地球宇宙化学

地球外生命

有機分子はどのように生命を誕生させたのか。火星にその手がかりを求めて


菅原春菜先生

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系

出会いの一冊

地球外生命 アストロバイオロジーで探る生命の起源と未来

小林憲正(中公新書)

地球外生命や生命の起源を探究するアストロバイオロジーは、化学、生物学、天文学など様々な分野からのアプローチがありますが、本書は特に、化学的観点を中心としながらも、太陽系探査、さらには地球外知的生命探査に至るまで、研究の歴史と共に最新の研究成果まで網羅して、とても詳しくまとめられています。

人類の宇宙における行動範囲が広がるにつれ、その重要性が高まってきている「惑星保護」という、他天体と地球を生物汚染から守るための国際的取り決めについても最近の知見が述べられています。アストロバイオロジーについて学ぶのに良い1冊です。

こんな研究で世界を変えよう!

有機分子はどのように生命を誕生させたのか。火星にその手がかりを求めて

世界中の研究者が挑む壮大なテーマ

深淵なる宇宙の進化の歴史の中で、有機分子はいつ、どこで、どのように進化し、地球上に生命を誕生させるに至ったのか?そして、地球外にも生命は存在するのか?

この問いは私がずっと追い求め続けているライフテーマとなる命題です。

このとてつもなく大きな命題に挑むべく、世界中の研究者が様々な分野から研究に取り組んでおりますが、私はその中でも、自分の専門である有機化学分析を主軸に、また太陽系探査にも関わりながら、研究を進めています。

小惑星リュウグウのかけらに有機分子が

地球生命の誕生において、重要な役割を果たしたと考えられているのが、彗星や小惑星などの地球外物質です。

これらの天体は、アミノ酸のような生命を形作る重要な有機分子を誕生したばかりの地球にもたらしたと考えられています。実際、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った小惑星リュウグウのかけらの中にもアミノ酸を含む多種多様な有機分子が見つかっています。

これらの有機分子は、太陽系形成以前の星間分子雲から現在の太陽系に至るまでの過程で、単純な分子からより複雑な有機分子へ進化していったと考えられています。

この宇宙における有機分子進化の道のりについて、隕石や小惑星リターンサンプルなどの地球外物質の分析や、様々な宇宙環境を模擬した実験などを通して研究しています。

サンプルを持ち帰る火星衛星探査計画

次に計画されている火星衛星探査計画(Martian Moons eXploration:MMX)では、火星衛星の1つであるフォボスからサンプルを持ち帰ることを計画しています。

火星は地球の隣の惑星であり、過去に広大な海洋と温暖な気候が存在したとされ、現在も生命の存在が否定できない天体の1つです。フォボスのリターンサンプルの分析から、火星圏への水や有機分子の供給につながる手がかりが得られることを期待しています。

私が関わっている火星衛星探査計画(MMX)の探査機の模型です。
私が関わっている火星衛星探査計画(MMX)の探査機の模型です。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

アストロバイオロジーとの出会いは、小学校低学年の頃に、閉館間近の図書館でたまたま手にとった地球外生命に関する本がきっかけでした。そこから宇宙や地球外生命、また生命の起源について、興味を抱き続け、今の研究に繋がっています。

子どもの頃からよく地域の天体観測会に参加していました。高校生の頃に、国立天文台で開催された「君が天文学者になる4日間」に参加して、天文学の研究を体験できたことは良い経験でした。

実験室で隕石から有機分子を抽出して化学処理をしている様子です。様々な化学物質を使用するため、作業はドラフトチャンバーの中で行います。
実験室で隕石から有機分子を抽出して化学処理をしている様子です。様々な化学物質を使用するため、作業はドラフトチャンバーの中で行います。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「微生物変成実験とバイオマーカー分析から目指す火星生命痕跡の検出」

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先生の分野を学ぶには
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探査機の汚染管理の仕事で訪れた種子島宇宙センターです。
探査機の汚染管理の仕事で訪れた種子島宇宙センターです。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関

(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者

(2) 基礎・応用研究、先行開発

◆学んだことはどう生きる?

先生の研究所は?

宇宙科学研究所は、大学ではなく研究所のため、基本的には大学のような学部教育は行ってはおりませんが、教育職の多くは総合研究大学院大学や東京大学の教員を兼ねているため、これらの大学院に大学院生として入学し、一緒に研究を行うことができます。宇宙科学ミッションがまさに行われている現場で、理学から工学まで様々な分野の研究者の方々と交流しながら学ぶことができるのは、とても刺激的な環境だと思います。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

ハビタブルな宇宙 系外惑星が示す生命像の変容と転換

井田茂(春秋社)

系外惑星研究を中心としながらも、「天空の科学」と「私につながる科学」という2方向の視点から生物学や医学、地球科学も内包した広範な科学的知見について、繋がりを持ちながらまとめられています。さらには西洋と東洋の歴史的な宗教観の相違やそれが科学へ与えてきた影響、また科学と政治との関わりについても述べられており、とても考えさせられます。

惑星科学者である著者の宇宙的生命観は、地球に捉われない生命の本質について再考を促しています。


火星の歩き方

臼井寛裕、野口里奈、 庄司大悟(光文社新書)

気球に乗って上空から火星を旅しながら、火星表面の壮大で魅力的な地形の数々を巡って行きます。探査機によって撮影されたたくさんの写真とともに、火星に関する最新の科学的知見についても詳しくまとめられており、火星について深く知ることができる一冊です。


惑星地質学

宮本英昭、平田成、杉田精司、橘省吾(東京大学出版会)

惑星から衛星に至るまで、太陽系天体のカラフルな写真が満載で、宇宙旅行に行った気分になれる1冊。写真を眺めているだけでも楽しいですが、それぞれの天体についての専門的な知識も詳しくまとめられており、惑星科学の教科書としてもおすすめです。

一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

フランス、ニース。研究員として2年間ほど暮らしましたが、良いところでした。また行きたいです。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

クラシック音楽全般が好きなのですが、最近はピアノが好きで辻井伸行さんのCDをよく聞きます。きらきら星変奏曲(モーツァルト)が明るく楽しくて好きです。

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

子育て。子どもはまさに未知の生命体で日々、いろいろなことに気づかされます。

Q4.好きな言葉は?

C'est la vie!(それが人生!)フランス語の好きな言葉ですが、どんな時も自分の人生の一瞬一瞬を楽しんで生きていきたいですね。


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