代数幾何学と数論幾何学の相互作用から新しい可能性を探る
古代ギリシアから続く研究
僕の専門は代数幾何学および数論幾何学になります。
代数幾何学とは、円や円錐のように多項式の方程式で定まる幾何的図形である代数多様体を研究する学問です。次に数論幾何学とは、多項式の方程式の有理数解、つまり代数多様体上の有理点を研究する学問です。
ともに歴史が古く古代ギリシアの時代から研究されていて、20世紀終わりには350年ぶりに解決されたフェルマーの最終定理などがあります。
代数・幾何・解析全てが関わるマニン予想
僕はその中でもマニン予想というものを研究しています。これはユーリ・マニンと彼の共同研究者が1980年代後半に提出した予想になります。
多変数3次方程式で定まる多様体のような低次数の超曲面を一般化したファノ多様体上の有理点の個数にまつわる予想です。
多くのファノ多様体上には有理点が無限にあるのですが、マニン予想はサイズがT以下の有理点の個数を考え、Tを無限に飛ばしたときの個数の漸近公式を予想します。代数・幾何・解析全てが関わるとても壮大な予想になります。
フィールズ賞・森重文先生が創始した理論を応用し注目
僕はそのマニン予想の幾何的側面を、高次元代数幾何学の理論である極小モデル理論を使って解明する研究をしています。
この極小モデル理論は、日本人でフィールズメダルを受賞した森重文先生が創始した極めて美しい代数幾何学の理論ですが、それを数論幾何学の問題に応用するという観点がとてもユニークで世界中の研究者から注目を集めました。
さらに最近は数論幾何学のアイデアを代数幾何学の問題に応用する研究もしています。このように僕は代数幾何学と数論幾何学の相互作用を狙い、それにより数学の新しい可能性を探る研究をしています。
高校生の頃は超弦理論などの理論物理に興味がありました。
東工大の理学部時代に自分は物理そのものよりも物理の数学的定式化に興味があると気づき数学科に進学しました。4年次に理論物理とも関わる代数幾何学を専攻しました。
大学院はニューヨーク大学に進学して、そこで2018年にフィールズメダルを受賞したアキシェイ・ヴァンカテッシュの代数学の講義を受けて数論幾何学をやろうと決意しました。
アキシェイはその後スタンフォードに移ってしまったので、マニン予想の専門家であるユーリ・チンケル先生の元につきました。そのときマニン予想の問題を渡されました。 明日までに解いてきなさいと(笑)
◆ 谷本先生のページ
◆主な業種
(1) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
(2) 金融・保険・証券・ファイナンシャル
(3) ソフトウエア、情報システム開発
◆主な職種
(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(2) システムエンジニア
(3) 中学校・高校教員など
◆学んだことはどう生きる?
IT企業の研究者、銀行、数学関係の出版社、高校教員などです。
名古屋大学理学部数理学科は所属している先生の専門分野が代数・幾何・解析・応用数学と多岐にわたります。 学生も多いので多種多様な人と関われ一緒に切磋琢磨しながら数学の研究ができます。
その後のキャリアも研究者から金融・IT・教員・出版社と多種多様です。 また伝統的に代数学が強く代数幾何・数論・環論などいろいろなテーマで研究できます。
有理数p/q(ここでp、qは互いに素)の高さをmax{|p|, |q|}とします。高さがT以下の有理数の個数のTを無限に飛ばしたときの漸近公式を求めよ。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? アメリカ。大学院・ポスドク時代と8年ぐらい住んだけど活気のあるいい国だと思う。 |
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Q2.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? サッカー観戦。日本代表戦やJリーグ、さらにヨーロッパの試合など見てます。日本人選手の活躍は素直に嬉しいです。 |