ナイチンゲール伝 図説 看護覚え書とともに
茨木保(医学書院)
看護師といえばナイチンゲール、ナイチンゲールといえば白衣の天使というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際の彼女を知ってもらうと、その印象は少し変わるかもしれません。ナイチンゲールは、統計学者や病院建築家など、他にも様々な顔を持っているからです。私の研究対象であるナースコールも、その原型である呼び鈴を病室に設置したのは彼女でした。
本書は、ナイチンゲールの伝記と彼女の有名な著書『看護覚え書』を、漫画形式で描いています。本書を読むと、身近でありながら実はその役割を理解するのが難しい看護師という職業への理解が深まると思います。興味が増した方はぜひ専門書も読んでみてください。
大量のナースコールデータの解析で、よりよい看護を
ナースコールにすぐ駆けつけるには
日本の病院では、入院患者さんがナースコールを押すと、看護師がすぐに駆け付けます。これは、患者さんの命を守ったり、患者さんに安心して入院生活を送ってもらうために、とても重要な環境です。
ただし、ナースコールが多数発生した場合、それを実現するのは簡単なことではありません。みなさんが、携帯電話で受け取ったメッセージに常に数秒以内に返信することを想像してもらうと、おわかりいただけるのではないでしょうか。このような状況に、看護師はチームワークを駆使し、様々な工夫を行うことで、対応しています。
データサイエンスで看護の課題を解決
私の研究では、大量のナースコール使用履歴データを分析することで、今より効果的にナースコールに対応できる方法を模索しています。実は、ナースコールの使用履歴データが入手可能になったのは最近のことで、技術が発展した今だからこそ出来る研究です。
ナースコール使用履歴のような、看護ビッグデータと呼ばれる病院に蓄積されている大量データを活用することで、今までわからなかった看護の実態や特徴を明らかに出来るのではないかと期待しています。
より患者さんに寄り添える看護を目指して
病院で働く看護師さんに、これらのデータから得られる新たな情報を届けられると、より看護師さんの力が発揮され、よりよい看護が実現できると思っています。今だからこそ出来る看護の在り方を追求し続けることで、より患者さんにじっくり寄り添う看護が提供できる環境の構築に、少しでも貢献できたらよいなと思っています。
私の研究は、実際に看護師として病院で勤務していた時に感じていた「もっと患者さんとお話をしたり、ゆっくりケアをする時間が欲しいのに、忙しすぎてその時間が十分にとれない」というもどかしさが原点になっています。研究を通して、その忙しさを軽減できる方法を模索することで、看護師さんがその力を発揮できる環境を整えたい、それによって患者さんがもっとよい看護を受けられるようにしたいと思っています。