが科学者のマインドです。普通のカメラでは光を使いますが、私は10兆分の1秒くらいのパルス状の電子線を使った原子・分子動画の撮影装置を開発しています。現在、筑波大学に3台の装置があります。
科学を根底から覆す可能性
百聞は一見に如かず。実際に見ることで、想像していたよりも世界が大きく広がることはよくあります。科学の世界も同じで、化学反応中の原子・分子の運動を直接見る技術は、物理、化学、生物と非常に幅広い分野の常識を覆す可能性を持っています。
さらに新しい装置を開発して、見られるものの幅を広げるような研究を進めていきたいと思っています。
小学生のときはバカボンのパパになりたく、中学生の時は法律家になりたいと思っていました。高校ではエネルギー関係の研究者になりたいと思い、大学を選びましたが、大学生になると理論物理学者になりたいと思いました。
しかし、研究室を選ぶときには、計測系の研究室に入りました。自由にやらせてくれる先生に出会い、研究室のテーマは選ばずに自分でやりたい研究を4年生のときに決めて、それがマッチしたのかドイツでの研究員時代にそれをさらに発展させ、今の研究となっています。紆余曲折はあるかもしれませんが、前に進むことが大事だと思います。
◆主な業種
(1) 半導体・電子部品・デバイス
(2) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
(3) 電気機械・機器(重電系は除く)
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 設計・開発
(3) システムエンジニア
◆学んだことはどう生きる?
研究室ができたばかりですので、私の研究室の出身者は多くありません。しかし、これまでのキャリアの中で私が指導した学生の中には、大学や研究機関で研究をしている研究者もおりますし、もちろん企業で研究・開発を行っている方もおります。
昨年度卒業した学生は、もともと計測機器を自分の手で作りたいという希望を持って私の研究室に入り、現在は企業で電子顕微鏡の開発に取り組んでいます。このように、まさに夢を叶えた方もおります。
筑波大学の応用理工学類では、1〜2年までは幅広く基礎を学び、3年生のときに計測工学、半導体工学、材料工学、分子工学の系統の分野のコースを決めます。そしてあまりコースに縛られることなく、4年次に自由に研究室を選んで専門を決定します。このように、3年間程度の時間をかけてじっくりと自分に合った専門を選べるのが応用理工学類の特徴となっています。また、物理と化学をしっかりと学んでから専門に進むことで社会に貢献できる人材を育てる教育を行っています。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 応用物理や物性物理を学ぶと思います。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? ドイツは研究員時代に3年ほど過ごしており、生活に慣れています。 |
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Q3.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 学生時代は『ドラゴンクエスト』、『ファイナルファンタジー』、『テイルズシリーズ』が好きでした。30代はリアル脱出ゲームをよくしていました。 |
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Q4.好きな言葉は? 明るく楽しく。 |