難しいからこそ楽しい!脂質解析から迫るオートファジー研究
体内のリサイクリングシステム
私は2016年にノーベル医学生理学賞を受賞された大隅先生の研究室で、オートファジーの研究を10年以上行っています。オートファジーは細胞内の分解システムであり、いわば体の中で起こるリサイクリングシステム=最近流行りのSDGsのようです。
脂質が研究の大きな壁に
大隅先生のノーベル賞受賞後、日本でもオートファジーが一躍有名になりましたが、そのメカニズムや生理的意義などの本質的な理解には現在でも到達できていません。特に、オートファジーは膜が関与する現象ですが、その膜を構成する主要な脂質の情報は依然として謎に包まれたままの状態です。
研究が遅れている最大の理由は、脂質の性質にあります。「水と油」という言葉があるように、脂質は水に溶けないため脂質研究は技術的にとても難しく、研究の大きな障壁になっていました。
膜をまるごと精製する技術を世界で初めて確立
私の研究の目標は、オートファジーの膜動態を脂質の言葉で表現し、膜の構築原理を理解することです。私の研究の強みは、モデル生物として酵母細胞を用い、オートファジーにより作り出された膜をまるごと精製する方法を世界ではじめて確立したことです。
その技術により、現在は脂質組成をリピドーム解析(網羅的な脂質解析技術)により明らかにしており、その情報を基盤として膜形成をシミュレーションしたりしています。
私の研究は、多くの共同研究によって支えられており、専門分野が異なる優秀な研究者と議論することで、研究が飛躍的に進展していくプロセスはとても楽しいです。脂質解析から解剖するオートファジーは、難しいからこそ面白い!のです。
「細胞生物学」が 学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)
その領域カテゴリーはこちら↓
「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」