素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理

暗黒物質・暗黒エネルギー

すばる望遠鏡を使った宇宙探査で、宇宙の暗黒成分の正体に迫る!


宮武広直先生

名古屋大学 素粒子宇宙起源研究所/理学部 物理学科(理学研究科 物理科学領域)

出会いの一冊

眠れなくなる宇宙のはなし

佐藤勝彦(宝島社)

古代の人々が考えた宇宙観から、宗教と宇宙の関係、さらにビッグバン宇宙論やΛCDM標準宇宙論などの最新の科学まで、幅広く解説しています。

有史以来、人類が「自分たちの住む世界を知りたい」という欲求に従って、どのように宇宙の姿が解き明かされてきたのか、文化的背景を含めて知ることができます。「科学は人類の知の地平線を開拓する営みである」ということを感じることができると思います。

こんな研究で世界を変えよう!

すばる望遠鏡を使った宇宙探査で、宇宙の暗黒成分の正体に迫る!

暗黒物質と暗黒エネルギーで宇宙の約95%

天文観測技術の飛躍的向上によって、2000年代に宇宙の進化の様子を記述する標準宇宙模型(ΛCDM模型)が確立されました。これにより、宇宙の構成要素の約95%は、正体不明の物質である暗黒物質と正体不明のエネルギーである暗黒エネルギーで占められていることが明らかになりました。

つまり、有史以来人類が調べてきた我々の世界の構成要素(水素やヘリウムなどの元素、もっと小さいスケールで見るとクォークなどの素粒子)はたった5%しかないということがわかったのです。

暗黒物質は未知の素粒子である可能性があります。暗黒エネルギーは1990年代後半に発見された宇宙の加速膨張の源とされています。加速膨張は、万有引力(引き合う力)と逆の万有斥力(反発する力)のようなものが存在することを示唆しています。今までにそのような力は発見されていないため、とても不思議な現象です。

ΛCDM模型は観測事実をよく説明するものの、宇宙の構成要素のほとんどが正体不明な暗黒成分であることを示唆しており、暗黒成分の解明は基礎物理学におけるもっとも重要な課題の一つです。

はるか昔の宇宙構造を求めて

2010年代後半になり、ΛCDM模型に綻びが見え始めてきました。その綻びの一つが、宇宙が生まれてから約40万年後の姿である宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の測定から予測される宇宙構造の凸凹度合いと、宇宙が生まれてから60億年後以降の宇宙構造から直接的に測定した凸凹度合いとの間に違いが見え始めたことです。

後者の測定の一つとして、日本が主導するすばる望遠鏡主焦点カメラHyper Suprime-Cam(HSC)を用いた広視野深宇宙探査が挙げられます。私はHSCの宇宙論解析チームの共同代表を務めています。また、さらに昔の宇宙構造を調べるために、HSCで検出された遠方銀河がCMBから来る光を歪める効果(重力レンズ効果)を用いた研究を始めました。これらの測定から宇宙の暗黒成分の正体に迫るため、日々研究を行っています。

*ΛCDM模型:Lambda-Cold Dark Matter Model ラムダ・コールド・ダークマター・モデル

米国プリンストン大学で行われたすばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam(HSC)のコラボレーションミーティングでの記念写真。HSCにはプリンストン大学の研究者や台湾の天文学コミュニティも参加しており、アメリカ人、台湾人だけでなく、イギリス人、フランス人、イスラエル人などさまざまな国の人が参加しています。
米国プリンストン大学で行われたすばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam(HSC)のコラボレーションミーティングでの記念写真。HSCにはプリンストン大学の研究者や台湾の天文学コミュニティも参加しており、アメリカ人、台湾人だけでなく、イギリス人、フランス人、イスラエル人などさまざまな国の人が参加しています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

父親が大学で物理学を専攻していたので、量子力学や素粒子物理学の話は小さい頃から聞いており、自然と基礎物理に興味を持っていました。中学や高校の頃は、理科が好きで没頭するというほどではなかったですが、すばる望遠鏡やスーパーカミオカンデが動き出した時は興味を持ってニュースを読んでいました。

大学に入り、暗黒物質や暗黒エネルギーについて知る機会がありましたが、素粒子物理を専門にするか、宇宙論を専門にするか決めきれずにいました。その時に素粒子実験を専門にしている先生がすばる望遠鏡を用いた宇宙論の観測計画を始めたということを聞いて大学院はその研究室に入りました。大学院で悩んだ末、宇宙論を選びました。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「多波長観測で拓く高赤方偏移宇宙論」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
米国プリンストン大学宇宙物理学科で。背景にあるのはすばる望遠鏡Hyper Suprime-Camで撮影された画像。左から私、プリンストン大学の共同研究者(アメリカ人)、私が指導する大学院生(韓国人)、プリンストン大学の共同研究者(イギリス人)、プリンストン大学の共同研究者(アメリカ人)
米国プリンストン大学宇宙物理学科で。背景にあるのはすばる望遠鏡Hyper Suprime-Camで撮影された画像。左から私、プリンストン大学の共同研究者(アメリカ人)、私が指導する大学院生(韓国人)、プリンストン大学の共同研究者(イギリス人)、プリンストン大学の共同研究者(アメリカ人)
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関

(2) ソフトウエア、情報システム開発

(3) ネットサービス/アプリ・コンテンツ

◆主な職種

(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者

(2) 基礎・応用研究、先行開発

(3) 設計・開発

◆学んだことはどう生きる?

まず、物理学は未知の現象に対して論理的な筋道を立て、それに従って解決しようとする学問です。研究を通して得られた問題解決能力は社会に出た後も必ず役に立ちます。また、私が行っている解析は、数億個の銀河を使って背景にある物理法則を探るという、ビッグ・データ・サイエンスと呼ばれるものです。ビッグ・データ解析では統計学やAIなどを駆使して解析を進めていきます。これらはまさに今社会で求められている技術であり、IT企業への就職に有利です。

先生の研究所は?

私が所属する素粒子宇宙起源研究所は素粒子理論と実験、観測的宇宙論など、基礎物理に分類される研究分野が揃っています。この世界を支配する物理法則が何か、という疑問を持つ学生が、さまざまなアプローチでこの謎に迫ることができます。学部生の間にさまざまな分野に触れることで、大学院で自分が研究したい分野を選ぶことができます。

先生の研究に挑戦しよう!

現代物理学では、ミクロの世界、つまり素粒子の振る舞いを理解できれば、我々の世界を理解できると考えられてきました。ところが、暗黒物質、暗黒エネルギーは素粒子物理学では説明できません。現在の素粒子物理学ではどのような素粒子が見つかっているか、またなぜそれらが暗黒物質、暗黒エネルギーを説明できないか調べてみましょう。

中高生におすすめ

ハッブル望遠鏡が見た宇宙

野本陽代、ロバート・ウィリアムズ(岩波新書)

世界で初めての可視光宇宙望遠鏡であるハッブル宇宙望遠鏡で撮られた画像集です。高校生の時に手に取り、星雲や銀河が非常に高い解像度で撮像されており、感銘を受けました。天文学に興味がある人におすすめです。


NHKスペシャル アインシュタインロマン

NHKエンタープライズ

一般相対性理論、量子力学など、現代物理学の発展をアインシュタインを軸にして紹介した映像です。また、「思考実験」など物理学を研究する上でよく使われる方法に触れることができます。基礎物理に興味がある人におすすめです。

一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

アメリカ。住んだことがあるから。また多様性を尊重する社会が好きだから。一方でさまざまな矛盾を孕んだ社会であり、その点にも興味があるから。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

音楽がいちばんの趣味で、ジャズ、ロック、クラシックなど色々聴きます。最近はジャズをよく聴きます。いろんな人のいろんな曲を聞くので一言では答えられません。

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

物理の勉強とバンド活動を優先していたので、効率の良い家庭教師や個別指導の講師をしていました。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

エレキギター演奏、セッションに行く

Q5.好きな言葉は?

Find things in which you have an unfair advantage(プリンストン大学時代のアドバイザーで著名な宇宙物理学者であるDavid Spergel氏に教えて頂いた言葉。https://www.youtube.com/watch?v=iS3KDhENzG4 を参照)


みらいぶっくへ ようこそ ふとした本との出会いやあなたの関心から学問・大学をみつけるサイトです。
TOPページへ