マインドセット 「やればできる!」の研究
キャロル・S・ドゥエック、訳:今西康子(草思社)
研究において、失敗はつきものです。例えば、これまでの仮説が覆った、考え抜いた実験が失敗した、研究費の申請書が不採択になった、など、思い返せば、研究を始めたころから現在まで失敗の連続です。
でも、その失敗をただの失敗と捉えるのではなく、この方法では上手くいかないことがわかった、着実に研究が進んでいる、こういう書き方がよくないことがわかった、と考えるのは大変重要です。そういう結果の積み重ねによって、研究(あるいは、自分自身)を成長させ続けることができるという考え方を持てるようになります。本書は、そのような考え方を教えてくれる本です。
試験管内でRNAを進化させ、新しい機能を持ったRNAを創出
DNAの世界とタンパク質の世界を仲介
私は、「リボ核酸(RNA)と呼ばれる生体内高分子がどのような分子の形をしていて、どのような機能を持っているか」を研究しています。
RNAは、DNA上にある遺伝情報の写し、すなわち、タンパク質を含む細胞の構成成分の設計図を持っていて、その写しをタンパク質合成装置であるリボソームに渡す役割を担っています。そのため、RNAはしばしば、DNAの世界とタンパク質の世界を仲介する役割を持っていると説明されます。
実はいろいろな機能を持つRNA
最近、ノーベル賞の受賞対象となったmRNAワクチンの開発は、このRNAの基本原理を上手く応用したものです。しかしながら、RNAは、遺伝情報の写しを持つという機能だけではなく、実はいろいろな機能を持っていることが最近の研究でわかってきました。
例えば、RNAは、自分自身を切断する触媒活性を持っていたり、ある特定の細胞内化合物を捕まえる能力を持っていたりと、その機能は、多岐に渡ります。言い換えると、RNAは、DNAと同じように遺伝情報を持ち、かつ、タンパク質と同じように特定の機能を持つことができる唯一の生体高分子です。
夢は細胞を自在に操作する技術
私にとって、ここが一番のRNAの魅力と言っても過言ではありません。私は、人工的に試験管内の中でRNAを進化させることで、新しい機能を持ったRNAを創出し、その構造機能を分析するという研究を行なっています。
最終的には、創出した人工RNAを体の中で機能させることで、細胞を自在に操作する技術の確立を目指しています。
私は、将来、どのような職業に就きたいかということを明確に考えずに、大学に入学しました。大学2回生のときに、分子生物学という授業を受講したのですが、その先生が大変、楽しそうに授業をしていたのを見て、その先生のファンになりました。
大学4回生になると、研究室に配属されるわけですが、当然のようにその先生の研究室を希望しました。その先生の研究室は、生物化学の研究をしていました。私は、それがキッカケで生物化学に興味を持つようになりました。
高校生の頃の私は、自分が大学教員になるとは決して思っていませんでした。何事も一期一会であると改めて感じます。
「分子生物学」が 学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)
その領域カテゴリーはこちら↓
「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
◆主な業種
(1) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
(2) 食品・食料品・飲料品
(3) 薬剤・医薬品
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 品質管理・評価
(3) 営業、営業企画、事業統括