制御・システム工学

電力最適化計算

電力コストの計算時間を大幅に短縮。消費者の望ましい選択に寄与


星野光先生

兵庫県立大学 工学部 電気電子情報工学科(工学研究科 電気物性工学専攻)

出会いの一冊

新・物理入門

山本義隆(駿台文庫)

高校物理の参考書ですが、学習指導要領の範囲ではカバーされない力学での微分・積分の使用についても解説されています。通常は高校で教えない高度な内容ですが、物理現象は数式を使うことではじめて明確な理解とその応用が可能になります。

私も高校生のとき、公式の丸暗記に終始する当時の物理の授業に疑問を感じていたところ、博士号をもつ化学の先生の紹介でこの本に出会いました。数理の力を通じてさまざまな現象をその原理から理解しようという発想が、その後の研究者としての考え方にも大きく影響しています。

こんな研究で世界を変えよう!

電力コストの計算時間を大幅に短縮。消費者の望ましい選択に寄与

「最適化」を用い、エネルギー政策を分析

近年、太陽光発電などの再生可能エネルギー電源の普及が進んでいますが、その背後ではこれらの電源の導入を後押しするために、様々なエネルギー政策が検討され、実施されています。そして、これらの政策の有効性を事前に試算したり、実施済みの政策の効果を定量化するために、様々な分析が行われています。

このようなエネルギー政策の分析では「最適化」という数理的なアプローチが活躍しています。最適化はあらゆる選択肢の中から、ある評価尺度を最も良くするものを選ぶもので、例えば消費者の電力コストが最も安くなるような選択肢は何かということを様々な条件のもとで求めることで、望ましい政策の立案に寄与します。

長期間の電力データを扱える解法

最適化の面白い点は、解くべき問題が同じであっても、それをどのような形の数式として記述するかによって、どれだけ素早く精確な解が得られるかが大きく変わるところです。

この研究では、太陽光パネルと蓄電池を導入する消費者の電力コスト最小化問題について、電力消費パターンの構造を上手く捉えて問題を分割することで、従来よりも大幅に計算時間を短縮し、これまで困難だった長期間の電力データを扱った分析を可能とするような解法を開発しました。

最近では、このアイデアを発展させて「微分方程式」という通常は力学や電磁気学などで出てくる物理現象を記述するためのツールを、最適化問題の記述に取り入れることで、電力分野でのいろいろな問題を効率良く解けるような方法の開発に取り組んでいます。

ホワイトボードで数式モデルについて説明している様子
ホワイトボードで数式モデルについて説明している様子
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

数式を使って様々な物理現象が原理から説明できることを知って、物理が好きになりました。私の専門の電気工学は、電流や電圧など目に見えない概念を数理(特に微分方程式)の助けを借りて理解し応用するという意味で、そのありがたみを非常によく実感できる分野のひとつです。最近では、物理現象だけでなく、意思決定の最適性の原理についての数理的な構造を直接応用につなげるという観点で研究を進めています。

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「電気料金設計のためのマルチスケールモデリング」

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中高生におすすめ

電力バランスゲーム~町に電気をとどけよう~

経済産業省 資源エネルギー庁

電力の需給調整を体験できるデジタルコンテンツで経済産業省・資源エネルギー庁のホームページで公開されています。いろいろな種類の電源の特徴(制約条件)を考慮し、天候や需要の変化(不確実性)を想定して発電量を決定するという内容で、複雑な意思決定を扱える「最適化」が実社会でどう役立つか実感できます。

主な対象は小中学生とされていますが、実際の運用方法がかなり参考にされており、大人でもつい真剣になってしまうほど良くできたコンテンツです。パズル感覚で遊んでみるだけでなく、このような意思決定をコンピュータで自動化するにはどうしたらよいかということもぜひ考えてみてください。

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命の価値 規制国家に人間味を

キャス・サンスティーン、訳:山形浩生(勁草書房)

何か新しい政策や規制を実施するときに、それにかかる費用とそれにより得られる効果(便益)を定量化してその政策が正当化されるかどうかを判断するための分析を費用便益分析といいます。

この本は、米国ホワイトハウスで政策評価を行う情報規制問題局(OIRA)の局長を務めた著者が米国での実務的なプロセスも交えて費用便益分析について解説したものです。少し難しいですがこれを読めば各種の政策や規制に対する見方が変わるのではないでしょうか。

一問一答

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