気象・海洋物理・陸水学

惑星の気象

火星の天気予報と水環境マップの作成に挑む


黒田剛史先生

東北大学 理学部 宇宙地球物理学科(理学研究科 地球物理学専攻)

出会いの一冊

オデッセイ

監督:リドリー・スコット、主演:マット・デイモン

NASAが制作に協力した映画です。実際に人類が火星に降り立った場合の活動・生活について可能な限り科学的正確さに基づいた描写がなされており、有人火星探査の様子とその困難さを想像するのにはちょうど良いかと思います。

こんな研究で世界を変えよう!

火星の天気予報と水環境マップの作成に挑む

ジェット風や砂嵐が襲う惑星の気象

日々の天気予報に欠かせない「気象学」を地球以外の惑星・衛星にも適用して取り組む学問が「惑星気象学」です。

地球以外の惑星・衛星の気象は地球の常識とはかけ離れたものも存在し、代表的なものでは金星のスーパーローテーション(全球を覆う高速のジェット風)、火星の全球を覆う砂嵐やドライアイスの降雪、タイタンのメタンの雨といったものが挙げられ、最近では太陽系外惑星にもその研究の目は向けられています。

火星の気象は「砂」が支配

中でも火星は今後有人探査が見込まれ、人類の新しい活動圏となることも視野に入るため、安全な活動のためにもその気象を地球と同じように予報することが重要になってきます。

雲や降水を生み出す「水」が地球の気象を支配するのに対し、火星の気象を支配するのは「砂」です。火星の砂嵐は大小様々なスケールで発生し、数年に1度全球を覆う規模に発達した時は数十日間にわたり地表に日光が十分に届かず、それで壊れた火星探査機もあります。

火星探査や生命の存在研究の手掛かりに

私は全球から局所気象までをカバーする大気モデル群、NASA等の火星探査機が取得し公開する観測データ、また機械学習などを駆使して、火星における砂嵐の予報に挑戦しています。

合わせて有人探査においては水の確保がエネルギー源や生命維持に重要になってくることから、モデルと観測データを用いた火星の大気・表層・地下の水環境マップの構築にも取り組んでいます。

これは今後の探査の指針になるのみならず、過去や現在の火星に生命が存在した(する)かどうかを知る手掛かりとなります。

火星大気のシミュレーション研究の結果の一例。火星の地形と風から発生する大気の波が表現されています。このような大気の波の発生を理解することも天気予報には重要です。
出典:Kuroda et al. (2015), A global view of gravity waves in the Martian atmosphere inferred from a high-resolution general circulation model. Geophysical Research Letters 42, 9213–9222, https://doi.org/10.1002/2015GL066332 .
火星大気のシミュレーション研究の結果の一例。火星の地形と風から発生する大気の波が表現されています。このような大気の波の発生を理解することも天気予報には重要です。
出典:Kuroda et al. (2015), A global view of gravity waves in the Martian atmosphere inferred from a high-resolution general circulation model. Geophysical Research Letters 42, 9213–9222, https://doi.org/10.1002/2015GL066332 .
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「火星における天気予報の実現と水環境マップの構築」

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学会で訪れたアイスランドの氷床の上で。現在の火星には北極に大きな氷床がありますが、約38億年前には赤道の方も広範囲で氷床に覆われていた可能性があり、そのような氷床の生成を再現して当時の火星の水環境に迫るシミュレーション研究にも取り組んでいます。
学会で訪れたアイスランドの氷床の上で。現在の火星には北極に大きな氷床がありますが、約38億年前には赤道の方も広範囲で氷床に覆われていた可能性があり、そのような氷床の生成を再現して当時の火星の水環境に迫るシミュレーション研究にも取り組んでいます。
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先生の研究に挑戦しよう!

フランスの研究チームが公開するMars Climate Database ( https://www-mars.lmd.jussieu.fr/mcd_python/ )を使って、火星地表面の大気温度や気圧がどのような値をとるかを調べ、地球と比べてみましょう。

また最高気温・最低気温が季節や場所(北極・赤道・南極・山の上など)でどのように変わるかを調べてみましょう。

中高生におすすめ

宇宙に命はあるのか

小野雅裕(SB新書)

宇宙・惑星科学を切り拓いた研究者・技術者たちの物語。彼らがいかにして困難に立ち向かい、新しい発見をもたらしたか。現場の臨場感が伝わってくる一冊です。


火星の歩き方

臼井寛裕、野口里奈、庄司大悟(光文社新書)

「火星の歩き方」は日本の最先端の火星研究者が著したもので、火星の中でも研究者が特に注目する場所やその理由、現在計画されている火星探査が目指すことがまとめられています。研究者たちの尽力により、火星はここまで身近な存在になっていることを感じてもらえれば幸いです。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

数学・計算機科学:AIについてもっとよく理解したいので。
化学:アストロバイオロジーに関わるようになって、化学方面の知識が必要な場面が増えているので学び直したい思いはあります。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

ドイツ。7年ほど住んでいましたが、ビールとそれに合う食事が美味しいです。

Q3.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

実況パワフルプロ野球。監督になりきってチームを育てるのが好きです。

Q4.大学時代の部活・サークルは?

合唱やバンド(主にドラム担当)をやっていました。

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

クイズが好きで、雑学や謎解きに興味があります。「99人の壁」というクイズ番組にジャンル「火星」で出場しました。


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