有機分子はどのように生命を誕生させたのか。火星にその手がかりを求めて
世界中の研究者が挑む壮大なテーマ
深淵なる宇宙の進化の歴史の中で、有機分子はいつ、どこで、どのように進化し、地球上に生命を誕生させるに至ったのか?そして、地球外にも生命は存在するのか?
この問いは私がずっと追い求め続けているライフテーマとなる命題です。
このとてつもなく大きな命題に挑むべく、世界中の研究者が様々な分野から研究に取り組んでおりますが、私はその中でも、自分の専門である有機化学分析を主軸に、また太陽系探査にも関わりながら、研究を進めています。
小惑星リュウグウのかけらに有機分子が
地球生命の誕生において、重要な役割を果たしたと考えられているのが、彗星や小惑星などの地球外物質です。
これらの天体は、アミノ酸のような生命を形作る重要な有機分子を誕生したばかりの地球にもたらしたと考えられています。実際、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った小惑星リュウグウのかけらの中にもアミノ酸を含む多種多様な有機分子が見つかっています。
これらの有機分子は、太陽系形成以前の星間分子雲から現在の太陽系に至るまでの過程で、単純な分子からより複雑な有機分子へ進化していったと考えられています。
この宇宙における有機分子進化の道のりについて、隕石や小惑星リターンサンプルなどの地球外物質の分析や、様々な宇宙環境を模擬した実験などを通して研究しています。
サンプルを持ち帰る火星衛星探査計画
次に計画されている火星衛星探査計画(Martian Moons eXploration:MMX)では、火星衛星の1つであるフォボスからサンプルを持ち帰ることを計画しています。
火星は地球の隣の惑星であり、過去に広大な海洋と温暖な気候が存在したとされ、現在も生命の存在が否定できない天体の1つです。フォボスのリターンサンプルの分析から、火星圏への水や有機分子の供給につながる手がかりが得られることを期待しています。
アストロバイオロジーとの出会いは、小学校低学年の頃に、閉館間近の図書館でたまたま手にとった地球外生命に関する本がきっかけでした。そこから宇宙や地球外生命、また生命の起源について、興味を抱き続け、今の研究に繋がっています。
子どもの頃からよく地域の天体観測会に参加していました。高校生の頃に、国立天文台で開催された「君が天文学者になる4日間」に参加して、天文学の研究を体験できたことは良い経験でした。
◆主な業種
(1) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
◆主な職種
(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者
(2) 基礎・応用研究、先行開発
宇宙科学研究所は、大学ではなく研究所のため、基本的には大学のような学部教育は行ってはおりませんが、教育職の多くは総合研究大学院大学や東京大学の教員を兼ねているため、これらの大学院に大学院生として入学し、一緒に研究を行うことができます。宇宙科学ミッションがまさに行われている現場で、理学から工学まで様々な分野の研究者の方々と交流しながら学ぶことができるのは、とても刺激的な環境だと思います。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? フランス、ニース。研究員として2年間ほど暮らしましたが、良いところでした。また行きたいです。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? クラシック音楽全般が好きなのですが、最近はピアノが好きで辻井伸行さんのCDをよく聞きます。きらきら星変奏曲(モーツァルト)が明るく楽しくて好きです。 |
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Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 子育て。子どもはまさに未知の生命体で日々、いろいろなことに気づかされます。 |
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Q4.好きな言葉は? C'est la vie!(それが人生!)フランス語の好きな言葉ですが、どんな時も自分の人生の一瞬一瞬を楽しんで生きていきたいですね。 |