電力コストの計算時間を大幅に短縮。消費者の望ましい選択に寄与
「最適化」を用い、エネルギー政策を分析
近年、太陽光発電などの再生可能エネルギー電源の普及が進んでいますが、その背後ではこれらの電源の導入を後押しするために、様々なエネルギー政策が検討され、実施されています。そして、これらの政策の有効性を事前に試算したり、実施済みの政策の効果を定量化するために、様々な分析が行われています。
このようなエネルギー政策の分析では「最適化」という数理的なアプローチが活躍しています。最適化はあらゆる選択肢の中から、ある評価尺度を最も良くするものを選ぶもので、例えば消費者の電力コストが最も安くなるような選択肢は何かということを様々な条件のもとで求めることで、望ましい政策の立案に寄与します。
長期間の電力データを扱える解法
最適化の面白い点は、解くべき問題が同じであっても、それをどのような形の数式として記述するかによって、どれだけ素早く精確な解が得られるかが大きく変わるところです。
この研究では、太陽光パネルと蓄電池を導入する消費者の電力コスト最小化問題について、電力消費パターンの構造を上手く捉えて問題を分割することで、従来よりも大幅に計算時間を短縮し、これまで困難だった長期間の電力データを扱った分析を可能とするような解法を開発しました。
最近では、このアイデアを発展させて「微分方程式」という通常は力学や電磁気学などで出てくる物理現象を記述するためのツールを、最適化問題の記述に取り入れることで、電力分野でのいろいろな問題を効率良く解けるような方法の開発に取り組んでいます。
数式を使って様々な物理現象が原理から説明できることを知って、物理が好きになりました。私の専門の電気工学は、電流や電圧など目に見えない概念を数理(特に微分方程式)の助けを借りて理解し応用するという意味で、そのありがたみを非常によく実感できる分野のひとつです。最近では、物理現象だけでなく、意思決定の最適性の原理についての数理的な構造を直接応用につなげるという観点で研究を進めています。
◆ 星野光先生HP
電力バランスゲーム~町に電気をとどけよう~
経済産業省 資源エネルギー庁
電力の需給調整を体験できるデジタルコンテンツで経済産業省・資源エネルギー庁のホームページで公開されています。いろいろな種類の電源の特徴(制約条件)を考慮し、天候や需要の変化(不確実性)を想定して発電量を決定するという内容で、複雑な意思決定を扱える「最適化」が実社会でどう役立つか実感できます。
主な対象は小中学生とされていますが、実際の運用方法がかなり参考にされており、大人でもつい真剣になってしまうほど良くできたコンテンツです。パズル感覚で遊んでみるだけでなく、このような意思決定をコンピュータで自動化するにはどうしたらよいかということもぜひ考えてみてください。
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